295話 午前6時の通り魔
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
タクシー強盗を追跡するGメンを援護した、2人の若い外勤巡査が、
臆病風に吹かれて取り逃がした。
Gメンは2人に気合を入れたが、暴力行為となって大問題。
しかもひとりの巡査は、幹部候補生のエリート。
階級はGメンより上級。
警察官の世界にも、古き時代と新しい世代の相違が渦巻く。
だが、通り魔のような犯人を追ってGメンは歯を食いしばり、
任務遂行に体当たりしていく。
次は、「午前6時の通り魔」
<監督:堀 長文、 脚本:高久 進>
1.作品について
島谷刑事(宮内洋さん)の1人主役作品である。
そして見ごたえ充分の傑作であり、島谷刑事編として最も気に入っている。
冒頭から、島谷刑事の活躍シーンがあるが、島谷刑事の昔ながらのやり方が、誤解を生んでしまう。
軋轢を生み、苦しむ島谷刑事。Gメンたちも苦しみ情勢は混沌としてくる。
長門勇さんが演じて印象深い土屋署長も、この作品で登場する。
そして、142.吹雪刑事と酒・飲食 のページでも書いているが、島谷・吹雪・
中屋・田口の4人で鍋を囲むシーンがあるが、これはGメン史上で最も有名な
食事シーンで、そこで「名セリフ」が語られることになる。
直前が「香港カラテ3部作」で、吹雪刑事の緊迫感に満ちた、生死をかけた闘いが3話も続いたあとなので、和みのあるユーモア溢れる場面が、作られたのではないかと思う。
「香港の女カラテ編」では、吹雪刑事も島谷刑事も挽回の機会がなかったが、さて、今回の島谷刑事はどうなるのか?
監督の堀 長文さんは、80年度だけが6本と多く、他には 278話「エマニエル殺人事件」 や
283話「オホーツク海の幽霊船」 などの、傑作を作られている。
2.若い警官たち
外勤巡査の草鹿巡査(坂東正之助さん)と深田巡査の2人は、島谷刑事から援護を頼まれたが、相手の銃に恐れをなし何も出来なかった。
注)草鹿は、階級は警部補だが、職務は外勤巡査、
このページでは以下、巡査として書くこととする。
草鹿巡査は、試験に合格して、キャリアで採用され幹部候補生。
つまり既に、島谷刑事よりも階級が上。 しかし経験がないだけでなく度胸もなく、性格が弱いため都合が悪くなると嘘をつく。
そんな男だが、黒木警視正や島谷刑事の、指導と影響を受けて仕事の
厳しさを学び、成長していく姿が描かれ、最後は犯人に全力でぶつかっていく。
新入の頃の先輩は、思い出に強く残る。
草鹿巡査にとって、島谷刑事は生涯忘れられない存在となるだろう。
ところで、差し入れを貰ったときの2人の嬉しそうな顔。 ラーメンの時もそうだが、この作品はどれも食事をするとき、なぜか全員がすごく楽しいそうな表情をしている。
3.土屋署長
島谷刑事のかつての上司で、立花警部の以前の上司でもあったようである。
今でこそ温厚に見えるが、>かつては「鬼の警邏課長」と言われ、部下から恐れられた署長である。
Gメンが鍋を鍋を囲むシーンで、隣の部屋にいたのが長門勇さんで、この方の個性と演技があったから、余計に素晴らしい名場面になったのだと思う。
297話「ラッシュアワーに動く指」でも、ゲスト出演される。
その際には、土屋署長の娘も登場する。
4.2人組の犯人
松崎登(堀礼文さん)と 本間の2人組のタクシー強盗が事件の発端。
この犯人の出番は多くはないが、2人ともに悪役の常連の方が演じている。
アクションもあるし、慣れない者では難しいだろう。
他の作品では、松崎を演じた方が233話「金髪女性連続殺人事件」、
本間の方は、269話「少年とギャングの自転車レース」に出演されている。
居酒屋の強盗をやった後で、巡査と遭遇した際に、なぜわざわざ目出し帽をかぶったのか不思議ではある、
5.鍋を囲むシーン
島谷・吹雪・中屋・田口の4人で鍋を囲むシーンは、Gメン史上で最も有名な食事シーンで、そこで「名セリフ」が語られる、まさしく名場面である。
宴会は、島谷刑事のコップ酒の一気飲みから始まる。
上司がいないことをいいことに、日頃のGメンたちからは想像もつかないセリフが語られる。
となりに偶然、立花警部がいることも知らずに、4人の会話は弾んでいく。
ネタバレの為、詳しくは書けませんが、気付いたことを列挙します、
1)沸騰している "鍋の蓋" を吹雪刑事は素手のまま、平気でつかんで
横においている。 熱くないのだろうか?
2)杏子が蓋をとったとき、みんなが歓声を上げているが、特に田口刑
事は本当に嬉しそうな顔をしている。
3)吹雪刑事は良く食べている。
熱いのが苦手なのか、フーフー息を掛けながら実に良く食べている。
4)田口刑事の日本酒を銚子のまま口飲み。しかも何度も。
(酒は強いらしいが)
5)島谷刑事が「鬼」と言った時の顔。--いい顔している。
6)前後の会話は省略するが、このときの会話で、立花警部は 「夜叉(やしゃ)」 にされてしまう。
7)強盗を発見してからのあわて方も、いつものGメンとは一味変えて
ユーモラスに描かれている。
6.島谷刑事 Gメンの活躍
1)島谷刑事
島谷刑事で最も気に入っている作品で。見ごたえも充分にある。
勇気、挫折、挽回、様々な状況が起きて、島谷刑事自身も成長していく。
(1) 冒頭、島谷刑事の追跡シーンは、非常にスピーディで見ごたえがある。
躍動感に満ちた、凄まじい追跡である。
(2) しかしその後の、島谷刑事の昔ながらのやり方が、誤解を生んでしまう。
軋轢を生み、苦しむ島谷刑事。
Gメンたちも苦しみ情勢は混沌としてくる。
(3) 珍しく島谷刑事の自宅のシーンが、トレーニングシーンと共に映る。
(警視庁第二職員寮に在住)
(4) ビルの屋上で、夕陽に向かいながら長い間、悔しさに耐える姿は
印象的。 腸は煮えくり返るようだったと思う。
(5) 鍋のシーン
(6) 張り込みしている時は、本当に寒そうである。
「暖かい風呂にドボーンとつかって~~」というシーンには、人間島谷の
本音が現われている。
(7) いよいよ最終章。島谷刑事は犯人を追跡する。
障害物を飛び越え、まるで矢のように走る。 犯人に肉薄していく。
「香港の女カラテ編」ではあまり見せなかった、カラテ技が何度も炸裂
する。
2)中屋警部補
島谷刑事の上司として、先輩として気遣う。
中屋警部補にとっては、兄貴分のように感じているからこそ、鉄拳を振るうようなこともしたのだろう。
3)立花警部の笑顔
島谷刑事へ厳しく指導する立花警部。
しかし、部下への暖かい配慮も忘れない。
(1) 土屋署長と酒を飲む
職務を離れ、気心の知れた土屋署長と飲む酒は楽しく、ギスギス状況の中でも、ほんのりとした和やかな雰囲気が溢れている。これだけでも記憶に残る名シーンになったかも知れない。
しかしこれだけでは終わらず、上記「5.鍋を囲むシーン」での会話を聞くことになる。
(2) 立花警部は吹雪刑事とだけ、店の中で顔を合わせる
そのとき杏子に見せた笑顔は、Gメン75で見せた立花警部の一番の
笑顔だったように思う。
もともと渋い警部に徹している為もあって笑顔は少ない。 ましてや、
これほど楽しそうな笑顔が有っただろうかと思う。
7.吹雪刑事の活躍
島谷刑事の主役作品なので、出演シーンは幾つかあるが、吹雪杏子のいわゆる活躍はほとんどない。
1)励まし
中屋警部補や田口刑事らとともに、島谷刑事への励まし。
Gメン部屋の外で、吹雪刑事は声を掛ける。
2)鍋のときに
上記にも書き、別ページにも書いているが、中屋・島谷・田口とともに4人で鍋を囲んだ食事は、Gメン史上最も有名な飲食シーンとなった。
そして、その時、
吹雪刑事だけが店の中で、立花警部と偶然顔を合わせることになる。
立花警部は黙っておくように手振りして、吹雪刑事は了解した。
---その後、吹雪刑事は3人に話したのだろうか?
3)差し入れ
吹雪刑事は、張り込みの島谷刑事と草鹿巡査への差し入れる。
杏子が入れてきたのは、暖めた牛乳のように見えたが?
このときに、草鹿巡査は吹雪刑事と身長がほぼ同じくらいだと気付いた。