306話 サヨナラ Gメンの若き獅子たち!
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
ノックアウト強盗捜査中のGメンが、不審を抱いた親子連れ。
女はホステスで、同棲中の男は手配中の似顔絵そっくり。
女の手引きで逮捕したが、Gメンの油断から逃走。
犯人の恨みは子供の命を狙い、女性Gメンも負傷。
流血の惨事を引き起こした。
事件解決後、中屋、島谷、吹雪の若きGメン3人は転属となり、
それぞれ別の部署で活躍することになる。
次は、「サヨナラ Gメンの若き獅子たち!」
<監督:小西通雄、 脚本:高久 進>
1.作品について
吹雪編の54話目。 ついに吹雪編の最終章をむかえる。
今回は、吹雪刑事・中屋警部補・島谷刑事の3人の降板編が描かれる。
凶暴なノックアウト強盗を追いかけるGメン。
中屋警部補や吹雪刑事ら4人は、容疑者の逮捕に成功する。
しかし、弟分らに容疑者を奪い返されてしまい、Gメンは、協力した女性家族を
まもるために護衛につく。
予告でも触れているが、吹雪刑事は女性の家族を守るため、殉職ギリギリとなる身の危険を顧みない果敢な行動をとる。
ゲストの片桐竜次さんは、危険な雰囲気の悪役を見事に演じ、ドラマに緊迫感を漂わせる。
降板編としての描き方は、不満があるが、
容疑者を奪還されてからの、中屋警部補・吹雪刑事らの活躍、そして強盗の執拗さ、等々見ごたえ充分な作品に仕上がっている。
2.サブタイトル
1)変更前の、サブタイトル
今回のタイトルは、実は変更されたものである。
最初に高久進氏がつけていたのは 「さよならGメン75」 と驚いてしまう。
これは通常なら、"終了”する時のものであり、DVDの解説書によると、
「Gメン75の最終回と誤解する」 との理由で直前に変更されたとの事。
別ページ 125.続投の予定だった吹雪刑事 のページで書いているが、
吹雪刑事の降板による男女構成の大幅な変更や、菊池俊輔氏のテーマ曲からの決別等からのイメージチェンジを図るものだとは思うが、真相は判らない。
また次のように、当時の雑誌等には変更前で掲載されているものがある。
↑ 週刊TVガイド
右上の画像が週刊TVガイドで、
毎日新聞−朝刊 毎日新聞−夕刊
右の左側は毎日新聞の朝刊、右側が夕刊である。
不思議なのは、朝刊は変更後なのに、夕刊が変更前のサブタイトルで掲載されている。
2)変更後のタイトル、そして後年のSP
後年、"変更された後” のサブタイトルを受けた作品が作られている。
19年後 2000年10月23日に作られた、”Gメン75スペシャル”である。
そのタイトルが、「Gメン75 帰って来た若き獅子たち!」 (右の画像)
306話のタイトルを受けた形の、サブタイトルとなっている。
但しそのメンバーには、吹雪・中屋らは誰もいなかった。
3.ノックアウト強盗
腕っ節の強さで犯行を重ね、凶暴さではGメン屈指の村上竜治。
ギラギラとした眼光と、大胆不敵な面構え、狂気が漂う男。
そして、スピーディな動きとあいまって、かなり危険な香りが漂う。
この強盗を演じる片桐竜次さんは完璧な"はまり役”であり、危険な香りを感じさせる素晴らしい熱演である。
(この演技を見ると、蟹江さんの次に黒谷町の魔物が似合うかも知れない)
プロボクサーという設定で格闘が得意なのだから、ぜひGメンたちと格闘して欲しかった。
ただでさえ、何をするかわからない凶暴な男だが、覚醒剤をうっているから余計に怖い。
覚醒剤を打っているときの、まぶたがピクピクする姿は臨場感に溢れ、子供をひき殺そうとする凶暴性も尋常ではない。
一方、弟分のスミヨシが手錠を外すとき、「あわてないで、ゆっくりやれや」 もさすが兄貴としての貫禄がある。
他の作品で、片桐竜次さんの演技で対照的なのが、226話「電話魔」の時の変質者「篠山」。 ボケたような男を演じているが、これまた似合っている。
4.平山母子
平山邦子と娘のめぐみが、警察に行ったところを立花警部に声を掛けられる。
田坂都さんが、健気に子供を育てる母親を演じる。
村上竜治に乱暴・脅迫されながらも、子供の為に警察に訴える姿からは、これまでの役とは違う、子供に対する母親の愛情を強く感じる。
村上の襲撃を警戒中に、少女を外へは出てはいけないのに、母親の不注意から外へ出てしまうが、彼女はこれに気がつかない。
5.中屋警部補・島谷刑事ら、Gメンの活躍
立花警部は直感を働かせて、警察に来た女性に声をかける。
その結果、女性から思いもよらない事件の鍵が見つかることになる。
この役は、ぜひ3人の降板するメンバーの誰かにやらせて欲しかった。
立花警部は平山に依頼して、村上が来たら通報して貰うようにした。
<待ち伏せ>
中屋・島谷・田口・吹雪の4人はキャバレーに入り、容疑者を待ち伏せる。
島谷刑事の 「なんだ、女連れじゃいけないのか?」 も記憶に残る。
<連行>
容疑者を連行するときに、弟分が助けに来る。
その瞬間のGメンは、中屋・島谷の2人だけだったから、襲撃を受けて容疑者に逃げられてしまう。
<追跡>
ダンプカーとカーチェイスを繰り広げるシーンは、普通なら運転の上手な田口刑事がやるはずだが、今回は降板編だから島谷刑事が運転をしているのだろう。
<護衛>
母親と娘を護衛する立花警部ら、Gメンたち。
そして村上の襲撃! 迎え撃つ中屋警部補たち。
6.吹雪刑事の活躍 <最終章>
吹雪刑事、最後の活躍。 (ネタバレも含め、少し詳しく書きます)
凶悪犯の村上竜治を相手に、中屋警部補らと母子を護衛する吹雪杏子は、命をかけた果敢な行動をする。
204話の山田刑事以降では、唯一の降板編を作ってくれたのはありがたいが吹雪杏子が得意とする、合気道や射撃などを見せてほしかった。
(吹雪刑事の降板については、「125.続投の予定だった吹雪刑事」 に記載)
1)張り込みと逮捕
吹雪杏子は、中屋警部補らとキャバレーに乗り込む。
女性の吹雪刑事に店員は驚くが、彼女はさして気にしない。
(305話のスタイル喫茶よりは、杏子は入店しやすいとは思う)
吹雪刑事がキャバレーに客として入ったのは初めだと思うが、どのように感じたのだろうか?
娘のめぐみが泣いているので、母親が立とうとするが、代わりに杏子が子供のところへ立つ。 これが次の展開への布石である事に、この時に気付く人はいないだろう。
その後、容疑者を連行中に逃亡されてしまうが、その時に吹雪刑事と田口
刑事が一緒なら、弟分の襲撃も失敗したはずである。
2)護衛とダンプカー
平山家を護衛する吹雪刑事。
母親が目を離したために、少女は外に出てしまう。
すぐに母親が少女を捜しに、出てくるかと思ったが、母親は全く姿を見せない。 (母親は責任重大なのに、その意識がまるで無さそうである)
吹雪刑事は少女を追いかけるが、白昼堂々と車で子供を轢き殺そうとするとは、予想していなかったと思う。
遠くからならば音は聞こえるが、ダンプカーを近くから発進させたため気付き
にくく、あっという間に少女に近づく。
接近するダンプカーに気付いた吹雪杏子は、自らの危険を顧みず、果敢に
飛び込み、少女を抱えてダンプカーに跳ね飛ばされる。
幸い杏子は、身体能力を生かして軽症で済んだが、殉職と紙一重であった。
かつて、速水刑事の降板時には殉職の案も出たと聞くが、今回の吹雪刑事は殉職ギリギリの行動をとる。
少女は重症を負ったが、間一髪吹雪刑事によって命を救われた。
本当は、母親は杏子に感謝すべきである。
杏子にとって、少女を無傷で守れなかったのは痛恨であるが、暴走ダンプカーの襲撃に対しては、あれ以上のことは出来ないだろう。
警視庁の規定では、
「身の危険を顧みず、積極果敢に職務を遂行して負傷した者」 は、
それなりに良い人事考課を受けるとの事。
吹雪刑事の行動は、それに該当すると思える。
3)病院にて
吹雪刑事は負傷のため入院するが、同じ病院に娘のめぐみも入院し手術を受けている。
少女を気遣う杏子に、立花警部が病室を訪ねる。
無傷で守れなかったことに悔やむ杏子。
4)別れ
この異動は、「春の通常の人事異動」 と言われているが、時期的にそうだが人数は多過ぎる。
警視正・警部以外の4人のうち、3人もの異動は 「通常」 ではない。
立花警部 「俺はサヨナラは言わない。働く職場は変わっても、
俺たちは刑事なんだ。一生刑事なんだ」
黒木警視正 「困った事があったら、いつでもこの部屋を訪ねて来い。
俺たちは待っている」
ラストの2人のセリフは、感動的なものだった。
吹雪刑事の最後の言葉、
「本当にお世話になりました」
この言葉を発して挨拶したとき、杏子は一瞬、悲しそうな顔をする。
この顔は忘れられない。中島はるみの吹雪刑事の最後の場面、最後のセリフであった。
降板作品の最後の場面、3人で唯一セリフがあったのが吹雪刑事だけなのは、吹雪ファンとしては
嬉しいが、ここは中屋警部補、島谷刑事の2人にも最後のセリフをしゃべらせて欲しかった。
5)FBIへ
吹雪杏子は今回を最後に、警視庁から派遣されるFBIへの研修に旅立つ。
ファンにとっては寂しいが、日本の警視庁を代表して、FBIの研修に派遣されることに、彼女は期待に胸を膨らませていただろう。
彼女は、我々ファンの心に強烈な印象を与え、太平洋を越えてアメリカへ行ってしまった。 −− そして、二度とGメンに戻ってくることはなかった。
30数年たった今も、忘れられない存在としてファンの心の中に残っている。
7.異動について
降板作品が作られた中で、今回の"3人だけ"が突然に転属が発表されている。
つまり、他のメンバーの場合は、降板作品の内容で人事異動が決定しているが、この3人は作品内容とは殆ど関係なく行なわれている。
異動理由については、特に説明はされていない。
そのために、異動理由は何か? が推測されている。
これは栄転なのか? 違うのか?
ここでは、私見としての考えを書きたい。
1)中屋警部補と島谷刑事
中屋警部補と島谷刑事の2人は、犯人に逃亡されたが、これは以前から言われているのだが、
(1) 過去のGメンたちが犯した重大ミスに比べて、じつに些細なミスである
−−−これに異論をもつ人は、いないだろう。
(2) 最後は、当人ら自身が、事件にきちんとケリを付けている
異動する転属先が素晴らしい。
中屋警部補は、「花の一課」と言われる、警視庁捜査一課である。
捜査一課のみが、 「選ばれし捜査第一課員」 という意味のバッジをつけている。
この警察の花形部署にかつても在籍しており、2度目という稀有な転属だと思う。
島谷刑事は、古巣の警視庁捜査4課であり、栄転とはいえないが決して悪くない。
2人ともに地方ではなく警視庁で、転属先としては、これを超える部署は無い。
彼等は "急に転属を”告げられて、渋い顔をしているが、Gメンから離れることが寂しいのだろう。
2)吹雪刑事
Gメン発祥の 「FBI」 への派遣研修は、警察庁からもごく限られたメンバーだと思われる。
交通係から始まった彼女は、抜擢を重ねてGメンになったが、今回も大抜擢である。 吹雪刑事の能力の高さと実績、そして少女を無傷ではなかったが身を呈して守った事などが、評価されてのことだろう。
吹雪杏子はGメンに強い愛着と、名残惜しさを感じながらも、まだ見ぬFBIへの期待も膨らんでいたに違いない。
Gメン75では語られなかったが、FBIでの訓練でさらに優秀な女刑事に
成長して、日本に帰って来たことだろう。
8.Gメンの降板編について
降板作品は、山田刑事の204話「ミスターブー殺人事件」までは作られていたが、
なぜかそれ以降は作られていなかった。
その為、306話は久しぶりの降板編であり、以後も作られることはなかった。
降板編が作られなかったメンバー
小田切警視、津川警部補、村井刑事、南雲警視
田口刑事、マリコ・寺岡刑事
今回も是非、1人ずつの降板編を作って欲しかったが、降板編を作らなくなってから
唯一、例外的に作られた作品なのだから、良しとすべきかもしれない。