思い起こせば前世紀の最後の衝動買い。アブク銭とはよく言ったもんでコレを買ったらスッカラカン。まあいいかそんな事。んで、二輪歴6年くらいでたいした事故もせず「オレって運転上手いじゃん」って思ってた時期なんで。サイドカーも所詮人間が作ったもの、オレ様に運転できぬ訳がないとタカくくっての納車待ち。でもちょっと不安だからインターネットで色々調べたりもして。そんなこんなで納車。

跨いでみてのご感想は車幅への違和感、なんせバイクしか運転した事無い訳だから、舟のマージンがよく判らん。お店のメカの彼が言うには「前の四輪の運転席の真後ろに目線を置けばだいじょうぶ」と。彼もまたサイドカー初体験。僕が買うなんて言っちゃったもんだから、この後ず〜と面倒かけるハメに。だからこそ彼の教えには重みがあって、ナイスなアドバイスをしてくれるんで。僕はいつも目からウロコ状態。
ともあれ、なるほどなるほどと、簡単にレクチャー受けて、未体験ゾーンに出発でぃ。
大天才のオレ様気分でも、やっぱ最初は遠慮がちに一方通行の路地を選んでゆ〜くりと。まっすぐ進行してるつもりなんだけど、気のせいか左右の風景が交互に近付いてくる。アクセルあけると左の景色、アクセル閉じると右の景色って。蛇行してんじゃんって力任せに修正すると、ハンドルいきなり暴れ出して。「うぉ、うぉ、うぉ」頭真っ白、あわててブレーキ。心臓バクバクで誰かに見られてないか辺りを見回し、少し犯罪者の気分。一抹の不安。でも納車したら見せびらかしに行くかんねって、単車の方の面倒みてもらってるバイク屋さんと約束してたんで行かなきゃならん。とりあえず連れ合いの待つ家までそろそろと。

彼女に後ろを走ってもらって街道デビュー。休日なんでそこそこ空いてていい感じ。片道10数キロの車幅だけ気にしながらの道程。若干緊張しながらも目的地着。この店のスタッフ某君、サイドカーレースのパッセンジャーをやっていた経歴アリ。そんな彼に「乗る?」って水をかけると案の定「いいの? いいの?」ってグッドな反応。ほいなってキーを渡すと、あっちゅう間に行ってしまわれた。待つ事数分、彼顔面破顔。「おっもしれ〜、おっもしれ〜けど曲がんない、曲がんない。左カーブで対向車線飛び出しちゃったっす。でも慣れたらもっとおっもしれ〜かも。オレ初めてだし」「え、初めて? だってレース?」「横にちょこっと乗っただけですもん」って涼しい顔で。でもま、喜んでもらえたからいいや。

そんなこんなで、見せびらかしのついでに彼女のバイク見てもらってる内にあたりは薄暮、そろそろ帰ろかと。帰りは渋滞、大渋滞。前方車両凝視しながら気、張りつめっぱなし。早めのブレーキ、早めのウインカーって、まるで教習所。ハンドル振れもあれから起きないし、いたって絶好調。そう言えば後ろの彼女は? 今まで、前ばっかりで後ろ気にしてないじゃんとバックミラーを覗くと、彼女を先頭に3、4台ばかりバイクがだんごになってる。ちゅうか僕先頭の大名行列。邪魔なんかなってチラチラ見ながら走るも追い抜く気配なし。赤信号になって路肩を開けて停まってベテランぽくハンドサイン出してもまだ行かない。青信号になったらまたゾロゾロと。結局街道から路地に入るまで大名行列は執り行われまして、大天才は無事帰還。

「さっきの子たちは、ど〜したの?」「途中からずーっとくっついてきてたの。珍しいもん見たさじゃない?」無事着いたから天狗の僕「ふ〜ん、じゃカッコ良かったんだ。なかなかのもんでしょ?」彼女答えて「フラフラしてたよ。もっと練習しな」「じゃ、横乗るのは?」「や〜なこった」

大天才、冷静な観察の元ではグゥの音出ず、あえなく撃沈。で、どうしたかって? それから一ヶ月、早朝猛特訓に突入、そう、あの日まで。


けっこう痛かったの。ふところが。

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