ここで、ご紹介するトレーニングは、特別な器具を用いてのトレーニングになります。最近は
スポーツ店などでも、バランストレーニングが注目され、安価で販売されるようになってきまし
た。ただし、このトレーニングは前に紹介した筋力強化トレーニングによって、足の筋力がシッ
カリしてきてから行って下さい。また、足首に体重をかけた際、痛みが有るようでしたら行わな
いようにして下さい。
本トレーニングは、足関節の前方に痛みと、
足関節の背屈制限がある場合に、少しづつ行
います。足関節捻挫で残存する後遺症のうち、
足関節の背屈制限は、比較的多い障害なので、
筋力トレーニングと同時に行っても構いません。
方法はいたって簡単で、図11の様な器具を用
いなくても、逆傾斜のある場所で、立っているだ
けのトレーニングです。
本トレーニングは、階段などの段差のあるところで行え
る体重を利用した、ふくらはぎを鍛えるトレーニングです。
手すりなどにシッカリ掴まって行い、踵を落とした時も、
アキレス腱を良く伸ばすようにすると、柔軟性を高める効
果も期待できます。
図9:カーフレイズ
図10:不安定板
板の縁を用いて、
足の裏の、母趾球・
小趾球・踵というよう
な順番で、体重をかけ
ながら、不安定板を転
がす。
図11:ストレッチボード
Part3
表2:注意すべき捻挫後遺症と対策
@筋力低下 |
筋力トレーニング |
A可動域制限 |
可動域改善トレーニング |
B体重をかけた際の痛み |
冷却、鍼治療 |
C足関節不安定感(踏ん張りが効かない。
思う存分力を入れることが出来ない) |
鍼治療、バランストレーニング、テーピング |
最後に、足を酷使する競技選手にとって足関節捻挫は完全な予防は困難であると思われ、
足関節捻挫は誰もが受傷する可能性のある外傷の一つと考えられます。万が一捻挫を受傷
した場合、直後には早期に腫脹を軽減させ、組織の損傷を最小限に留めるため、RICE処置
を万全にすること。腫脹が軽減してからは、疼痛を軽減させ、血流を改善する治療をする
こと。疼痛消失後も入念なリハビリを行い、筋力の回復ばかりでなく、足関節機能にも注
目し、バランストレーニングなどを行うこと。1度でも捻挫を受傷し、決定的な後遺症が
残った症状は、再受傷の危険性が増すばかりでなく、その後の競技成績に与える影響は大
きいと考えられ、早期の競技復帰を望むばかりに安易な治癒判断は慎むべきであると結論
します。
足関節捻挫が癖になると言われる原因に足関節捻挫受傷後の「不安定感」と「反応遅延」
といわれる後遺症があります。これらは高いパフォーマンスが必要とされる運動選手にと
っては致命的な症状といっても過言ではないでしょう。自覚症状としては、坂道を下る時
やサイドステップの際に足関節に「グズッ」とした感じや「踏ん張りが効かない」といっ
た一見何でも無いような症状であり、痛みは足関節の前外方部に少し感じるか、若しくは
全く感じないのが普通です。
足関節を構成する組織の中で、足の靱帯や関節包、足根洞という部分には関節の位置や関
節に掛かる力を感じる神経群(固有受容器と言います)が多数存在しており、過剰な負担
が足首にかかった場合、反射的に足関節を支える筋肉の張力を変化させ、過剰な負担が足
首に掛からないようにする働きが、もともと備わっているのですが、足関節の捻挫により
これら受容器は損傷を受け足関節の防御機能は働かなくなるため足関節のバランスは崩れ
不安定感や反応遅延(刺激から反応までに時間差がある)が出現すると言われています。
特に捻挫を繰り返すひとの多くに反応遅延があることは実験で確認されており、いくら筋
力を強化しても必要な時に瞬時に最大筋力を引き出せなければ、足関節はその負担を吸収
出来ず捻挫を受傷してしまうと考えられます。
幾つかの論文から、この不安定感や反応遅延を回復させるリハビリ期間の限界は約100日
と考えています。経験的にもこの期間を越えてなお足関節不安定感や反応遅延が残存してい
ると、その後1年経過時の測定でも不安定感や反応遅延は残存していることが多く、完全
回復が認められないことから、この100日以内で後遺症を残さない治療を心掛ける必要が
あると思われます。
困ったことに、捻挫の治療主体は、疼痛にのみおかれることが多く、大半が1週間ほどで
疼痛は消失してしまうため、疼痛の消失=治癒と考えられ、重要な後遺症の治療は放置さ
れることが多いように見受けられます。多くの臨床家が捻挫の治療は骨折よりも難しいと
いうのは、実はこれら後遺症の治療の難しさを指して言っているのです。
〜実はとてもやっかいな症状〜
北秋田市住吉町4−10
治療を途中で中断した場合や、何もせず放置していて、以下の症状が出現してきた場合は、
慎重な対応が必要となります。特に足を使うスポーツをしている方は、早めに処置すること
をお勧めします。