足関節捻挫の治療
Part2
 捻挫の治療には、重傷度によりますが、骨折や、靱帯の完全断裂が認められない場合、第一に保存療法(手術に頼らない治療)が選択されます。

現在多く用いられている診断基準は表2の通りですが、これには少し欠点があって、図5を見てお解りのように、足首の靱帯は外側に3本もあるため、判定基準をそのまま適応出来ないところがあります。大事なのは、受傷したばかりの時は、腫脹の程度や痛みで歩行にどの程度の障害があるか?、または、受傷時「ブツッ」という靱帯が切れる音を、本人が聞いていないかが、重要な手がかりとなります。

重傷度が2度までの場合、鍼灸療法を含めた保存療法が治療の主体となります。

初期は、疼痛の軽減と腫脹の軽減を第一に、中期からは可動制限を残さないように、治療終盤は不安定感や疼痛が残存しないことを目標に治療していきます。

1度の受傷を除き、特別治療を行わない場合でも、最低3ヵ月の経過観察期間は必要で、この期間の内に、シッカリ後遺症を残さないように治療を終えないと、不安定感などが残存し、完全治癒は難しくなってくるような感じがします。

E足関節捻挫の治療
F捻挫受傷直後のケア
 足関節捻挫直後のケアによって、その後の治療期間は大きく左右されます。ここでは、他に捻挫や
打撲・骨折などの、救急処置としても使える5原則をご紹介致します。
表3:捻挫の応急処置
R:Rest(安静) 患部は安静を保ち、それ以上の負担を避ける
I:Ice(冷却:氷水で冷やす) 患部を冷却し、炎症を抑える
C:Compression(圧迫) 患部を圧迫し、局所の腫れを抑える
E:Elevation(挙上) 患部を心臓より高い位置に置く
S:Support(固定) 患部を固定し、動かさないようにする

 これらは、外傷の応急処置の現場で、用いられる鉄則ともいえるもので、ライスズ:米(RICES)処置と呼ばれるものです。その中でも冷却(ICE)処置が重要です

重傷度に拘わらず、足首を痛めたらどんどん冷やす。冷やし方は氷水を用い、氷嚢を当てる、氷水をはったバケツに足を浸けるなど、何でも結構ですから、氷水で冷やします。

冷やすことで、炎症の拡大を抑え、疼痛を軽減させ、二次的に血流を旺盛にするので、その後の治癒期間の短縮に大きく影響します。冷やす目安は、感覚がなくなるくらいで一度休み、15分位置いてからまた、冷やす。これを最低2〜3回繰り返します。出来れば患部の熱感がなくなるまで、凍傷に気を付けながら、繰り返し冷却します。
直接氷で冷やす人を見かけますが、これは、皮膚に負担となり凍傷の危険があること。冷却時間が長く取れない、血管が急激に収縮するため、深部の冷却能力は、想像以上にないといった理由から、直接氷を当てるのは良い方法とは言えないでしょう。

また、湿布でICEの代用をさせようとする場合もあると思いますが、湿布は捻挫の受傷直後には、何の効果も有りません。むしろ熱がこもるといって、絶対使わない臨床家もいる程です。

 

G足関節捻挫の運動療法
 足関節の腫れや痛みが軽減したら、捻挫により低下し
た足関節周囲の筋力強化と、可動域(動く範囲)の改善
を目的に運動療法を行います。
最も手軽で簡単な筋力強化法は、ゴムチューブを使った方法が良く知られています。その他、タオルや階段の段差を
用いたもの等、一人で出来て効果の高い方法をご紹介致
します。
筋力強化の他、トランポリンや不安定板を使ったバランス訓練も必要になります。運動療法によっても可動域の改善が認められないものに対しては、徒手的に、特別な関節可動域改善訓練を行います。

G-1:ゴムチューブを使った筋力トレーニング
G-2:タオルを用いた筋力訓練
 ここでご紹介するのは、ゴムチューブを使った筋力トレーニングの一部ですが、ゴムの抵抗
を利用したトレーニング方法です。スポーツ店などには、負荷を調整したものが販売されてい
ますが、古くなった自転車のゴムチューブを使っても、効果に変わりはありません。
本トレーニングは、1〜2sの重りを乗せたタオルを足の指を使って
手前に引き寄せる運動になります。捻挫によって弱った足指筋力
強化の他、足の腫脹を軽減させる効果もあります。
パートナーがいる場合は、綱引きのように引っ張り合うのも、良い
トレーニングになります。
図6:腓腹筋(ふくらはぎ)トレーニング
図7:腓骨筋トレーニング
図8:足趾(指)筋力トレーニング
タオルを摘んで引っ張る!
運動療法−足関節捻挫の後遺症
ここです
足関節捻挫の基礎
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