植物に必要な養分と土作りの話

1.植物に必要不可欠な養分(元素)てなに?

  • 植物にとって必要不可欠な養分(必須元素)は16種類です。
  • 多量に必要な養分(多量元素)は、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、燐酸(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)の9種類です。
  • 微量でよい養分(微量元素)は、塩素(Cl)、ホウ素(B)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)の7種類です。
2.それぞれの養分にはどんな役割がある?
  • 16種類の各養分のうち、多量元素は細胞壁やタンパク質、でんぷんなど、主に植物の体を形成するために使われます。肥料として施用するのは窒素、燐酸、カリの3要素ですが、肥料の中にはカルシウム、マグネシウム、硫黄、塩素なども含まれています。
  • 微量元素は、主として細胞内の化学反応を行う酵素(タンパク質)の構成成分または補助役として活躍します。砂地を除いた一般的な土では、土から自然に供給される程度の量で充分ですから、肥料として施さなくても欠乏しません。園芸店では「微量要素肥料」として販売しています。
  • カルシウムとマグネシウムには土壌の酸性を中和する働きがあり、硫黄(硫酸塩)には土壌のアルカリ性を中和する働きがあります。これらを土壌改良資材と言います。特に、雨が多く土壌が酸性になりやすい日本ではカルシウム・マグネシウム資材(苦土石灰)の施用が重要です。土壌酸度(pH)を1上げるには10ヘーベ当たり約1kgの苦土石灰が必要です。

3.養分の吸収はどこから?

  • 養分のうち、酸素と水素は水として根から吸収され、光合成反応の原料となる炭素は葉から炭酸ガスとして吸収されます。その他の養分はすべて根から吸収されます。なお、葉にも養分を吸収する機能がありますが、根からの吸収とは比べものにならないほどわずかです。養分の葉面散布は欠乏が発生したときの非常手段としての方法です。
4.無機態肥料、有機態肥料ってなに?
  • 多くの成分元素は無機態、有機態に分けられます。
  • 窒素を例に取ると、無機態には硝酸(NO3)、アンモニア(NH4)などが、また有機態にはタンパク質とその分解産物のアミノ酸、尿素などがあります。なお、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び鉄などの微量要素を総称して「ミネラル」とも言います。
  • 無機態の硝酸やアンモニア、有機態の尿素などは即効性肥料です。
  • 有機質肥料や堆肥は緩効性肥料とも言われます。緩やかに効く理由は、施用した後、土壌中に生息する各種の微生物によって[有機物(タンパク態)−アミノ態−アンモニア態−硝酸態]へと順次分解された後、主として硝酸態窒素として吸収されるためです。一部はアミノ態、アンモニア態としても吸収されますが、タンパク態は分子が大きいのでそれほど多くは吸収されません。なお、有機物の土壌中での分解は施用後10日目頃が最高となり、1か月程度で終わりますが、過剰に施用すると分解で発生したアンモニアガスと炭酸ガスによるガス障害が発生することもあります。緑肥と呼ばれる生の有機物は分解に1ヶ月ほどかかります。

5.土壌微生物はどのくらい生息している?

  • 土壌中に生息する微生物は3種類に大別できます。細菌(バクテリア)、糸状菌(カビ)、そして放線菌です。放線菌は細菌とカビの中間的な生物で、医薬品などに用いられる抗生物質を生産する菌もいます。
  • 正常な土であれば、その1グラム中に、なんと細菌と放線菌はそれぞれ1億匹程度、またカビは数千匹程度生息しています。
  • 有効な微生物を混ぜた資材として「微生物資材」などが市販されていますが、一般的な土であれば豊富な土壌微生物が生息していますからその必要はありません。ただ、以下に述べるように、土壌微生物が生息しやすい環境作りは必要です。

6.土壌微生物の住みやすい環境作りの方法は?

  • 土壌微生物がたくさん生息する土壌は、外部から病原菌が進入してきたときの抵抗力が高い土壌と言えます。
  • その住みごこちは、えさ、空気(酸素)、水で決まります。有機物の多い柔らかな土は、豊富な空気と適度な水、そして微生物にとって豊かなえさを含んでいます。
  • 有機物とは植物や動物の遺体や排泄物であり、有機態炭素と有機態窒素、それにミネラルを含みます。
  • 有機態炭素は微生物のエネルギー源となり、微生物に分解されて炭酸ガスとして放出されます。有機態窒素は主として微生物の細胞をつくるタンパク質になります。このように、微生物に利用されやすいえさとしての有機物の施用が大切です。完熟の堆肥はすでに微生物に食い尽くされた残りかすですから、微生物のえさとしてはもの足りません。むしろ中熟堆肥が好ましいと言えます。

7.家庭で堆肥を作る方法は?

  • 堆肥の製造には微生物のエネルギーとなる炭素と、微生物のタンパクをつくる窒素の比率が決め手です。昔、イナワラ堆肥を作るとき下肥を混ぜたことをご回想下さい。炭素はイナワラ、窒素は下肥です。家庭残さには炭素も窒素も充分含まれていますからその心配はありません。むしろコツは水分と酸素です。水分が高すぎると酸素の供給ができないため微生物の発酵が進みませんから、水分を60%程度まで乾燥してやり、一日一回よく混ぜてやるのがコツです。また、温度も大切です。周りを発泡スチロールなどの保温資材で囲ってやると発酵が進みます。発酵を助ける微生物資材は特に必要ありません。

ホームへ         アラカルトインデックスへ