「……。」
「…一つ聞いていいかしら?」
「何?」
「例年よりだいぶ早い冬眠からの目覚めだけれどどうして私は膝枕しているのかしら?」
「例年より早いからまだ眠たいのよ。」
「眠いならまだ寝てたら良かったじゃない。」
「…そうも行かないわ、春だからこそ出来るお話というのもあるのよ。」
「…と言うと?」
「あなたは冬の間は私がただ単に冬眠してるだけだと思ってる?。」
「思ってたわ。」
「…それが違うのよねぇ…。」
「…ふ〜ん。」
「実は私、冬の間だけ人間に化けて幻想郷の外に出ているの、それで外の世界のいろんなトコを旅しているのよ。」
「初耳ね。」
「初めて言ったもの。」
「しかしあなたが外にねぇ、いくら人間に化けれてもその胡散臭さでは周囲から浮いてしまうんじゃないかしら?」
「…それがそうでもないのよ。」
「…?」
「外の世界では私は少し不思議な目を持つ少女として振舞ってるわ。
あなたの言うとおり確かに周囲からは浮いてるのかもしれない。
それでもそんな私を受け入れてくれる友人がたった一人だけ居るの。
その子は私の手を引いていろんなトコへ連れて行ってくれるわ。
桜舞う墓地、
近未来のカレイドスクリーンが楽しめる超特急の車内、
封鎖された衛星の中の原生林、
オカルト好きが集まるレトロな酒場、
…ああ、思い出せばキリがない。
そんな彼女との旅は本当に夢のよう…。
春になればこちらに戻ってくるのだけれど、私はまた彼女といろんなトコに行きたいと思ったわ。
彼女と一緒に行く旅は、行先がどんなトコだって楽しくてしょうがないのだから…。」
「あなたの言ってる話の内容は全然理解出来ないけれど、冬眠中なら文字通り夢の中の話なのかしら。」
「…さて、それはどうかしら?」
「…?」
「だって今日はエイプリルフールでしょ?胡散臭い私の寝言から出たただのデマかもしれないわ。」
「…それならだいぶ遅い冬眠からの目覚めになるわね、もう今日は4月6日よ。」
「…あら、そうだったのね、まぁ私が寝坊するのはいつもの事だしいいでしょう別に。」
「私は良くてもエイプリルフールの意味がないわ。
…それにね、紫。
エイプリルフールは嘘をつく日よ?本当の事を言う日じゃないわ。」
「……。」
「…紫?」
「……。」
「…寝てる…、そんなに寝足りないなら無理して起きて来なくてもいいのに…。」
「……。」
「…まったく、私もあなたの夢の中の友人同様、気を許せる仲にされてるのかしら、
…本当に迷惑な話ね、あなたが起きないと桜餅を食べにも行けないわ…。」
…そう言って冥界の姫君は友人の頭を撫でるように手を乗せ、
暖かい春の日差しの中、のんびりとひなたぼっこするのであった。
妖怪の賢人が気まぐれに話した夢の話は、嘘か誠か、はたして…。
ども、七篠創太です。
エイプリルフールというとまぁおおよその人がネタに走ると思うので今年は趣向を変えて
エイプリルフールにシリアスなネタを求めてみました、
結果イラストが間に合わず紫を寝坊させてしまうハメに…。(白目
自分が初めて東方を知り合ったのも春先だったので桜を見るとなんとなく当時の幻想が思い出されて、
久々にゆかゆゆコンビが描きたくなったので筆を走らせてみました。勢い大事。
…という事で中々なアレなエイプリルネタになってしまいましたが大目に見て頂ければと思います。(超・汗
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