大阪弁護士会

      職員会議で、教職員の意見を一切封ずるのは人権侵害



                             2005年(平成17年)2月18日

四条畷市教育委員会
委員長 渡邊芳昭殿
                              大阪弁護士会
                              会長 宮崎 誠


                      要 望 書

 今般、四條畷市立○○中学校の教職員である○○○○氏から当会に対し、人権救済の申立があり、当会人権養護委員会において慎重に検討いたしました結果、以下のとおり要望いたします。

                         記   
                    
第1 要望の趣旨
 貴委員会におかれては、管下の小中学校の校長に対し、職員会議においては、教職長の話に十分耳を傾け、いやしくも軽々にその発言を一切封じるようなことのないよう、適切に指導監督されたい。

第2 要望の理由
1 当会が認定した事実
(1)申告人○○○○氏(以下、「申告人」という)は、平成15年4月1日付けの辞令で、四条畷市立の○○○○中学校から○○中学校に転勤してきた英語科の教職員である。
 同年4月2日の職員会議において、入学式の式次第が議題となり、同校の校長・教頭が、壇上に日の丸の旗を置き、式辞の後に君が代をテープで流すと発音したところ、養護学級の教職員が修正案を提出した。
 校長は、修正案について審議する必要がないとしたので、申告人は、これに抗議する旨の発言をしたところ、当時の同校校長は、「あなたは、本校こ来たばかりなのだから、発言はするな」という趣旨の発言を行い、申告人のそれ以上の発言を封じたものである。
 申告人は、学校教育の現場で教職員としての意見を反映できないことで、多大の精神的被害を受けた。
(2)上記の問題に関して、貴委員会は、管下の学校に対し、国歌斉唱、国旗掲揚の方法につき、職員会議における教職員の発言を封じるような指導はしておらず、また、上記校長の行為が、貴委員会の指導によって生じたものとは認められない。
 逆に、貴委員会の教育課長は、電話により事情を聴取した上で上記校長に対して行き過ぎを注意した事実も認められる。

2 当会の判断
(1)上述のように、貴委員会の職員会議における教職員の発言を封じるような指導はしていないと認められるものの、これによって、上記の校長の行為が、個人的資質に起因する問題であり、貴委員会と関わりがないものと言うことも出来ない。
 貴委員会は、毎年9月頃、大阪府教育委員会から、国歌斉唱、国旗掲揚についての通知を受けて、市内の各小中学校の校長宛に、前年度の参考例などを示した通知を出している。校長によっては、貴委員会の通知に忠実であろうとするあまり、職員会議において、教職員との話し合いに応じようとせず、教職員の発言を封じこめようという態度に出る者が現れることは十分ありうるというべきである。
 仮に、事前の予測が困難であったとしても、本件のような申立があった以上、再発が懸念されるところである。

(2)そもそも、子どもの教育は教職員と子どもとの直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行われなければならないのであって、普通教育の教職員にも限られた一定の範囲ではあるが、「教授の自由」が認められることは最高裁判所も認める所である。(最半昭和51.05.21)。

(3)ところで、職員会議は、教職員の意見を聞くために、校長が適宜開催するものであり、個々の教職員の自由な発言を保障し、その議論の経過を踏まえて結論を出すのが望ましいと考えられる。従って、職員会議における教職員の意見表明は、前述した教職員の教授の自由、表現の自由、思想良心の自由の一内容として保障されるべき重要な意味を持っており、いやしくも校長が教職員の発言の機会を一切封じる行為は、人権侵害に当たる可能性が高く、またきわめて不適切な行為であることは論をまたない。

3 結論
 以上から明らかなように、貴委員会が管下の学校に毎年、国家斉唱、国旗掲揚に関する通知を出している状況下で、○○中学校の職員会議の際に、校長が教職員の意見表明を一切封じるという問題が生じており、今後も同様の不適切な行為が懸念されるところであり、要望の趣旨のとおり、適切な指導監督をされるよ要望する次第である。
以上