透明な板の外、あったかお陽様覗いてる。 お姉ちゃんはお部屋の中。広いお部屋は僕一人。 うんと伸びして寝転がると、冷たい風が過ぎていく。 少しだけ違う風の匂い。僕はとことこ歩いていく。 お母さんの出てくる場所、透明な板がどけられて。 思わず一歩、僕は踏み出す。 青い匂い。からからの風。ぼかぽかお陽様僕を見てる。 どきどきどき。わくわくわく。僕は交互に前足を出す。 お外のお姉さんの水飲み場、綺麗なお花が一杯の場所。見えるものが、変わっていく。 どきどきどき。わくわくわく。僕の足は速くなる。 大きな木。飛んでくぱっぱ。がさがさ音のする足元。 手の届かなかった、知らないいきもの。見るだけで終わってた、お空の影。 明るいお花の違う匂い。流れる空気の違う匂い。 見慣れたお部屋は板の向こう。僕に気付かないお姉ちゃん。 まぶしいお陽様。暗い陰。板を挟まない、遠くの場所。 知ってるもの、知らないもの。見たことのないもの。見えなかったもの。 僕は今、板の外を歩いている。 お外のお姉さんが、僕を見る。 僕はお姉さんに挨拶する。 こんにちは。あったかいですね。直接あえて嬉しいです。 いつも気取ったお姉さん。綺麗な綺麗なお姉さん。 お姉さんは僕を見ると、いつもすいっと目を目をそらした。 僕はにこにこお姉さんに近づいていく。 僕を見ているお姉さん。僕は見られてちょっと嬉しい。 僕はいつも見てました。お姉さんを見てました。 お姉さんまであと少し。近づいたとこで怒られた。 あんたなんて知らないよ。近づかないどくれ、このロクデナシ! 僕はびっくり立ち止まり、お姉さんをじっと見る。 どうしてそんなこと言うの?いつも板の向こうで見てたのに。 僕がきょとんと見返すと、お姉さんは怒り出す。 あっちへお行きといってるだろう! 僕に向かって牙をむく。 僕はびっくり後退る。そのままくるりと駆け始める。 びっくり駆け出すその先は、全く僕の知らないとこ。 みた事ない場所。知らない道。 分からないけど、掛けていく。板の隙間も見つからない。 走っていって角を曲がって、おっきなモノの下を過ぎる。 おっきなモノの下は暗くて、出て直ぐ僕は眼を瞑る。 お外の世界は大変で。僕はくらくら眼を開ける。 板の中の僕の世界。板のお外の違う世界。 目を開けきょろきょろ見回して、お姉さんはどこにもいない。 ちょっとだけ、体を舐めて落ち着くと、僕はとことこ歩き出す。 知らないことが一杯で、僕はとことこ歩き出す。 おっきな音に僕はびっくり立ち止まる。 まぶしい方に、おっきなおっきな影がある。僕に向かって迫ってくる。 おっきな音が響いてくる。おっきな影から響いてくる。 外の世界には、知らないことが多すぎて。 僕はどっちへもいかれない。 おっきな影が近づいてくる。 広い広い大きな世界。僕は本当にちいさくて。 おおきな影が近づいてくる。 |