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06.外の世界

透明な板の外、あったかお陽様覗いてる。
お姉ちゃんはお部屋の中。広いお部屋は僕一人。
うんと伸びして寝転がると、冷たい風が過ぎていく。
少しだけ違う風の匂い。僕はとことこ歩いていく。
お母さんの出てくる場所、透明な板がどけられて。
思わず一歩、僕は踏み出す。

青い匂い。からからの風。ぼかぽかお陽様僕を見てる。
どきどきどき。わくわくわく。僕は交互に前足を出す。
お外のお姉さんの水飲み場、綺麗なお花が一杯の場所。見えるものが、変わっていく。
どきどきどき。わくわくわく。僕の足は速くなる。

大きな木。飛んでくぱっぱ。がさがさ音のする足元。
手の届かなかった、知らないいきもの。見るだけで終わってた、お空の影。
明るいお花の違う匂い。流れる空気の違う匂い。
見慣れたお部屋は板の向こう。僕に気付かないお姉ちゃん。
まぶしいお陽様。暗い陰。板を挟まない、遠くの場所。
知ってるもの、知らないもの。見たことのないもの。見えなかったもの。
僕は今、板の外を歩いている。

お外のお姉さんが、僕を見る。
僕はお姉さんに挨拶する。
こんにちは。あったかいですね。直接あえて嬉しいです。
いつも気取ったお姉さん。綺麗な綺麗なお姉さん。
お姉さんは僕を見ると、いつもすいっと目を目をそらした。
僕はにこにこお姉さんに近づいていく。
僕を見ているお姉さん。僕は見られてちょっと嬉しい。
僕はいつも見てました。お姉さんを見てました。
お姉さんまであと少し。近づいたとこで怒られた。
あんたなんて知らないよ。近づかないどくれ、このロクデナシ!
僕はびっくり立ち止まり、お姉さんをじっと見る。
どうしてそんなこと言うの?いつも板の向こうで見てたのに。
僕がきょとんと見返すと、お姉さんは怒り出す。
あっちへお行きといってるだろう!
僕に向かって牙をむく。
僕はびっくり後退る。そのままくるりと駆け始める。

びっくり駆け出すその先は、全く僕の知らないとこ。
みた事ない場所。知らない道。
分からないけど、掛けていく。板の隙間も見つからない。
走っていって角を曲がって、おっきなモノの下を過ぎる。
おっきなモノの下は暗くて、出て直ぐ僕は眼を瞑る。
お外の世界は大変で。僕はくらくら眼を開ける。
板の中の僕の世界。板のお外の違う世界。
目を開けきょろきょろ見回して、お姉さんはどこにもいない。
ちょっとだけ、体を舐めて落ち着くと、僕はとことこ歩き出す。
知らないことが一杯で、僕はとことこ歩き出す。

おっきな音に僕はびっくり立ち止まる。
まぶしい方に、おっきなおっきな影がある。僕に向かって迫ってくる。
おっきな音が響いてくる。おっきな影から響いてくる。
外の世界には、知らないことが多すぎて。
僕はどっちへもいかれない。
おっきな影が近づいてくる。
広い広い大きな世界。僕は本当にちいさくて。

おおきな影が近づいてくる。





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