■「もしも明日が晴れならば」(ぱれっと)投稿レビュー

はじめに

 何故だか、今年書いているレビューって、切ない系のゲームが多いようで…。
 今回は2006年2月に発売された、「もしも明日が晴れならば」のレビューをお届けします。

 筆者的には、基本的にくすくす氏の原画買いの作品なのですが、
 それだけではなく、OHP始め、事前情報でも「ゆーれいヒロイン」のおはなし、って事で、
 非常に期待しつつ、プレイしてました。
 (ものがたりを彩る一要素として描かれる事はあっても、それをメインにした話は初めてだったため)

 以前の「そらうた」レビューでも書きましたが、「愛ある別れ」って、個人的に好きなんですよね…
 で、この作品は、若干の不満が残るものの、かなり良い作品だったと思います。
 筆者も、様々な場面で、クリックする手を止めて、涙を拭いつつプレイしてました。

 そんな作品の魅力が、少しでも伝われば幸いです。

 なお、例によって伏字にしたりとか、ぼかしてはみたものの、ネタバレに触れる事も多いかと思われます。
 特に「プレビュー」部分をお読みになる際には、十分お気をつけ下さいませ。

 では、今はなきあの人に、届かぬ想いを寄せて――


プロローグ

 I feel songs float across some around.

 ――雨上がりの空のどこからか、うたがきこえてくる――

 A bird has a dream and flower has a love.

 ――鳥は夢をいだき、花は愛を語りだす――

 We had in arms of tenderness anytime but

 ――そうやって僕らをやさしく、いつでも包んでいてくれた…けれど――

 it's some late that became of...

 ――気付いたのが、遅すぎた――

                           (主題歌「もしも明日が晴れならば」歌詞より抜粋引用)

 ***

 ――思い出すのは、いつも、昔のこと――

 明穂とつばさが親父に引き取られる事になって、はじめてうちに来たときのこと――

 はじめて、打ち解けた日のこと――
 3人一緒に、遊んだ日々のこと――

 ――同じ学校に通い、同じクラスで過ごした、日々のこと――

 学園生活最後の夏、終業式の後、合歓の木の下で、…
 …告白、…したこと…

 ***

 その日の夜、突然高熱を発した彼女は、そのまま、あっけなくこの世を去ってしまう。

 ぽっかりと空いた、彼女のいた場所。

 ――幼馴染でもなく、家族でもなく、恋人として過ごすはずだった、夏休み。
 思い出を重ねて行くはずだった、夏休み。

 それでも日々は過ぎ、新学期が始まった。
 あるじのいない、窓際の席。
 そこにひっそりと置かれた、一差しの秋桜。

 ――でも、なぜだろう――
 そこに、彼女が、明穂が、いるような気がするんだけど…!?

 「思い残した事が、あったから…」

 ――彼女は、そう言って――

 ――昔と変わらない笑顔で、微笑んでいた――


ストーリーとか

 一見、オーソドックスな「お気楽学園もの」のような印象を与えがちですが、
 実体はそれほどお気楽でもなかったり。

 勿論、「ゆーれいヒロイン」である明穂さんの(いろんな意味で)浮いているところとか、
 お笑い要素も満載ですが、シリアス部分もきちんと描かれています。
 (むしろこちらの要素がレビュー執筆のきっかけでも有ります)

 以前のレビュー(そらうた)でも書きましたが、
 幽霊はいずれ成仏してしまう存在ですし、この世に居てはならないわけで…

 各ヒロインルートで描かれる、切なさとか、優しさとか…
 居なくなってしまいましたけど、彼女への想いを、かみしめて欲しい作品ですね。

 構成なんですが、共通ルートが5章半、6章がヒロインルートの話になります。
 章毎にピックアップされるヒロインが変わりますので、
 …2周目以降、気になったヒロインがまぁ多いこと…。


システムとか

 選択肢型のオーソドックスなタイプですが…一部、ダミーっぽい選択肢とか、
 「どう見てもネタ」(笑)としか思えない選択肢もいくつかあります。
 共通ルートでの行動が反映されて、4.5章以降の展開が変わっていきますので、
 オンリープレイに徹する形で選択していけば目当てのルートには入れるのではと。

 …クリアする毎に、ちょっとだけタイトル画面が変化しますので、こちらも頑張ってみましょう(謎)。

 セーブポイントは、任意10箇所×9ページ、オート・クイックが各10個(各1ページ)、
 合計11ページで100箇所オーバー、必要十分な量だと思います。
 セーブした時点でのサムネイル表示はありますが、コメントの入力は出来ません。

 システム画面の呼び出しは右クリック及び、メッセージウィンドウの下にアイコンで表示されていたり。
 システムボイスのせいで、かなり色々と賑やかですが、
 起動時には時間帯によってセリフが変わるみたいです。
 (筆者は殆ど夜にしか起動できなかったので、昼のセリフが有る事に気付くのに時間がかかったり)

 バックログは全画面表示で、ヒロインキャラアイコンがこのときだけ表示され、
 セリフが有るときは都度再生できます。
 「(以下略)」のセリフをもう一度最後まで聞きたいとき、なんかにドウゾ(ぇ。

 そんな感じで、全体的に使いやすいシステムでは有りますが…
 一つ難点を挙げると、オートモードがちょっと調整しにくい所でしょうか。
 待ち時間の設定が、セリフありの場合でも有効ですので、
 早く設定しすぎると、主人公のセリフやト書きが読みきれなかったりするところとか。
 …微妙に便利?な場合もありますけれど(謎)。


グラフィックとか

 彩色ですが、所謂セル画っぽい雰囲気ではなく、(水彩系の)イラストっぽい感じですね。
 この辺は独特の美麗さが際立ってます。…好みが分かれるやも知れませんが。

 原画担当のくすくす氏のデザインは、昨今の萌え記号満載(苦笑)のキャラとは違い、
 地味目な印象を受けますが、慣れると非常にとっつき易いです。
 (所謂カラフルな髪の色のキャラが居ない事で、割とリアルな印象を受けます。
 ちなみに野乃崎姉妹は栗色、珠美さんは銀髪、千早は金髪ですけど、
 他のキャラは黒髪とか、精々茶系統ですし)

 立ちCGなんですが、結構種類は多いのではと。
 「ぱれっと」作品ではおなじみらしいのですが、後姿の立ちCGがあったりとか、
 (正面向いて言えないセリフのシーンとかではかなり実感が出ます)
 演出面ではかなり凝ったものが多数…他にどんなモノ(笑)があるのかは、
 ゲーム本編で実際に見ていただければと。

 例えば、主役の明穂さん、「立ち絵が1種類しかない」(本人談)とか言いつつ、
 表情の差分はかなり沢山、「ゆーれい」という設定を120%生かしたポーズの数々、
 先に述べた演出効果もあって、かなり楽しい状況になってます。
 グラフィッカーさん、スタッフの皆さん、お疲れ様でした…愛されてます。

 表情差分でちょっと思い出しましたが、明穂とつばさの怒った顔とか、ウインクした顔とか、
 やっぱりこの二人は血を分けた姉妹なんだなぁ、とか思ったり。

 他、背景とかイベントCGなんですが、必要かつ十分な量と質だったと思います。
 あえて言うならば、主人公も涙ぐむイベントCGなんかが有れば完璧だったかも。
 (例:某「問い詰め1号」さんのイベントCGみたいなの)


サウンドとか

 「ぱれっと」及び「light」系列(流通元?)のゲームをプレイするのは初めてですが…
 ボーカルを担当する「White Lips」さんと樋口秀樹氏のBGMが出色です。

 同タイトルの主題歌は、アコースティックギターのイントロから始まり、
 サビの「今日の別れを惜しむより、明日の出会いに〜」という所がじわりと効いてきます。

 他、挿入歌が都合3曲、エンディング曲が1曲(いずれもWhite Lips)、
 いずれも明穂さんになりきって歌詞をかみしめると、かなり効きます。

 個人的には、挿入歌の「雛鳥」が気に入ってます(ありていに言えば反則級の使い方)。
 あと、ボーカルが入っている「これからずっと…」という曲なんですが、
 サントラで聞いていると、ソプラノが効いていて、まさに天から光が差し、
 明穂が目を閉じ、召されていく様が目に浮かぶような、そんな錯覚を受けました。

 そういう意味では、同じスタッフが作り上げた「Dear My Friend」も同じなのですが。
 (あちらは、「にゅう〜〜」のヒトになりきった感じで)

 BGMは、アンプラグド系の楽器(電気を使わない楽器)が多用され、
 ハープをメインにした楽曲とか、バイオリンをメインにした楽曲とか、
 どれも雰囲気にはマッチしていて、学園のイメージはかなりハイソサエティ(死語)な感じがしました。
 (日常シーンのBGMでは木管系の楽器が多いせいか、スイスとか北欧系のイメージが湧いてみたり)

 この手のBGMでは初めて聴きましたが、哀愁を帯びた楽曲では、
 なんとアコーディオンがメインの曲もあって、結構(いい意味で)驚いていたり。

 全体の印象としては、夏が終わりを告げ、少しづつ、秋の気配と共に、
 別れを含めた、寂しげな印象をそこはかとなく漂わす…そんな、印象を受けますね。


シナリオランキングっぽいものとか

 割と今回は甲乙つけ難い展開で、とりあえず簡単にコメントしておきます。
 というのも、共通ルート上で起きるイベントなんかでも、
 琴線に触れるお話が多数有りましたので、そちらの評価も高い事をお忘れなく。
 (4章ラストの珠美ちゃん号泣シーンとか)

明穂シナリオ

 誰がどう考えても、ゆーれいヒロインと添い遂げる事は、不可能ですし、
 どういう形で決着するのか、興味津々でプレイしてました。

 結末については、ある意味予想通りというべきでしょうが、
 そこに至るお話は、一つでも悔いを残したくないという優しさ、
 重ねられない、「あるはずだった」想い出の数々…
 …結果が分かっているがゆえの切なさは、実に哀しい気持ちにさせられますね。

 ドラマとしては面白く無くなってしまいますが、やはり「本当のこと」を告げた上で、
 「愛ゆえの別れ」というのを描いて欲しかったかな…と思います。
 その場合、彼女はどう行動したのか、気になる所ではありますが。
 (お互いが、涙をにじませ、必死にこらえながらも、にっこり笑って、送り出す感じが俺ベスト)

 個人的に考えたのは、
 本当の事を打ち明けてみたものの、明穂がわがままを言って一旦消える
 →主人公が躍起になって明穂を探そうと必死になり、精根尽きたところで、
 例の件を思い出して、あのラストシーンにつながる、という感じが良かった気がします…。


つばさシナリオ

 そもそも主人公が明穂に告白した切っ掛け自体、つばさが主人公を諦め、
 二人をくっつけようとした所から、三角関係?は始まっていた(表面化)わけで。

 その矢先に、最大最強(絶対勝てそうに無い)のライバルであった姉が亡くなるわけですから、
 哀しみと同時に、チャンスが巡ってきたと喜んでしまう部分もあったり。

 人は人、自分は自分、とは言いますが、(妹の目から見て)完璧な姉を蹴落とすには、
 自分が明穂の代わりをするしかないと思い込んでしまったり、
 コンプレックスが生んだ様々な葛藤とか、結構見所は有ったと思います。

 …で、ラスト、明穂さんの優しさに心打たれてしまう自分がいたり。

珠美シナリオ

 このゲームのファンタジー要素は、幽霊とか怨霊とかが実在し、
 それを処理する職業(拝み屋)が存在する点に有ると思います。

 ま、そんな訳で「鬼切り」(退魔師?)の彼女のシナリオですが…
 スペクタクル要素(笑)とか、ドラマ部分も結構面白かったり。

 中でも主人公を巡るトラブルでは、従来の三角関係に一角加わって、
 四角関係の様相を呈してきますから…他のキャラの動向(特につばさ)が結構効きました。

 …そう言いつつも、やっぱり最後は明穂さんのお節介ぶりが身に染みてしまったり。

千早シナリオ

 何故か主人公に一目惚れの千早ちゃんですが、その理由と、
 彼女が疫病神として世の恨みを買ってしまうまでのエピソードが中心だったり。

 最愛の人を、最悪のタイミングで失ってしまった主人公に対する葛藤とか、
 自分自身の気持ちとの鬩ぎあいが見所だったと思います。

 …でも、ここでも明穂さんの涙交じりの笑顔が…(涙)。

ノーマル?エンドとか

 ええと。とある部分の選択肢を選ぶと、フラグとかに関係なく、このエンドになります。
 …や、メインヒロインのシナリオが終わっても、1枚だけCGが埋まってなかったので、
 このシナリオの存在に気付かされたわけですが。

 明穂が綺麗な形で去っていきますから、ある意味一番真っ当(リアル)なエンドとも言えますが…
 (愛憎の果てにたどり着くヒロインエンドとは違って、という意味です。
  例えば例のシーンで未練を断ちきって成仏した方が、選択として正しい事は分かりきっていますが、
  心には嘘はつけませんし、よりつらい現実が待っているとしても、好きあっているのあれば尚更、
  そうしたくなる気持ちは否定出来ませんし)

 全く救いが無いって訳でも無いので、一度見ておいた方がいいかもしれません。

 何でその後が描かれていないという事に関してですが、
 「この二人なら、お節介しなくても、普通に上手く行く」と明穂が判断したからかもしれません。
 状況からして、明穂は彼女の気持ちに間違いなく気づいていた筈ですし。

 …普通は、こうなるよなぁ…(ある意味、ありえない感じがしないでも無いですが)。


キャラランキングっぽいものとか

 今回、一番はもう「別格」の存在感を放つ明穂さんで決まりなのですが、
 そのほかのキャラもまた魅力的で甲乙つけがたかったり。
 …ま、適当に判断して頂ければ幸いです。

 今更ですが、ファンブックでくすくす氏も語っておられる通り、
 本作のヒロイン達って、皆、強がっているんですよね…(挿入歌「雛鳥」の歌詞、参照の事)。
 本当は好きで好きでたまらなくって、片時も側から離れたくないのに、
 突き放す発言をしたりとか、素っ気無い行動を強いられてしまうところとか、
 …この辺り、皆、とてもいじらしくて、切ないですね…それ故2番目以降が決められないのですが。

野乃崎 明穂(CV:西田こむぎ)

 やはりというか何というか、このゲームって、結局この方に惚れるためのゲームだったのではないかと。
 容姿端麗(ギャルゲですから当然ですが)、成績優秀、身体壮健、明朗快活で器量良しで、
 炊事洗濯、なんでもござれの完璧ぶり。
 唯一の弱点は機械オンチ(携帯は無論、ビデオの予約も出来ない)である事。
 あ〜、後、家の中ではちょっと?ワガママなところとかも(対象は主人公限定ですが)。

 想像するに、生前ですら、そのバイタリティで周囲の人間をぐいぐい引っ張りまわし、
 かなり人気は高かったのではないかと思ったり。
 で、ゲーム内では「ゆーれい」になったことで、さらにパワーアップしているような気がします(汗)。
 …いろんな意味で「浮いて」いるんですけどね…飛ぶ事も出来ますし。

 声優さんの熱演もあって、(死んでるくせに)やたらと生き生きしていたり、
 ゆーれいならではの立ちCGの演出とかが憎いですね…。

 そういえばこのCV担当の西田こむぎさんなんですが、
 今まではちょっとおとなしめの優等生役が多かった(デュエル〜のベリオとか)せいか、
 こういったはじけた系?の演技とか聴くの、初めてかもしれません。
 今回の明穂役は、見事なくらいにハマリ役だったと思います。
 「声力」(造語)っていう言葉があるのなら、見事にやられました、ええ。

 ちょこちょこ書いてますが、サブヒロインのルートでも、色々と見せ場が多く、
 その行動とか言動とかが、物凄く効きますね…この辺の魅力も、一番の理由です。

 …や、こんな人に尻に敷かれてみたいですね…本気でそう思わせるキャラでした(ぉ。
 願わくば、FDとかでワンピース姿とか、水着とか浴衣姿とか披露して欲しいですね…
 「もしも明穂が生きてたら」みたいなタイトルで。<マテ

野乃崎 つばさ(CV:みる)

 主人公と同居する、所謂義妹キャラ(苗字が変わっていないので、二人とも養女にはなっていない模様)。
 …ですが、姉にいろんな面でのコンプレックスを抱いていたり、
 料理の腕は非常にムラがあったりとか、成績はそれほどでもないところとか、
 かなり不完全な妹キャラ、というべきかもしれません。むしろそこが(ry)

 コンプレックスに端を発する、歪んだ、でも一途な恋心は、結構いい子じゃないか、と思わせたり。
 彼女が主役のヒロインルートより、脇役扱いのサブルートでの行動が、
 むしろ彼女らしさ(優しさとか愛情とか)を引き出しているのではないか、と思ってますが。

 自称「ちんちくりんでずんどー」だそうですが、いい意味で騙されました。

湊川 珠美(CV:AYA)

 「鬼切り」を生業とする巫女さんで、つばさの親友。
 5年ほど前からこの姫宮の地の除霊担当となり、初期には明穂に刃を向けますが…。

 話が進むにつれ、冷酷な様でいて、その実繊細な面も持っていて、
 知れば知るほど、優しい子だったんだなぁ、と思わせる所がかなり良かったです。

 心に刃をのせると書いて、「忍」。
 彼女のそれまでの生き方って、そんなことの繰り返しだったのではと。
 除霊をするたび、斬っていたのは悪霊や物の怪だけではなかったのね、と。

 …それを変えたのは親友のつばさであり、主人公だったのですが、
 この先は本編でご確認くださいませ。

千早(CV:まきいづみ)

 体育館裏の合歓の木を寝床にしている、齢500年の神様。
 神様といっても疫病神として存在しており、かつて人々の恨みを一身に受けていました。

 時が経ち、疫病神の封印が切れた頃、合歓の木の周囲には学校が建ち、
 すぐそばには温室が出来ていました。

 本編が始まる前から、園芸部の活動を行う明穂と主人公をそっと見守っていましたが…
 とあるきっかけから、主人公たちと関わって行くことになります。

 自らを疫病神と認識しているせいで、かなり引っ込み思案で他人と関わろうとせず、
 何かあるとすぐ謝ってしまったりする事が多いです。
 「50回から先は、覚えていない!」…などと言ってニヤリ、としてみたり。

 主人公たちと暮らすようになってからは、少しずつ笑顔を取り戻し、
 とりわけアイスクリームで目をきらきら輝かせてしまう辺り、子供っぽいですが
 楽しいキャラだったと思います(勿論本人は都度否定してますけど)。

香坂 彩乃(CV:一色ヒカル)

 主人公と明穂が在籍するクラスの委員長。
 つばさの所属する演劇部の部長もやっていて、声の通りと姿勢は抜群に良かったり。
 …成績とか、それ以外の事は聞かない方が宜しいかと。
 実は、主人公にほのかな思いを寄せていますが、…残念な事にそういうのなかったり。

 ま、あくまで現実にこういった話(大事な人が突然亡くなる)があったら、
 一番ありそうな展開ですから、続きが描かれるのなら、
 彼女にも脈は有った(月並みな話になってしまうでしょうけれど)のではないかと思ったり。

 結構おいしいキャラなので、勿体無い気もしますが…。

白澤 美幸(CV:吉沢悠亜)

 主人公達の担任教師。いつもにっこりしてますが、さり気なくキッツイ言葉を吐いたりする辺り、
 「普通の」学園ものならば攻略対象に入るべきですが…
 …残念ながらそういうのはなかったりしますので、ちょっと残念。

 お話の本筋から大幅に外れますので、彩乃共々、
 攻略対象から外されたのは仕方ない事だとは思いますけどね…。

 勿体無いなぁ…「いいもの」持ってるのに。<やめい

鳩羽 一樹

 本編の主人公。純愛ものの主人公らしく(苦笑)、かなり奥手で女心に鈍感。
 本編開始前、明穂に告白したのですら、義妹のつばさに後押しされたからだったり。
 (雰囲気に流され易い性格らしいです、ちと中途半端な気もしますが)

 そのせいか、本心はともかく、明穂を恋人として見れていなかったのでは、と思ってしまったり。
 …ゆえにこそのサブヒロイン分岐なのでしょうが。
 (恋人未満ですがとても大事な人、という認識は勿論あるようですけど、
  本人が漏らした通り、そんなに簡単に気持ちが切り替えられるなら苦労はしない、って事です
  むしろ引きずりまくる方が、純情な少年の心情的には合います)

 ちょっと個人的に気になるのは、その点もあって、割と淡白に感じてしまうところでしょうか。
 肝心の明穂ルートで、涙を見せていないような気が、するんですよね…。

 ヒロイン共々、笑顔を作りつつも、涙をにじませるくらいの事は(以下略)

東 直之

 主人公達のクラスメイト。
 …いいやつなんですが、ホントに影が薄いです…ストーリーに絡みようが無いので、
 仕方が無いといえばそれまでなんですがっ。

○○ 実(苗字はヒミツ)

 本編の第4章のみで登場する、いわばゲストキャラですね。
 ズバリ、ショタですが、昨今のお子様方と同じく?マセガキっぽいところが沢山。
 でも、いい役どころですよ…本編でご確認くださいませ(ニヤリ)。


プレビューっぽい何か *ネタバレあるっぽいので注意

 今のところ、明穂は僕以外の人には、その声も、姿も見えていないみたいだった。
 で、色々とやり残した事があったそうなので、とりあえず付き合うことにした。

 読みかけだった本を借りてきたり、温室の手入れをしたりとか。

 ――まるで、昔のような、普段と代わり映えのしない、日常――
 もう二度と戻ってくる筈のなかった、平凡だけど満ち足りていた日々――

 そんな僕たちの前に、つばさの友達の…珠美ちゃんが現れた。

 「明穂先輩…幽霊は、成仏しなあかん存在なんや…
  それがいやや、ゆうたらこの刀で無理矢理成仏させなあかん…」

 「わたし…成仏するのなんて、嫌よ」

 ***

 ――彼女の未練って、なんだろう。僕には、何がしてあげられるのだろう――

 「カズちゃん、最後に、デートしよっ」

 ――そういえば、明穂には、恋人らしい事、何もしてなかったっけ――

 「私と…もう一度、恋人として、つきあって欲しいの…」

 触れられる筈の無い体に、触れることすら叶わなかった、腕に、背中に、髪と、唇に、…
 ――触れられた――

 「おねぇ、ちゃん…!?…本当に、おねえちゃん…なの…!?」
 「ただいま…つばさ…」

 ***(第2章)

 ――それは、500年ぶりの、恋。
 ――失恋するのも、500年ぶり。
 ――つい嫉妬してしまったのも、500年ぶり――

 ――壊してしまった。
 ――奪ってしまった。
 ――ふたりが積み重ねて行くはずだった、未来を、幸せを――

 ――だから私は、

 ひとりじゃなきゃいけない。
 恨まれなければいけない。
 罪を、償わなければいけない。

 ――誰かと、かかわりを持ってしまっては、いけない、はずなのに――

 ***

 「そうか、あれが、『姫宮の千早姫』っちゅうことか…」

 ――誰かを恨む事なんて、できやしない。
 恨んだ所で、明穂は帰ってこないし、何も解決しないから――

 「せやな、そいつはもう、ひとり、呪い殺しとる。明穂先輩をな。
  …人に仇為す物の怪を斬るんは、うちの義務や」

 ――しっている。
 けれど、いつも寂しそうにいているあの子の事を、放っておける、はずが無い――

 ――それが、あの子にとって、償いになるかどうかは、分からないけれど――

 ***(第3章)

 自分の気持ちを意識したのは、いつからだったのだろう。
 初めてあの家に来た時、お姉ちゃんに背中を押されたのは、遠い昔。

 お姉ちゃんとお兄ちゃんの気持ちに気付いたのは、いつだったのだろう。
 私の目から見ても、お姉ちゃんは素敵な人で、…

 ――私なんかが、勝てる気が、しなかった――

 だから、諦めることにした。
 いつまでたっても、付き合おうとしない二人をくっつけるため、
 お姉ちゃんに告白するよう、お兄ちゃんをけしかけた。

 ――でも、――

 あの後すぐ、お姉ちゃんはいなくなっちゃって――

 悲しいのに、何故か別の感情がわきあがってくる――

 ――ちがう――

 そんな、つもりじゃ、ないのに、どうして…!?

 ***

 「お姉ちゃんの、ばかぁっ!!…私の気持ちも、知らないでっ!!」

 「うちは…いつでも、つばさの味方やで…証拠…!?…せやな、見したるで」

 「…やっと、素直になれたわね…つばさ…。宣戦布告と…受け取ったわよ…
  でもね…これだけは、そう簡単には譲れないわよ〜〜」

 ***(第4章)

 夜は、いつも、ひとり。
 今日こそは帰ってくると思ったけれど、やっぱり電話があった。

 ――ねえ。

 父さん、あした、何の日か、ちゃんと…憶えてる?
 特別な日なんだから、明日くらいは、子供らしいことして、…

 ――父さんにも、父親らしいことして、欲しかったんだ――

 ***

 いつもの商店街での買い物の途中、人だかりと、そこから出てきた一人の少年。
 ――たった今、そこで、死んでしまって、幽霊になってしまったばかりの――

 ***

 「大丈夫…落ち着くまで、うちがおる…何も、心配せんでええ…な?」

 「たまねーちゃーーーん!『でーと』しようぜっ!!」

 「お前たちは…そんなに、人の不幸が楽しいのかっ!!訳も知らずに、よくも…そんな事が…っ!!」

 「…は、怨霊やから…人に危害を加える前に、斬らなならん…」

 「大好きなたまねーちゃんに殺されるなら、…おれ、本望だよ…」


 「――ッ!!…こうなること、わかっとったから…せやから…うち…
  …幽霊なんて、…だいっ嫌いやねんっ!!


 ――わかっている。
 いつか、僕たちにも、そのときが、やってくるって、こと――

 そのとき、
 ――僕は、どうすれば、いいのだろう――

 ***(第5章)

 衣替えの季節になった。
 学生生活最後の学園祭が迫ってきて、忙しくなってきた。

 でも、何もする事が出来ない明穂は、とても、寂しそうだった――

 だから、最後に、もう一度、明穂のために、何かしてあげようと、思った。

 日に日に忙しくなる中、つばさの所属する演劇部の部員が、大怪我をしてしまって、
 救急車で病院に運ばれていった。

 明穂の勧めも有って、急遽代役を引き受ける事になってしまった僕は、
 肝心の――

 ――明穂の事を、構ってやれなくなっていた――

 ***

 ひとり、夜の教室の隅で膝を抱え――
 肩を震わせ、俯いたまま、ただ、ぽろぽろと、涙を流していた。

 何も出来なくなってゆく、自分。
 疎外感にも似た、寂しい気持ち。
 自分が、もういない人なんだって、思い知らされていた。

 僕は――

 ***

 ――もう、わたしがいなくても、大丈夫よね?

 ――もう、わたしがいなくても、ふたりは、やっていけるよね?

 「カズちゃん、わたし、決めたわ…」
 「……明穂……」

 ***(第6章より色々抜粋)

 「私には、もう、カズちゃんしか、いないのっ!!…だから…嫌いになった、なんていわないでっ!!
  …ずっと、最後まで、そばにいさせて欲しいのっ!!」
 「私が、いつまでも、いるから…だめなのね…わかったわ…」
 「私の、最後のお願いを、かなえてちょうだい…」
 「お願い…あの子の、笑顔を取り戻して欲しいの…」

 ――難しいよ、明穂、…そんなこと、簡単には、出来やしない…

 ***

 「ねぇ…どうしてそうなるの?
  どちらか選べば、ひとつは手に入るでしょうっ!!…両方とも諦めるなんて…だめだよ…」

 ***

 「ずっと…、隠れている、つもり、だったのに…
  …やっと…みつけて、…くれたね…ありがとう…」
 「この○○、もらっていくわね…ふたりの、想いが、つまってる、から…」
 「あなたには、つらい役回りを押し付けちゃって、ごめんね…でも、あなたしか、頼めないの…」
 「…恨んでなんか、いないわよ…」

 「お節介だって、わかってる…けど、あなたは私にとって、大切な人だから…
  …幸せに、なってほしいの…」

 ***

 「最後だけど、私、カズちゃんの事が――」
 「僕も、明穂の事が――」

 『――大好き、だよ――』

 ***(EDテーマ、「あなたを照らす月になりましょう」よりイメージ構成)

 ――例えるならば、生きていた時の彼女は、眩しい太陽。
 いなくなった時、僕たちは、闇に閉ざされて、そこから前に進めなくなってしまった――

 涙の雨が止んで、もしも、明日が晴れたなら――

 ――夜空を見上げよう。

 闇に迷う、僕たちを優しく照らし、導いてくれる、月を見上げよう――

 さあ、今度こそ、明日に向かって、歩き出そう――

 僕たちは、きっと、だいじょうぶ――彼女が、見守ってくれている、…から――


個人的所感とか

 最後に、いつもの如く、いろいろと考察とか所感みたいなものとか。
 ゲーム本編をクリアしていないと分からない部分も有るかと思いますが、
 そのつもりでお付き合いくださいませ。

作品全体を通しての何か

 主人公の心情からして、「死んでしまった恋人」に対して、どう接すればいいのか、
 …というのは、非常に難しい問題だと思います。

 劇中では「生きている人にしか通用しないこと」と珠美ちゃんが説明してくれますが、
 そんな簡単に割り切れないのが人の感情というもの。

 明穂の側からすれば、好きな人のそばにいて、少しでも心を満たしたい、と思うのは当然ですし、
 ましてやそのために、ゆーれいになってまで主人公のところに帰ってきたわけですから。

 反面、自分の存在が枷になって、苦しむ姿は見たくないし、不幸になってしまうのは
 本意では有りませんし、幸せになって欲しいと願うのは当然でもあります。

 本作における明穂の行動とかその願いとかは、色んな形で終わりを告げますが、
 どれもがその葛藤の末に辿り着いた結末ですから、切なさもひとしおですね。

 中国辺りでは、「哭礼」といって、家族が死んだ折に、葬式の間、三日三晩泣き叫ぶ、
 という習慣があるそうです。死者に対する「礼(儀)」なのですが。
 死んだ側からすれば、「誰も悲しんでくれない」「誰も思い出してくれない」ってのは、
 最大級に寂しい事柄ですから、それくらいの事はしてあげるべきですね。

 やっぱりそういった面からも、主人公はひとしきり泣いた後、
 明穂の事を忘れ去ってしまわないように、たまに思い出しては花を手向け、
 「今日の別れを惜しみつつ、明日の出会いに、胸躍らせる」日々を送って行くべきだと思います。

 この作品をプレイし終わった後、思ったのは、人の価値って、生きてるうちは分からなくって、
 死んだ時に、どれだけの人が泣いてくれた(その死を悼んでくれた)かで決まるような気がしたり。
 そういう意味では、自分がその時になったら…ちょっと怖いですね(冷汗)。

 ダメ人間まっしぐらの自分が死んだ時、誰も泣いてくれないのではと。
 ヲタ辞めて、真っ当な人生を進むべきなんじゃないかな、って。

怨霊信仰とか

 日本には、昔からの風習として、怨霊信仰、というものが根底にあります。
 昔の人は、疫病も天変地異も、人災である筈の戦災も、すべて怨霊の仕業、だと考えていました。

 では、怨霊とは生きていた頃、どんな人だったのか。
 最初は、支配者級の高貴な人たちが、その祭祀を絶やされたために、祟りをなすと考えられていました。
 (供養をする子孫が絶えたりすると祟る、という事です)

 時代が下るにつれ、「恨みをのんで死んだ人」「非業の死を遂げた人」が、
 死後、その恨みの力でもって、世を乱すと考えられるようになっていきました。
 (有名どころでは天神様、こと菅原道真さんが有名ですね。
  こちらは都の人々に祟りをなした怨霊が、学問の神様にクラスチェンジ(笑)してます)

 で、祟り神(怨霊)が鎮魂されて、善い神様になったものを、「御霊(ごりょう)」と呼ぶわけです。

 …あれれ。
 ゲームをプレイした人、ちょっと疑問に思うかもしれません。
 千早ちゃんは神様になる順番がちょっと違ってますね…。

 「触らぬ神にタタリなし」の言葉通り、
 本来なら、疫病が流行った時点で、千早は村の人々から恐れられ、
 恨みを買うよりも先に、鎮められよう(祀られよう)、とされる筈だったり。
 (誤解だったとは言え、皆は彼女が原因だと信じていたから、尚更怨霊として扱われるのが普通)
 …疫病神だから、怨霊とは違う、という事にすれば一応は辻褄が合うのですが。

 普通の昔話でしたら、
 祟り(疫病の流行)をなした千早姫を鎮めれば疫病は収まる(鎮魂)と考え、
 千早を祀る「立派な」神社が建立され、疫病改め病気平癒の神様となって現在に至るのが、
 歴史事実としては筋が通ります。

 そうすると、珠美ちゃんの暮らしている神社は何を祀っているのか、
 非常に気になってしまうのですが…
 (千早一家がこの地を訪れるまで、姫宮は未開の地だったそうなので、
 それ以前からあった神社、という説は成立しなかったり)

 …なんか久しぶりに「歴史ヲタ」っぽい話をしてしまいましたね…

 余計ついでにもうひとつ。
 千早ちゃんは生前から金髪だったようですが、500年前といえば、戦国時代真っ盛り。
 鉄砲と共にキリスト教とか伝わり始めた時代ですね。

 とすると、千早の母親は日本に渡ってきた色白の金髪美女で、
 一家は美人のかみさんと添い遂げるため、姫宮の地に疎開?してきたとも考えられます。
 …で、白人系といえば?高温多湿の日本の気候にはあまり馴染めず、
 自然と千早も病気がちの子供になってしまったのでは、と邪推してみたり。
 (持病があった、というより虚弱体質だったのでは無いかと。
  でなければもっと早くにこの世を去っていた筈…)

 そもそもこの時代って、まだまだ医学は発展していなくて、病気治癒といえば
 坊主による加持祈祷とかが中心(穢れのはらい=御祓いと同義)の時代です。
 病気もまた死と同じく「穢れ」と見なされていた時代の話です。

 …ということでケガレ思想の持ち主である父親は千早と触れ合おうとはせず、
 母親はそういう考えの無い方ですから、世話をしていたのは母親、という事も合点がいきます。

 割と強引な論理ですが、意外と整合性があるものだなと。

夏コミドラマCDとか

 本作の「明穂さん人気」を受ける形(と管理人は確信)で、
 2006年の夏コミ(C70)において、ファンブックとドラマCDが発売されました。

 その名も、「もしも明穂が生きてたら」。
 …や、自分がこのレビューで適当に書いたタイトルが「そのまんま」ですから、
 CDを再生してタイトルコールがあったときには、マジで吹きました。

 タイトルからの予測どおり、内容はまさにIFの世界で、明穂が千早の呪いを受けず、
 ラブラブハッピー(死語)な内容になってますね…最初だけなんですが。

 あの時(告白時)の約束通り、ふたりっきりで海に出かけようとしたものの、
 あまりに目に余るバ○ップルぶりを発揮する二人が気になって、いつもの?面子(−1)が
 付いてきてしまう…という内容になってます。(出会っていない千早ちゃんはナレーター役)

 今作の影の主役は彩乃さんですね…
 ノーマルエンドで見せた通り、主人公には、ほのかな想いを寄せていたわけで…
 たまたま明穂の手前、(敵いそうも無いから)遠慮していただけ、なんですよね。

 いみじくも明穂が述懐しますが、本編ではありえなかった幸せですから、
 この程度のバ(ry)発揮した所で、
 「よかったね、よかったね…」…と、目を細めてしまうのですが。 <ゲーム違っ

 で、委員長の恋の行方は…というと、本編でちょこちょこ見せた、
 明穂の優しさが、またしても滲み出してくる形になっていたりと、かなり憎い演出になってます。

 それにしても、ここまで来たら、次回作はIF、Another、Afterシナリオ沢山入れて、
 ファンディスク出して欲しいなぁ、と思ったり。
 IFシナリオならば「明穂が生きてたら」「明穂が生き返ったなら」とか、
 サイドストーリーとしては明穂が死んだ直後から、主人公の前に現れるまでの葛藤を描いたシナリオとか、
 明穂ルートでのその後のえ○話とか、ヒロインエンド後での明穂の供養っぽい話とか…


 とりあえずそこのアンケート葉書出していないアナタ。
 次回作の要望欄に、「明穂ファンディスク」と書きましょう。 <筆者は書いた


「Extra Soundtrack」とか

 2006年10月末に、一部同人系ショップでの取り扱いになりましたが、
 初回版付属のサントラとは別に、サントラが発売されていたり。

 で、本編では勿論使用されていないボーカル曲が3曲追加されていたりしますので、
 この辺の感想を少々追加しておこうかと。

 ★「if」

 この曲は、本編中で使われたBGM「空白の時間」に新たにボーカルを追加したものですね。
 歌詞は全て英語なのですが、ライナーノーツにはしっかり訳詩が掲載されているので、
 中身をきっちり確認すると、その切なさと小さな願いがしみわたる歌になってますね…

 ★「then...」

 こちらはいつものWhite Lipsさんではなく、月子さんによる歌なんですが…
 曲のイメージからすると、「奇跡が起こって明穂が生き返る結末」が有ったとしたら、
 そのシーンではこんな曲が流れてくるのでは、と思わせる歌でした。
 サブタイトルに「生まれ来る子供のために」とありますので、
 あるいは遠い未来、明穂エンド以外で他のヒロインと結ばれて子供が…というエピローグの時とか。

 ★「ゆうれいの心得」

 シリアスで切ないイメージが中心のボーカル曲が中心の本作において、唯一のアップテンポ曲ですね。
 タイトルどおり、明穂さんのポジティブな性格がそのまま歌詞になったような歌です。
 OHPで連載されていた4コマ漫画のノリとか、思い出してしまったり。
 ぶっちゃけ、「明穂さんのキャラクターイメージソング」みたいな印象もあったり。

 それにしても、「これからずっと…」のボーカルが、何語の歌詞を使っているのか…
 非常に気になっていたり。…個人的予測ではイタリア語な気がするのですが。


「Dear My Friend」との比較とか

 …ええと。本作のスタッフが作り上げた過去作品、という事で、今更ながらに、
 この作品との比較検討とかを少々…

 とりあえず、現時点では漸く3周ほど出来た状況だったりするので、
 その辺を踏まえたうえでお読みいただけると幸いです。
 (念の為ですが、当方が崩しているのは2005年末に発売された「コンプリート版」が元になってます)

★まずは大前提の話とか

 「ものがたり」として考えた場合、緻密な設定とか伏線とかを使って、
 壮大な話を楽しむ、ってのも良いかと思いますが、
 そういうものを出来るだけ抑えているお話って、
 プレイヤーの視点から見て、物凄く近いところにあるんですよね。

 そういった場合、ちょっとしたエピソードの中に、自分の体験と少しだけ、
 …ほんの少しだけ、重なる部分とかがあったりする事もたまに有ったり。
 (ちなみに筆者の田舎の知人の中に、野乃崎姉妹に『性格が』そっくりな姉妹が実在しました)

 派手さが無い分だけ、地味でリアルな印象を受ける事が多いのではと。
 2006年に入ってから書いたレビュー、そういった作品が多いですね…。

 世の中は科学万能の時代ですが、幽霊、というキーワードだけを取り上げるなら、
 一つ一つの現象は結構否定される事も多いです。
 (プラズマとか幻覚とか特異な自然現象とか人為的な作為とか)

 …が、それでは説明できないものも多数あり、また科学自体は、
 超常現象の存在自体を否定するに至ってはいない事もまた、事実。
 (超常現象=この場合はギャルゲ世界のファンタジー要素、と言い換えれば分かりやすいかも)

 「智代アフター」「そらうた」「この青空に約束を―」「もしも明日が晴れならば」で
 語られた出来事って、それぞれを観ていくと、
 確かに「そんなのありえねぇよ」と否定する事は出来ますが、
 過去・現在においてはそんなお話が存在しなくても、未来に起こりうるかどうか、
 …と言い出したら、「可能性はゼロじゃない」と言えるのではと。

 …自分に、という事なら思いっきり否定できますが。
 あ、そういえば歴史的背景(事実)から整合性を分析して否定っぽい事を書く、っていうの、結構やってますね…(汗)。

★項目別に軽く比較とか

 1.システム面とか

  元々の「DMF」のリリース時期が2004年7月、という事もあって、
  使い勝手はやっぱり後発作品の方に軍配が上がりますね…
  ただ、light作品の特長として、「Malie」があり、タグの記述よろしく自分でシナリオが書ける、
  というのは結構楽しいかもしれません。…そんなヒマありませんけれど。

  後個人的な話ですが、文字サイズとウィンドウはやっぱり見やすくして欲しい気が…
  字が小さいのはちょっときつかったりするので(汗)。

  そうそう。DMFでは通常イベントの回想も出来るので、「もしらば」にも、
  その機能が有ったらなぁ…と思っていたり。
  …無性に泣きたくなった時に、名シーンをリプレイしてみたりとか。

 2.グラフィックとか

  単純に数だけを見ていくのならば、「もしらば」の方が圧倒的に多いですね。
  後は演出面で色んなエフェクトがかかっているので、この辺は好みでしょうか。
  …多ければいい、って言うものでも無いですが、そもそも「もしらば」自体、登場人物が少ないですし。
  (その分一人当たりの数量が増えている、という事かも)

 3.サウンドとか

  主題歌はどちらもゲーム本編のイメージにぴったりなのでどちらが上、というのは判定しがたいですが、
  BGMに関しては、印象深さの点で「もしらば」がかなり効きますね…
  挿入歌である「たまあひのうた」との比較感想とかは、更に下で書いてみました。

 4.シナリオ面とか

  青春もの(DMF)と悲恋もの(もしらば)を単純比較するのが、そもそもおかしいかもしれませんが…。
  やっぱり、「DMF」とかでも、サブヒロインシナリオで麻衣・都香辺りがもう少し絡んでくれたらなぁ、
  …とは思います。

  明穂さんがでしゃばりお節介過ぎるのかもしれませんが。

★「たまあひのうた」(「DMF」の挿入歌)とか…あと、月夜さんとか(ぼそ)

 この「たまあひのうた」が、いのちを慈しみ、魂を呼び戻す唄ならば、
 「雛鳥」(もしらば)は別れを告げる、旅立ちの唄かもしれません。
 (歌詞的には、つばさルートでの出来事を、後につばさ自身がしんみりと振り返る感じ)
 …個人的には、「これからずっと…」が『そらうた』っぽい気がしていたり。

 「DMF」と「もしらば」を比べるならば、先のような対比の意味が込められている、
 …そんな気がしたり。

 月夜さんのお話は一応ハッピーエンドですが、
 「もしらば」に関しては、プレイヤーがどう足掻こうと、明穂が生き返る事は有りません。
 (一応月夜さんと明穂さんは中の人が同じだったりするので、以下ピックアップしてます)

 月夜さんというキャラは、現代人の抱える問題をさり気なく表している気がしたり。
 というのも、彼女は友人達との付き合いですら、本心で語り合っていない感じですし、
 恭一君たち以外との付き合いでは、×××すら有ったりして、
 恭一君たちがいなければ、登校拒否とかあってもおかしくない状況になっています。

 例えば、中高年の会社員が、職場内の人間関係に疲れ、
 職を辞したり、果ては自殺やら精神面で追い詰められてしまう話は良く聞きます。

 私自身もそうですが、同年代の同僚は殆どが退社してしまい、
 職場内で普通に話せる人間が殆どいなくなりつつあったりします。

 そうすると、コミュニケーション不足もあって、自分がどんなに仕事をこなしていても、
 自分の存在意義が見出せなかったり、認めてくれる人も競争相手もいないから、
 やりがいとか達成感も感じる事が出来なくなっていくわけで。
 …これが積もり積もっていくと、先に出た様な弊害を生んでしまったり。
 (それゆえに月夜さんにとっては、恭一君たちが、学校生活における唯一の支え、なのではと)

 月夜さんは、ばけもの呼ばわりされ続けてきた結果、
 自身の命を軽く考えがちになってしまっている気がします。
 大好きな恭一君だけでなく、周りの全ての人に、生き物に、自分の命を捧げ、

 …そして…
静かに旅立っていきます…

 明穂さんは、ゆーれいになった自分が、何も出来ない存在だって思い知らされて、
 言い表せない寂しさと疎外感に包まれ、ひっそりと決意します。

 ――もう、わたしがいなくても、大丈夫よね――

 必要とされていないのなら、せめて自分の命を使って、みんなは幸せを掴んで欲しい。
 ひとりで歩き始めたのがわかったから、もうわたしは必要ないから――

 ――ほんの短い間でしたけど、それでもわたしは、しあわせでした――

 奇跡が起きて、ほんの少しだけ、もう少しだけ、幸せでい続ける事が出来たひとと、
 奇跡は起こらず、気持ちはそこにあるのに、永遠の別れを告げる事になったひとと――

 どちらがより多くの人に感動を与えるかはここでは判定できませんが、
 個人的には、悲劇を演じる事になった彼女に、惹かれてしまっています。
 根底にあるものは同じだと思いますが、それぞれの立場が異なれば、
 これほどの違いを生んでしまう例だといえるのかも。

 だからって訳ではないですが、「DMF」(月夜さん)に惹かれた方は、機会があれば、
 「もしらば」をプレイしてみて、その切なさに涙して欲しいと思っていたり。
 (個人的主観においては、DMFよりもしらばが現時点では上、という事です)


謝辞

 毎度の事ですが、今回も30KBオーバーの長文になってしまいましたね…
 (補記:追加更新により40KB軽く超えているっぽいです、ご参考まで)
 最後までお付き合いいただいた皆様に、無上の感謝を。

 例によって、いい加減な記憶とその場のノリでやっているレビューですので、
 筆者の記憶違いとか、確信犯的な捏造創作が多数入っていたりしますので、
 その点はご容赦いただければ、と思います。

 今回のプレビューに関しても、ヒロインルートでの内容を大幅にカットしてますので、
 文字面だけ見ると、何が何やら、な状況だとは思います。

 勿論、このレビューは「この作品に興味を持ってもらう」事が主眼ですので、
 これを切っ掛けにプレイなり購入なりしていただいて、実際に確かめて欲しいですね…。
 でもって、切ない気持ちに浸って、ぽろぽろと泣いてもらえれば、本望ではないかと。

 当レビューに関しまして、誤字脱字の指摘とか、その他要望・ご意見・ご感想とかは、
 当サイトのBBS、またはメールにて直接いただけるよう、お願いいたします。
 (筆者も割とニブチンなので、言っていただけないと分からない場合も有りますので)

 では、またの機会にお会いいたしましょう。…いつになるかは分かりませんが。
                                            (2006.07.22)


更新履歴

 ●Ver.1.00 初稿完成、Web公開開始(2006.07.22)
 ●Ver.1.01 誤記修正、補足説明とか追加(2006.07.23〜26)
 ●Ver.1.02 「キャラクターコメント」一部追記(2006.08.31)
 ●Ver.2.00 「夏コミドラマCD」コメント追加、一部反転処理(2006.09.03)
 ●Ver.3.00 「DMFとの比較」コメント追加、一部修正及び追加(2006.11.03)
 ●Ver.3.01 「Extra Soundtrack」コメント追加、一部補記追加(2006.12.03)





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