性格特性5因子モデル−Five Factor Model−
ヒューマンスキル研究センター 代表取締役  細川 政宏
 以前、「あまり知られていない性格論争」のところで、いまだに決着をみていない根本的な論争が続いていることをお話ししました。すなわち、性格という特性が実体としてあるのか、あるいは単なる認知モデルなのかというものでした。分かりやすく言うと、人間には性格という持続し一貫した行動傾向があるのか、それとも、性格とは、人間が、人間を理解するための素朴な虚構モデルなのかという疑問です。
 行動か認知かという、いわば心理学における基本的な対立は棚上げにして、1980年以降、一歩踏み出した新たな取り組みがアメリカで精力的に開始されました。
 日常的な言葉の中から性格を表現する言葉を選び出し、それを分類するという研究です。たとえば、ゴールドバーグは、約18,000語を評定し、約1,600語を75のカテゴリーに分類されたものを使い、187名の大学生を対象に自己の性格をチェックさせました。そのデータを因子分析という統計的手法を用いて分類したところ、それ以前に知られていた5つの性格特性(因子分析では因子という)が明らかになりました。コンピュータを使って計算しなければ分析できない大変大がかりな研究です。その後、多くの研究者が対象や質問項目を変え確認のための研究を行ったところ、性格特性の分類名称にはやや違いが見られるますが、この5つの構造そのものは同様に見いだされているのです。
 こうした研究からわかることは、「人は、性格を表現したり性格の違いを見いだすときに、大きな5つのカテゴリーを使っていて、それは国や文化に無関係のようだ」ということです。認知主義が大きく台頭してきたのです。ちなみに、柏木らの日本語版5因子モデルを次に示しておきます。(「1993 心理学研究64 153-159」を筆者が一部改変) 

@情緒不安定性(Neuroticism)→TA理論のACに相当
・不安になりやすい ・心配性 ・悩みがち ・動揺しやすい ・傷つきやすい  他
A外向性(Extraversion)→TA理論のFCに相当
・活動的な ・積極的な ・外向的な ・引っ込み思案ではない ・内気ではない 他
B知性(Openess to experience)→TA理論のAに相当
・多才な ・先見の明がある ・洞察力がある ・頭の回転が速い ・機転がきく 他
C同調性(Ageeableness)→TA理論のNPに相当
・優しい ・寛大な ・温和な ・親切な ・人の良い 他
D誠実性、良心的特性(Conscientiousness)→TA理論のCPに相当
・飽きっぽくない ・無責任ではない ・いい加減ではない ・怠惰ではない 
・ルーズではない 他
 それぞれの5つの特性に付けられた名前はTA理論(交流分析)とは異なりますが、内容はRCを除いた5つの特性と対応していることがわかります。
 しかし因子分析では、因子の数を特定し因子解釈をする段階で直感的な思考が求められ、結果に対する曖昧さを完全に払拭することはできません。従って、5因子であるのか6因子なのかは微妙な問題だともいえます。
 
                     
参考文献 「性格の評価と表現」柏木繁男 有斐閣ブックス
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