あまり知られていない性格論争!!
ヒューマンスキル研究センター 代表取締役  細川 政宏

 前回、「血液型による性格判断」のところで、性格と血液型の関係について論争があったことをお伝えしました。そして、1937年、その関係性は否定され、論争は決着にいたりました。
 
 ところが、もっと根本的な論争が起こっていたのです。しかもその論争はいまだに続いています。
 
 従来、性格という概念はあたりまえのものとして信じられてきました。私たちも、日常的にこの「性格」という言葉をよく使います。「あの人の性格は、・・・」「彼とは相性がいい(性格が似通っている)」「長男の性格は誰に似たんだろうか?」といったようにです。そして多くの人は、「性格とは何だろうか?」と疑うこともないでしょう。ましてや「性格なんてない」と考える人はほとんどいないと思います。研究者といえども状況は同じでした。「性格の違いが行動の違いを生み出す」という仮説を検証するための研究が数多く行われてきました。
 
 1968年、W.ミッシェルという心理学者は、性格についてのそれ以前の研究に対して痛烈な批判を加えました。論点は2つありました。

@人間の行動を観察した結果から導き出された性格という概念が、人間の行動の原因と考え、 その性格によって人間の行動を予測しようというのは明らかな循環論であり、間違いである。
A実際に、人間の行動は、どんな状況でも一貫しているわけではない。過去の研究結果を検討しても、異なる状況での人間の行動の間には「低い相関」しか認められなかった。

 とし、それ以前に次のように考えられていた性格概念そのものを否定したのです。

@性格は行動の内的な原因である。
A性格は時間が経過しても変化せず安定している。
B性格は状況が変わっても一貫していて安定している。

その後、「性格はあるのか」という大論争が20年以上にわたって続いています。日本では、この余波をまともに受け、研究ができなくなったといいます。欧米では、この論争を踏まえて「性格特性5因子モデル」の研究が起こってきました。ちなみに、最近の性格心理学では、性格を「内在する実体」とは考えていないようです。人間は、行動を手がかりとして、性格というものをどのように理解するのかという視点に立っています。認知の問題と考えているのです。自己認知、他者認知という問題ですね。「性格特性5因子モデル」については、次の機会にお話ししましょう。

参考文献 山田洋子編 1997   「現場心理学の発想」 新曜社23-126
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