とめよう排覚主義と戦争への道(

作家の辺見庸さんは言います。

  なによりも拉致事件報道は総じて一次元的で、多分に感情的であり、いずれも深い歴史的観点に欠ける。いや、情緒的である分だけ、深い歴史的観点をもちだすこと、すなわち異論をさしはさむのを許さない危険な雰囲気を醸しているのである。
 (辺見庸「反時代のパンセ」第58回、『サンデー毎日』2002.10.20)

拉致被害者家族や「救う会」「拉致議連」の主張は日々詳細に報道され、多数世論の同情と支持を集めています。そして、それらと少しでも違う報道や論議は許さないという風潮が強まっています。

 その先にあるものは何か。おぞましいまでの朝鮮民族に対する排外主義、そして有事法制、対北朝鮮軍事攻撃への地ならしではないのでしょうか。
事実、「救う会」「拉致議連」のメンバー=侵略の歴史を美化し、有事法制を積極推進する人々、ということを見逃すことはできません。

  拉致事件は許されるべきことではありません。家族の怒りも当然です。
ところが、その「当然の怒り」を利用し、煽るだけ煽り、ナショナルな「義憤」にかられた人々をつくりだし、戦争政策を支持させる。こんな流れができつつあるようで、空恐ろしいものを感じます。

  曽我ひとみさんの家族へのインタビューを掲載した『週刊金曜日』への、すさまじいまでの非難の嵐。「救う会」関係のホームページ掲示板での、正視に堪えない『金曜日』への罵詈雑言の数々。これも黙って見過ごすわけにはいきません。「国民が一致結束すべき時に足並みを乱すような報道をするな」という批判がありますが、そうなれば自由な言論は死に、戦争への道につながってしまいます。

  さすがにこれではまずいと感じたのか、一般のマスコミでも『金曜日』の言い分をそれなりにしっかり伝えているところもありました。
 例えば、TBS系CSニュース専門チャンネル「JNNニュースバード」では、『金曜日』の黒川宣之発行人の記者会見を5分以上の時間を割いて 集中放送。スポーツ紙では、なぜか読売系の『スポーツ報知』が黒川氏の会見を一番大きく掲載していました。

  私が『週刊金曜日』の定期購読者だから言うわけではありませんが、ワンサイドで排外主義を煽る拉致報道とは一線を画する『金曜日』の姿勢を、支持したいと思います。

  11月10日の日比谷野音における「労働者総決起集会」での「特別決議」、 および11月20日の「STOP! 有事法制11.20船橋市民集会」で、百万人署名運動から閉会のあいさつに立ったTさんが強調していたこと。それは、 排外主義を許さず、有事法制をとめること。これこそが、私たちが立つべきポイントなのだと、強く思いました。

2002/11/23 written by R.M.