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さきちゃんの「徒然ぺンペン草」

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 (5)闇夜の和牛

<共通語バージョン>

 「そんなー、それって牛に早く走れって言ってるようなものですよ」と言ったら、Yくんが真顔で答えた。

 「牛って早いんですよ。知りませんか?」

 Yくんの里では牛が逃亡すると有線放送が町中に流れると言う。

 手の空いている者は、逃亡した牛を探さなくてはならない町の掟だそうだ。

 なぜなら、逃亡した牛は和牛で黒いから暗くなるまでに捕らえないと、とて も危ないことになるらしい。

 それで、まぁ、みんな出て探すのだが、牛を見つけて「牛だ!」と走り寄ると、そりゃーとんでもないスピードで逃げるらしい。

 牛を見つけた時は、速やかに落ち着いて

 「僕は散歩しているんだ。おや? こんなことろで牛も散歩しているぢゃな いか。これは、これは、旅は道連れ世は情け、と言うぢゃないですか」

 とさりげなく、あくまでもさりげなく近寄り、がっしと鼻輪を掴むのだそうだ。

 このさりげなく近づくときに少しでも緊張感が出ると、これまたものすごいスピードで逃げるらしい。

 もちろん鼻輪を掴み損ねても、同じことだそうだ。

 だから、牛がトロイと言うのは思い違いだと、とくとくと諭された。

 早くしろと言われて、ああ言ったらこういわれたってことです。

 「闇夜の牛」はとっても怖いらしい。

 突然目の前に現れる闇の壁。

 車が壊れるらしい。もちろん大切な和牛も壊れるそうだ。

 早くしろとせつかれて良い表現で逃げたと思ったのに・・・

 ちくしょー! 

<出雲弁バージョン>

 「そげなー、さ おし(牛)ね早ね走れ てて言ーやな もんだわね」てて言ったら、Yやんが本気ね なって答えたがね。

 「おし(牛)は はえ(早い)じね。知らんかね?」

 Yやんの里は おし(牛)が逃げーと 有線放送が じげ中ね 流れーげな。

 手の空いちょー しは、逃げた おし(牛)を探さんと えけん ちー じげの決まりだげな。

 なんでか ちーと、逃げた おし(牛)は 和牛で黒いけん 暗んなーまでね つか(捕)まえらんと、えらい おじぇいことね なーげな。

 そーで、まぁ、誰んもで探すだども、おし(牛)を見ちけて「おし(牛)だ!」てて走ー寄ーと、そら がいな勢いで逃げーげな。

 おし(牛)を見ちけたら、速やかに落ち着いて

 「おらは散歩しちょーじ。あら? こぎゃん とこで おし(牛)も散歩しちょーがな。こらまたなんだら、旅は道連れ世は情け、てて言ーがね」ちーやね さりげなく、あくまでもさりげなく近寄って、がっしと鼻輪を掴んげな。

 このさりげなく近づくときね ちょんぼしでも緊張感が出ーと、こらまた がいな勢いで逃げーげな。

 もちろん鼻輪を掴ん損ねても、おんなじ(同じ)ことだげな。

 だけん、おし(牛)がトロイちーのは 思い違いだてて、くどまんど 言って聞かしぇらいた。

 早ねしぇ ててと言わいて、あげ言ったら こげいわいた ちーことだわね。

 「闇夜の牛」は がいね おじぇ げな。

 あただね目の前ね現れー闇の壁。

 車が めげーげな。もちろん大事な和牛も めげーげな。

 早ねしぇ てて しぇちかいて え表現で逃げらと思ったね・・・

 こんちきしょー! 

 

 

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(6)変なクセ

<共通語バージョン>

 どうやら私には変なクセがあるらしい。

 人はだれしもクセの一つや二つ持ていて当たり前。

 昔っから持っていたクセではないのだが、何時しか付いたクセがある。

 それは、なんでもにおいを嗅ぐクセだ。

 食べ物だけならそう変でもないが、手にするモノ全てをつい嗅いでしまうのだ。

 匂いのありそうなモノ、無臭そうなモノ、一切関係なしに、とにかく嗅いでしまう。

 少々恥ずかしい気もするので、人前では極力しないようにしていたのだが・・・

 先日、久しぶりに友人宅へ泊まりに行った。

 「先にお風呂に入ってね」の声に、着替えを出しながら、つい私は自分のパンツを嗅いでしまったのだった。

 勿論、着替えなのだから清潔なモノなのだが。

 はっと、気が付けば友人の奇妙な笑顔が見えた。

 クセとは所構わず、本人の意思とは関係なしにぽろっと出てしまうモノなのだ。

 これが、慣れ親しんだ友人の前だからよかったものの

 全く知らない人の前だったら・・・

 匂いを嗅ぐのは悪いとは思わないが、パンツをつい嗅いでしまうとは、我ながらなんともトホホな気分になった。    

<出雲弁バージョン>

 どーも おち ねは変なクセがあーやな。

 ふと(人)は だれんもクセの ふとつ(一つ)や二つ持っちょって当たー前。

 もかし(昔し)から持っちょったクセだ ねだども、何時だいごろから ちいた(付い)たクセがあー。

 そら、なんでも かんでも においを かずんクセだわね。

 くいもん(食い物)ばっかなら そげん変だねだども、手にするモン ごっと ちい かずんで しまーわね。

 匂いのあーやなモン、ねやなモン、なんだい関係なしね、とにかく かずんで しまー。

 ちと恥ぢかしやな気が しーもんで、ふとまえ(人前)で さんやね 気ちけーちょーだどもね・・・

 こないだ、ふさし(久し)ぶーね どしのとこへ泊まーね えったわね。

 「先ね風呂ね つかって ごしなはいね」てて言わいて、着替えを出しながら、つい おち は わ(自分)のパンツを かずんで しまったがね。

 勿論、着替えだけん きれいなモンだどもね。

 はっと、気がち(付)いたら どしの えなげな笑顔が見えたわね。

 クセちーもんは所構わず、わ の意思とは関係ねだけん ぽろっと出てしまーモンだがね。

 か、慣れ親しんだ どしの前だけん よかったがね

 じぇんじぇん知らん しの前だったら・・・

 匂いを かずんのは えけんとは思わんだども、パンツをつい かずんでしまーてて、わ でも トホホな気分ねなったわね。

 

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(7)薔薇の誤算

<共通語バージョン> 

 本屋でふと手にした本ですっかり「ばら」に魅せられてしまった。

 それは花屋に並ぶ絢爛豪華な「ばら」ではなく、野ばらや古典ばらだった。

 一重で素朴であったり、丸い花びらでまるでキャベツのような花形。

 そして、バラは農薬をガンガン使わなければ育てられない。と思っていたのに・・・どうやら原種や古典ばらは病害虫に強くてやり方次第では農薬を使わなくてもなんとかなるらしい、と知った。

 そうなるといてもたってもいられなくなり、園芸品屋さんをくるくる回り、苗を通信販売してくれるばら園へカタログを請求した。

「あっ、これ素敵c」

「きゃー、なんて可憐なの!」

 園芸品屋で一目惚れして買って帰り、本で見て惚れた品種をカタログで見つけては注文し、早く苗が届かないかと日々首を長くした。

 だが、私は一番重要な事を忘れていた。

 今のアパートのベランダは狭くてなおかつ日当たりが悪い。

 そんなベランダに置ける鉢の数は知れている。

 なのに次々苗は届く。

 中には大きくなるモノや果ては「つるばら」(数mに育つ)まである。

・・・どうする?・・・

 取りあえず苗を前に頭を抱えた。

<出雲弁バージョン>

 本屋で ちょっこし手ねした本で がいね「ばら」ね魅しぇらいて しまった。

 そら 花屋ね並んじょー絢爛豪華な「ばら」だ なて、野ばらや古典ばらだった。

 ふとえ(一重)で 素朴で あったー(あったり)、まり(丸い)花ぶらで まーでカンラン ないな花形。

 そーね、バラは農薬をえっぱい使わな育てられん、てて思っちょったがね・・・そーだども  げんし(原種)や古典ばらは びょうがいちー(病害虫)ね つよて(強て)やーかた次第では農薬を使わんでも なんとか なーげな、てて わかった。

 そげなーと じっと しちょられんやね なって、たねもん屋さんを 歩いて、苗を ちーしんはんばい(通信販売)してごさい ばら園へ カタログをまーやね たのんだ。

「あっちゃ、か え は」

「あらら、なんちー 可愛げな かいの!」

 園芸品屋で ふとめぼれ(一目惚れ)して買って帰って、本で見て気ね えった品種をカタログで め(見)つけては ちーもん(注文)し、早こと苗が届かんかいのー てて 毎日首を長んしちょった。

 だども、おちは えっち 大事な事を忘れちょった。

 えま(今)のアパートのベランダは しぇまて(狭くて) そーね日当たりが わり。

 そげなベランダね置けー鉢の数は知れちょー。

 そーだね じじらね苗が届く。

 中ねは大きん なーもんや しまいにゃ「つーばら(つるばら)」(数mに育つ)まであー。

・・・どげ しーだかや?・・・

 とー(取り)あえず苗を前ね頭を抱えこんだ。

 

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(8)「ほーけまち」は死ななきゃ治らない

<共通語バージョン>

 私のとろくさいのは今に始まったことではない。

 幼い頃から筋金入りの「けそ」である。

 右手ではさみを持っていながら何故か右手をそのはさみで切ってしまうような、そんなことは良くある話で、ぶつかる 落ちる 転ぶ は得意中の得意だ(自慢してどうする^^;)

 まぁ、それでも自分が痛い思いをするばかりで他人様に迷惑をかけるでなし、あまり気にせずいたけれど・・・

 とうとう他人様に迷惑(?)をかけてしまった。

 歩いていてトラックの目前に転がり出てしまったのである。

 原因は単純、己のスニーカーの紐を己で踏んで道路へ向けて転んでしまった。

 「あっ、やられたな」

耳元で響くブレキー音。

 だが何がどうなったかよく分からないが、私は潰れもせずアスファルトの温もりを腹に感じながらトラックのタイヤを見つめていた。

 幸いにして体の何処も壊れた様子はなく、掌に僅かな擦り傷があっただけ。

 が、まだ若いトラックの運ちゃんの精神的ショックは相当だったらしく、今にも倒れそうな顔をして私を見ていた。

 勝手に転んだ所へたまたま通りかかっただけなのに・・・

 歩くときも気を付けなきゃ、と心の中で決心して一週間。

 今度は車が来るから、と道路の端に寄ったつもりが、道路と田圃の間の用水路に落ちた。

<出雲弁バージョン>

 おちの どんくしぇのは えまね(今に)始まったことだね。

 ほしぇ頃から しょねの えった(入った)「ほーけまち」だがね。

 右手ね はさみを持っちょーだども なんでだい 右手をそのはさみで切ってしまーやな、そぎゃんことは よーあー(良くある)話で、ぼちかー 落ちー まくれー は えてちー(得手中)のえて(得手)だわね(てぼめ して どげーすーかね^^;)

 まぁ、そーでも わが えて(痛い)ばっかで ふとさま(他人様)ね迷惑かけーだなし、あんまし気ねさんこね おったども・・・

 とうとう ふとさま(他人様)ね迷惑(?)をかけてしまったわ。

 歩いちょってからね トラックの まんまえね まくれて しまったわね。

 原因は単純だがね、わのスニーカーの ふも(紐)を わで踏んで みちばた(道端)ね向けて まくれてしまったわね。

 「あっ、やらいたわ」

耳元で ふぶく(響く)ブレキーの音。

 何が何だい どげなっただい かいしき 分かん だども、おちは潰れらんこね アスファートの のくもー(温もり)を腹ね感じながらトラックのタイヤを見ちょったわね。

 え あんばいね 体の何処だい めげた様子はなて、掌ね ちょんぼし擦り傷があったほどだったがね。

 だども、まんだ わけ(若い)トラックの運ちゃんの精神的ショックは がいな だった みたいで、えまねも(今にも)倒れーやな顔して おちを見ちょらいた。

 勝手ね まくれた所へ たまたま通りかかっちゃった ほどだね・・・

 歩くときも気を付けらな、てて こころん中(心の中)ね決めて一週間。

 こんだ(今度)車が来ーけん、てて みちばた(道端)の わき(端)ね寄ったつもーが、道と田ん中の間の いでがわね 落ちたがね。

 

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