アンテナ研究室

 DL7PE Micro Vert Antenna の動作解析について

はじめに

DL7PE Micro Vert Antennaはその名の通りドイツのDL7PE Juergen Schaefer氏が考案したアンテナですが、日本国内ではサイズが小型で再現性もよいことから最近はローバンド、特に160mバンドでの使用例がインターネット上で多く見受けられます。
なお、このアンテナについてはDL7PE Juergen Schaefer氏によって書かれた英文の文献が
http://download.antennex.com/preview/archive4/Apr601/microvert.pdf に発表されていますが、参考になる設計寸法の式以外は動作原理等も含めてあまり詳しくは書かれていないようです。

このアンテナを日本に紹介したのはJA1SCW 日下 覚 氏で、2004年12月号CQ ham radio誌に「Micro Vertの製作」の表題で紹介・製作記事を書かれていますが、アンテナの構造や測定の結果等も詳しく書かれており、このアンテナを製作する上ではむしろこの記事の方が非常に参考になると思います。

私もこの記事を読んで小型で簡単な構造のこのアンテナに非常に興味を持ったのですが、特に同軸ケーブルの芯線のみがラジエーターに接続され、ケーブルの外部導体(シールド部分)はどこにも接続されず、同軸ケーブルの中途半端な長さのところにトロイダルコアが挿入されているなど、一般のアンテナと比較すると特異な形状で一見50Ωにマッチングしそうに思えないのですが、調整・測定するとちゃんとVSWRが1.0近くになるという動作原理不明な非常に面白いアンテナです。また、このアンテナは運用時、アースの事を考える必要がない事も魅力のひとつでした。

私も最初は文献のデータでテスト的に製作してみたのですが、その結果は無調整でも予想以上に低いVSWRを示しました。
テストは21MHzバンドで行い、DL7PEがカウンターポイズと呼んでいるトロイダルコアまでの同軸ケーブルと同軸ケーブルをトロイダルコアに巻いたRFC部分の地上高は、波長的にも非常に低い状態でした。
試作テストの結果、このアンテナの地上高をもっと高くすれば、十分実用になるFBなアンテナになるのではないかと思い、完全垂直タイプでRFC部分の高さを地上高約5mにしてテストを行ってみたのですが・・・。
テストのVSWR測定値は非常に高く、アンテナ・インピーダンス測定値は50Ωよりはるかに低い値で散々な結果でした。
そこでまずRFC部分の高さを地上高約5mのままにした状態で、アンテナ・インピーダンスを高くする方法を考え、その考えに基づいて行ったカット・アンド・トライの繰り返しによるテストで、外見上はDL7PE Micro Vert Antennaと同じでも、文献上の式によらない数値データを使用しても良好に動作するアンテナが存在することに気付きました。
そこでいろいろなバンドで製作テストを行い、また、その動作原理を解明すべく JE3HHT 森 誠 氏作成のアンテナ解析ソフト「MMANA」を使用して計算を繰り返してきました。
今回それらのアンテナを皆様にご紹介すると共に、そのアンテナの測定結果と計算結果からDL7PE Micro Vert Antenna の動作解析を行ってみましたので、その結果もご紹介します。