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ここでは特に推薦したい作品を取り上げます。


VIRUS (2006)                         HEAVENLY
                


2004年の前作「DUST TO DUST」で私の胸に焼印を押すほどの強烈なインパクトを残したHEAVENLY。当時アルバムも相当日本市場を意識した作りで、ラストには日本盤限定でアルバムタイトルトラックを無理して日本語で歌ったものをボーナストラックとして封入したり、専用ハードケース化したりとまさに最高の作品そして最高のタイミングで勝負を賭け、順風満帆で放っておいてもスターダムにのし上がるところまで来ていた。ところが、待てど暮らせど来日の話が無い。そんなこんなで2005年が過ぎてしまった。この時点でHEAVENLYは一つ目のとても大きな好機を逃してしまったといえる。私自身、当時は来日しない理由が全くわからなかった。実際はバンドがとんでもない事態に陥っていたわけだが・・。とにかく絶好のタイミングを逃したことは確かで、再び出番を得るためにはかなりの緩んだ手綱を引き寄せる必要があるだろう。そんなこんなで音沙汰無く時は流れ、2006年に4枚目の新作が届けられた。まず目を引いたのが発売元がAVALONレーベルに変わっていること。そしてライナーを広げたところでア然とする。「DUST TO DUST」発表後、ギター、ベース、ドラムが相次いでバンド脱退。同時にレコード会社のNOISEとも契約が打ち切られていたという。まるでかつてのRIOTのような地獄を味わっていたのだった。しかしヴォーカルであり中心人物でもあるBEN SOTTOのこのバンドに賭ける執念は常人の理解を超えたものだった。また彼自身が、前作「DUST TO DUST」までに築き上げた音楽性及び方向性に相当な自信を持っていたのは間違いない。驚いたことに既に空中分解してしまったHEAVENLY機の修復にたったひとりでとりかかり、新ギター、新ベース、新ドラムの加入そして作曲、アレンジ、レコーディング、レコード会社との契約、全てを猛烈な勢いでやり遂げ、なんとかHEAVENLYとしての4作目をリリースさせたのだった。私はここに、そこまでしてバンドを存続させようと身を削ったBENの選択は決して間違ってはいなかったものと断言する!正直、たたみかけるほどの勢いがあった前作「DUST TO DUST」のアルバムが持つ特別なものにしか与えられない強烈なオーラは本作には無い。また、リズム隊総入れ替えの影響による若干の違和感も無いとは言えない。しかしそういう逆境の中でもソングライティングのすばらしさはHEAVENLYならではのものがありこのバンドにしか出せない見事な味が、それらのマイナス要因をすっかり中和させ結果的に作品を相当高い次元へと押し上げているのだ。益々BENという男を見直すと共にこのアルバムでHEAVENLYがついに聴けば聴くほど好きになるスルメ作品にまでたどり着いたと言える。1曲目「THE DARK MEMORIES」は今でこそ自分のFAVORITE曲にはなっているが、前作の流れを期待した状態で入ると思わぬ肩透かしをくらう。つまり第一印象、最初のつかみに失敗する結果を生みかねない曲といえる。ここはとりあえず4曲目の「THE POWER & FURY」あたりを頭に持ってくるべきだったのではないかと思ったりもする(勝手に)。とはいうものの今ではすっかりお気に入りで、サビのキスクっぽい歌い方や得意なGAMMARAY的サウンド構築の仕方は安心感すら感じる。2曲目「SPILL BLOOD ON FIRE」はキャッチーなミドルテンポ曲でテーマ曲みたいなもんだろう。VIDEO CLIPとラストには日本語バージョンでも歌っている。3曲目「VIRUS」はアルバムの中で今いちばん好きな曲で、今までのHEAVENLYには無かったGAMMARAYのスラッシュ的アプローチで始まり、1:48~から珠玉のメロディ展開が広がる。ギターソロもすばらしく久々に色んな意味でギャップの心地良さを感じることが出来る秀曲である。4曲目「THE POWER & FURY」は最初からカッ飛ばしの定番ともいえるKEEPER METALで気分良く聴けて安心できる。ただギターソロはもうひとひねりほしかったかな。5曲目「WASTED TIME」は静かな出だしでバラードかと思いきやガツーンと来た後、1:39~の展開は耳が釘付けになるほどすばらしい。6曲目「BRAVERY IN THE FIELD」は、最初に好きになった曲。ネオクラシカル風な始まり方は、?だったが歌が始まった途端にHEAVENLYになり、これまた1:40~の展開と3:18~のギターソロ及びその後のコーラス&多彩な展開で撃沈。独特な「グローリアスッ!グローリアスッ!」って歌いまわしが耳に残る秀曲である。7曲目「LIBERTY」もなかなかのもので途中のネオクラシカル風なアレンジを除けばGAMMARAY的な疾走系の大作。8曲目「WHEN THE RAIN BEGINS TO FALL」はカバー曲だがアルバムにマッチしていて違和感無く聴ける。9曲目「THE PRINCE OF THE WORLD」はキャッチー&壮大なアレンジでアルバムのラストを飾る曲としては、とりあえず合格だろう。これも聴いていてとても気持ちいい曲である。余韻のように最後に響くBENの歌声が妙に心に染みる。。10曲目「THE JOKER」はボーナストラックだが、これは不要。11曲目は2曲目の「SPILL BLOOD ON FIRE」を日本語で歌っているが、こういうのはもうやめた方がいいと思うなぁ。気持ちは痛いほどわかるけどね・・・。
100点満点とは言えないが、とにかく存続不可能な状態から執念で再度立ち上げ、バンドとしては奇跡的に予定スパンで新作をリリースすることが出来、我々はそんなこととは露知らず新作を手にあーだこーだ論評できているこの現状と、それに十分応える作品まで作り上げた新生HEAVENLYそしてBENに最大の賛辞を贈りたい。感動した! 


1.THE DARK MEMORIES
2.SPILL BLOOD ON FIRE
3.VIRUS
4.THE POWER & FURY
5.WASTED TIME
6.BRAVERY IN THE FIELD
7.LIBERTY
8.WHEN THE RAIN BEGINS TO FALL
9.THE PRINCE OF THE WORLD
10.THE JOKER (BONUS)
11.SPILL BLOOD ON FIRE (JAPANESE VERSION BONUS)

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KEEPER OF THE SEVEN KEYS -THE LEGACY- (2005) 
HELLOWEEN
       


私が選ぶ2005年のベストアルバムはHELLOWEENKEEPER OF THE SEVEN KEYS -THE LEGACY-である。正直なところ、ここにHELLOWEENの新作を載せることになるとは自分自身全く予想していなかっただけにもの凄くうれしい反面ちょっと複雑な気分でもある。HELLOWEENが1987年に伝説的名盤であり後にジャーマンパワーメタルのバイブルとなったKEEPER OF THE SEVEN KEYS Part.1、1988年にPart.2をリリースしてから実に17年という歳月が流れた。今は当時のHELLOWEENサウンドの要であったカイ・ハンセンもHELLOWEENヴォイスとして一世を風靡したマイケル・キスクもいない。1994年、そんなHELLOWEENを一手に背負ったマイケル・ヴァイカースは幾度もメンバーチェンジを繰り返しながら、再度HELLOWEENサウンドを模索しつつなんとかバンドをシーンに留まらせてきた。思えばこの十数年は新メンバー個々の持つ価値観との戦争だった。しかしその戦いも2000年のローランド、ウリの脱退により終結を迎える。そして入れ替わるように彗星の如く救世主が登場する。サシャ・ゲルストナーである。ヴァイキーにとってはまさに探し求めていた宝物に辿り着いたようなまさにド真ん中ストライクともいうべきサウンドセンスの持ち主の新加入であった。そしてとうとう今年、満を持して封印を解く決断を下した。KEEPER OF THE SEVEN KEYS のリリースである。言い換えればバンドがこの封印を解くだけのクオリティを引き出すために17年もかかったということだろう。まあそれも十分に納得できる。というのも現在のHELLOWEENにとって、かつてのKEEPER OF THE SEVEN KEYSという作品が、同じバンドとはいえ今とは全く違う布陣と価値観のもとで作られたあまりにも偉大な金字塔だったからだ。本作の制作にあたりヴァイキーが最も強調したかったのはこれがPart.3ではないという点だろう。つまりこのタイトルをHELLOWEENの象徴的なものとしてとらえ、現ラインナップの価値観において最高峰のものを作り上げた時KEEPERの封印が解けると思っていたに違いない。でもそれは当然といえば当然。旧KEEPER以降も
17年間シーンに君臨し、試行錯誤の中で新作を作り続けた現HELLOWEENが築きあげてきたものは、かつてのHELLOWEENとは全く異なるものだし、それによりバンドは新しい財産を得た。前作RABBIT DON'T COME EASY」のサウンド構築で彼は集大成のための環境が全て整ったことを確信したと思う。しかも今回のKEEPERを-THE LEGACY-(新章)と銘打つことで旧HELLOWEENから新HELLOWEENへの真の脱皮を図ったといえるだろう。私がこんなに熱く語ってしまったその裏には、届けられた本作が予想を遥かに凌ぐ程のクオリティを持っていたことと、バンドの渾身の魂を感じることが出来たからに他ならない。本作を過去のKEEPER1,2と比較することはそれ自体、現HELLOWEENを否定することになる。17年間積み上げてきたものが本作でみごと実を結び、HELLOWEENを象徴する最高の作品に仕上がったといえるだろう。時間はかかったがカイもキスクもインゴもいない新HELLOWEENの独り立ちに心底感動している。もう迷うことはない。胸を張ってこの王道を貫いていってほしい。アルバムは2枚組。1曲目13分54秒の大作「THE KING FOR A 1000 YEARS」で幕を開ける。実に入念に練られたであろう曲展開が胸を打ち、長さを感じさせない。丁寧に歌い上げるアンディもいい。2曲目「THE INVISIBLE MAN」は起伏ある展開とギター&ピアノサウンドが気持ちいい。3曲目BORN ON JUDGEMENT DAY」はいかにもヴァイキーらしい心臓を鷲づかみされるギターソロにメロメロ。4曲目「PLESURE DRONE」はサシャの曲だが、MASTER OF THE RINGの頃を彷彿させる。5曲目Mrs GOD」は1stシングル。単品で聴くよりアルバムの流れで聴く方が数十倍いい。このテンポがアルバムの中では重要な役割を果たしている。6曲目「SILENT RAIN」はサシャとアンディの曲ではあるが、最も過去のHELLOWEENを彷彿させる曲でありギターソロは懐かしさすら感じる。DISC2の1曲目はこれまた11分5秒の大作「OCCASION AVENUE」で幕を開ける。アンディの曲で非常に複雑なリズムがアルバムに深みを与えつい聴き込んでしまう力がある。2曲目「LIGHT THE UNIVERSE」は本作唯一のバラードでいかにもアンディらしい曲をキャンディスナイトと共にしっとりと歌い上げる。3曲目DO YOU KNOW WHAT YOU ARE FIGHTING FOR」はミドルテンポでヴァイキーが「カメレオン」で書いたGIANTSを彷彿させる。4曲目「COME ALIVE」はアンディのカマラ~ィ、カマラ~ィが耳に焼きつく。5曲目の「THE SHADE IN THE SHADOW」はスティブンアンダーソン風のギターコード進行が新しくて気持ちがいい。6曲目「GET IT UP」を聴くとヴァイキーのアルバムに手ごたえを感じ充実しきった顔が浮かんでくる。ラスト「MY LIFE FOR ONE MORE DAY」 は重鎮マーカスの作品だが、これぞHELLOWEENといえる疾走メロディとツインギター炸裂で締めくくりとして文句無しの出来。とにかく本作はHELLOWEENにとって近年まれに見る傑作となったのは間違いない。起死回生のドでかい一発といえるだろう。

DISC 1
1.THE KING FOR A 1000 YEARS
2.THE INVISIBLE MAN
3.BORN ON JUDGMENT DAY
4.PLEASURE DRONE
5.Mrs.GOD
6.SILENT RAIN

DISC 2
1.OCCASION AVENUE
2.LIGHT THE UNIVERSE (feat.Candis Night)
3.DO YOU KNOW WHAT YOU ARE FIGHTING FOR
4.COME ALIVE
5.THE SHADE IN THE SHADOW
6.GET IT UP
7.MY LIFE FOR ONE MORE DAY
8.REVOLUTION (Bonus)

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DUST TO DUST (2004)                 HEAVENLY
         



個人的に堂々2004年のベストアルバム賞を進呈するフランスのバンドHEAVENLYの3rdアルバムである。そのサウンドは主に1985年から95年の10年間に強力な旋風を巻き起こしたいわゆるジャーマンパワーメタルの典型である。従ってHELLOWEEN+GAMMARAY+ANGRAにRHAPSODYを併せたサウンドというのがぴったりな表現といえる。このことを逆手にとって個性が無い単なるものまねバンドと、簡単に切り捨てる評論家もいた。しかし考えてみれば彼らは少年期のいちばん多感な時期にHELLOWEENのKEEPER OF THE SEVEN KEYSに遭遇しただろうしバンドに目覚めたのもその頃と考えればこのスタイルがベースとなったのも全く不思議なことではない。そして2004年、若干下火になりつつあったジャーマンパワーメタルにその時ファンは何を求めていたかといえば、それはGAMMARAYのヴォーカルがもう少し良かったら・・・。HELLOWEENが初期のサウンドに戻ってくれたら・・・。ANGRAがもっと疾走してくれたら・・・。RHAPSODYにもう少しバンド色が出たら・・・なのである。これで気付いたと思うが、驚くことに、このHEAVENLYの「DUST TO DUST」はまさに両腕広げてそれらの期待に全て応えてくれたといっても過言ではない夢のようなアルバムだったのである。これ以上何を望むというのか。つまり需要と供給がみごとパーフェクトなタイミングで合致した作品だったのだ。言い換えれば2003年でも2005年でもない。2004年であることが重要だった。だからこそこれだけの賞賛に値した作品になり得たといえる。確かにバンドとしての個性は重要だろう。しかしそれは聴き手が求めない限り確実に埋もれてしまう運命にある。そういった意味で2004年に私が欲して(求めて)いたのはこのサウンド、このスタイル、この楽曲、この構成であり、そこにターゲットを絞って大勝負を挑んだHEVENLYは賞賛に値する。改めてスタンディングオベーションを贈りたい。それは市場を見据えた最高のビジネスマンともいえるだろう。日本びいきでラストに日本語で歌ってくれるなど戦略は抜きにして本当にありがたいことではないか。判然とした個性は無くとも優れたテクニックと高いクオリティを生み出すことのできる力、そしてみごとな時代を見る目、それらを総合したうえで目指したこの音楽を信じる気持ちがあればそれは絶対に届くことをみごとに実証した作品といえる。まさに隙間産業から生まれた2004年の最高傑作といえよう!アルバムはCHAPTER 1~3の3部構成になっており、各部がみごと起承転結しているため極端に言えばアルバム3枚分の聴き応えがある。1曲目はプロローグ。そして2曲目「EVIL」ではイントロから飛び出すドカン!そして高速ドカドカドラムというあまりの定番さがかえって新鮮で気持ちがよく、思わず笑みがこぼれてしまった。これぞまさにGAMMARAY(笑)。とはいえすばらしい劇メロに早くも引き込まれる。3曲目「LUST FOR LIFE」はタイトルからしてGAMMARAYだが中身は違う。全体的にEDGUY風味を出しながら中盤に疾走パートを持ってくるなどかなり豪華な曲。4曲目「VICTORY」は壮大なバラードかと思いきや突然疾走し始めたりミドルテンポになったりと大忙しのGAMMARAY。5曲目「ILLUSION PART 1」は6曲目を思い切り盛り上げるためのプロローグ。そして6曲目「ILLUTION PART 2」がドカーン!と始まる。お約束とはいえこの演出がたまらない!この曲はHELLOWEEN的疾走曲で気持ちがいい。終わりの部分が「EAGLE FLY FREE」っぽいのもいい。7曲目これまた繋ぎの「THE RITUAL」に続いて8曲目「KEEPER OF THE EARTH」は曲名とは裏腹にSTRATOVARIUS風の疾走曲。9曲目9分の大作「MIRACLE」RHAPSODY風に様々な展開を見せる私自身特に好きな楽曲であり、ピアノが非常に美しい壮大な曲になった。そしてハイライトともいえる10曲目「FIGHT FOR DELIVERANCE」はもの凄い!パワー、疾走感、メロディ、ソロ全てにおいて最高峰の楽曲といえる。これを初めて聴いた時は本当に逝ってしまそうだった(笑)。11曲目「HANDS OF DARKNESS」は10曲目が凄すぎてよく聴いていないインストゥルメンタル曲。12曲目「KINGDOM COME」はRHAPSODY+GAMMARAY風大作で本作をみごとにしめくくった。そしてエンドロール。ラストのバラード「DUST TO DUST」をヴォーカルのベンがみごとに歌い上げる。
撃沈・・・。

CHAPTER 1
1.ASHES TO ASHES
2.EVIL
3.LUST FOR LIFE
4.VICTORY

CHAPTER 2
5.ILLUSION PART 1
6.ILLUSION PART 2
7.THE RITUAL
8.KEEPERS OF THE EARTH
9.MIRACLE

CHAPTER 3
10.FIGHT FOR DELIVERANCE
11.HANDS OF DARKNESS
12.KINGDOM COME
13....DUST TO DUST
14....DUST TO DUST (JAPANESE Ver)・・・Bonus

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VOW WOW Ⅲ (1986)                     VOW WOW
         



VOW WOWの前身は76年~83年まで天才ギタリスト&ヴォーカルでありリーダーの山本恭司が組んでいたBOW WOWである。BOW WOWはストレートなハードロック+テクニカル&鳴きのギターでギター小僧達に絶賛されていたバンドだった。しかし当時は日本のハードロックバンドには殆ど陽が当たることは無く、また海外のメジャーアーティストを模倣したようなものが大勢を占めていたため、お世辞にも魅力的とは言い難い存在だった。そんな中、この状況を打開すべく、当時日本ではトップを走っていた2つのバンドが業界に革命を起こす。ひとつはLOUDNESSそしてもうひとつがこのBOW WOWだった。LOUDNESSは超速テクニカルギタリストの高崎晃を中心に結成されたゴリゴリのヘヴィメタルバンドでエッジの効いた攻撃的サウンドが魅力だった。彼らはそのサウンドスタイルからターゲットを米国に絞り早々に旅立って行った。一方BOW WOWは持ち味のメロディアスなハードロックサウンドを最大限に生かすために専属ヴォーカリストとして人見元基とキーボードに厚見玲衣を加え、ここにVOW WOWが誕生した。そして84年、「BEAT OF METAL MOTION」、85年に「CYCLONE」をリリース。しかし楽曲自体のポテンシャルは感じるもののサウンド構築や楽曲のアレンジメントが正直ダメダメで、メンバー増強の成果が十分出ているものとはいえなかった。たぶんそれを恭司も少なからず感じとっていたのだろう。作品作りに本腰を入れはじめ、次作で真の大勝負に出る。なんとAC/DC、IRON MAIDEN、CHEAP TRICKのアルバムプロデューサとして有名なトニープラットを呼び寄せ、究極のハードロック作品を作り上げてヨーロッパ進出を果たしてやろうという野望を持った。こうして誕生した作品が、後々語り継がれるほどの究極の作品となる本作VOW WOW Ⅲなのである。出来上がったサウンドは強烈だった。まず楽曲のクオリティが前作までとは比較にならないほど上がったといえる。具体的には、前作までの俗に言う「わかりやすさ」は残しつつもアンサンブルを激変させ楽曲の押しと引きを明確にさせたことで曲のメリハリが際立ち、説得力が格段に向上した。また、楽曲全体に厚見玲衣による印象的なキーボードを多用したことで音に厚味が増し、ドラマティックな展開を得た。山本恭司のバカテクギターも冴えまくり、忘れてはならない人見元基の日本人離れしたパワフルかつハイトーンヴォーカルが本作を心臓に突き刺す決定打となった。人見のヴォーカルは全盛期のデヴィッドカバーデールを彷彿させるほどすばらしく、こんなに凄いヴォイスを持っていること自体同じ日本人として誇らしくすら感じる。
1曲目「GO INSANE」から背筋がゾクゾクする。まさに本作のプロローグ的楽曲で一気にこの世界へ引きずり込まれる。そして2曲目のハードチューン「SHOT IN THE DARK」のイントロを聴いただけでこのアルバムへの確信を得ると共に昇天!キャッチーさとパワーに撃沈される。3曲目「RUNNING WILD」ではこれまでの日本のバンドには無かった独特のフレーズを人見元基の卓越したヴォーカルで表現。4曲目「SHOCK WAVE」はまさに最高峰という言葉がぴったりな珠玉のバラードで特に後半のサビにおける元基の強力なハイトーンヴォイスは感涙もん。5曲目「DONCHA WANNA CUM」は恭司お得意のロックンロールでギターソロが冴え渡る。また、彩りを添えるキーボードの味付けがこれまたほどよい。聴いた人にはわかると思うが、この5曲目から6曲目「NIGHTLESS CITY」への流れは絶妙。NIGHTLESS CITYは非常にキャッチーでキーボードの恩恵を特に感じ取ることができる作品である。7曲目「SIGNS OF THE TIMES」はWHITE SNAKEの「DON'T BREAK MY HEART AGAIN」を彷彿させるノリで曲のメリハリがはっきりしているため非常に心地よい。8曲目「STAY CLOSE TONIGHT」は、最初の印象はさほどでもなかったが聴き込むほどにサビメロのすばらしさに魅せられ、結局個人的に一番好きな楽曲となった。9曲目「YOU GOT IT MADE」はお祭り騒ぎのようなハードチューンで非常にパワフル。これぞVOW WOWの真骨頂といえる。そしてラストのバラード「PAINS OF LOVE」衝撃的且つ強烈だった本作の余韻に浸ると共に、ギターソロのすばらしさが頭から離れなくなる。いや~凄い!捨て曲など皆無!パワー、サウンド、楽曲、アレンジ全てにおいてまさに頂点であり奇跡の最高傑作といえるだろう。VOW WOWは本作を引っさげLOUDNESSに対抗するように聖地イギリスへと堂々旅立って行った。当時はさぞ自信に満ち溢れていたことだろう。


1.GO INSANE
2.SHOT IN THE DARK
3.RUNNING WILD
4.SHOCK WAVE
5.DNCHA WANNA CUM (HANGAR 15)
6.NIGHTLESS CITY
7.SIGNS OF THE TIMES
8.STAY CLOSE TONIGHT
9.YOU GOT IT MADE
10.PAINS OF LOVE

希少です。ご購入はこちらへ




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