電子負荷とは
電子機器の出力に負荷として接続し、電子機器の出力性能を検査・評価するための装置です。
市販品には
- 定電流モード
- 定電圧モード
- 定抵抗モード
- 定電力モード
など、いくつかの動作モードを備えたものが販売されており、検査・評価する内容によって
動作モードを使い分けるようです。
ここで紹介させていただく電子負荷は、定電流モードで動作させる電子負荷で、次のようなことに使用できます。
- ・直流安定化電源の評価
- 自作した直流電源を接続して、最大電流を流したときに出力にリップルが
出ていないかとか、発信していないかとかを確認することができます。
- ・電池の放電特性の確認
- 普段使用している充電電池やアルカリ電池などを接続して、放電電流−出力電圧特性
を観測したり、定電流放電で何時間もつかなどを確認できます。
- ・太陽電池の出力電力の確認
- 太陽電池に接続して出力電流に対する電圧の特性を観測することができます。
- ・直流モータの発電電力の観測
- 直流モータを接続して回転させ、出力電流に対する出力電圧を観測することができます。
写真
製作した電子負荷の写真です。
回路
製作した電子負荷の回路図を以下に示します。
定電流の電子負荷は、いわゆる定電流回路です。
電流の流れを追ってみます。J1,J2が入力です。J1から流入した電流がCN5,CN4をとおりQ1のドレインに入ります。
Q1のソースから出てきた電流はCN4,R4を通った後、CN5を通ってJ2に抜けていきます。
電流がR4を通ると電圧が発生します。オペアンプはこのR4の電圧とVR1からの基準電圧を常に比較し、
・R4の電圧の方が高ければ出力電圧を下げる。
・R4の電圧の方が低ければ出力電圧を上げる。
という動きをします。
オペアンプの出力はQ1のゲートに接続されているので、Q1を流れる電流の量がオペアンプの出力によって調節されます。
その結果、オペアンプはR4の電圧と基準電圧が等しくなるように働いて、流れる電流を一定にします。
電源部
1V以下の入力電圧でも動作できるように電源回路を内蔵しました。
オペアンプの出力がFETを十分に動作させるだけの電源電圧が必要で、ここでは9Vとしました。
消費電流は10mA程度なので3端子レギュレータは150mAタイプで十分です。
AC100VからDC9Vを作っていますが、DC-DCコンバータタイプのACアダプタでも良いと思います。
電流−電圧変換抵抗R4
Q1を通った電流はR4で電圧を発生させます。0.1Ω3Wのセメント抵抗を使用しました。
この抵抗に流すことのできる電流は
P=I2R
から、I≒5.48(A)となりますので、定電流負荷は5A以下で使用するようにしなければなりません。
基準電圧回路
U1の出力を抵抗R2とVR1で分圧して作っています。
R4に5Aの電流が流れると0.5Vの電圧が発生します。VR1の出力は、この0.5Vを超えてないように設計しなければなりません。
電流の微調整がしやすいように、VR1には10kΩの多回転型の可変抵抗を採用しました
。VR1の端子1-3に0.5VがかかるようにR2を計算すると
VR1/R2=0.5V/2.0V=0.25
R2=10kΩ/0.25=40kΩ ・・・・24系列で近い39kΩ
オペアンプ
入出力ともにGNDレベルから動作できる単電源オペアンプLM358を採用しました。
負荷トランジスタQ1
Q1にはパワーMOS-FETを採用しました。手持ちのものを使用したので非常にマイナーな2SK707(生産中止品)
を使用していますが、10〜20AクラスのパワーMOS-FETであれば代用できます。
Q1はこの装置の中心的役割を果たす部品で、このトランジスタが可変抵抗のように働いて流す電流を一定に保ちます。
Q1にかかる電圧と流れる電流は熱となって消費されますので、ヒートシンクに取り付けてしっかりと放熱する必要があります。
ヒートシンク
これも手持ちのものから適当に選びました。いつどこで買ったのか、どこのメーカーなのかも分からないのですが
こういう場合にはメーカーのカタログから同じ形状のものを見つけてそのデータを流用させてもらいます。
今回使用したものは、長さ(138mm)×幅(70mm)×高さ(30mm)です。これと同じ形状のものを水谷電機工業蒲lの
製品で見つけました。万能放熱器EG138-L70が各寸法、フィンの数まで同じです。EG138-L70熱抵抗は1.5℃/Wなので、
放熱の計算にはこの値をθha(ヒートシンク−外気間熱抵抗)として使います。
2SK707のジャンクションからケースまでの熱抵抗θjcを求めます。データシートから
全損失Pt=120W(Tc=25℃)
ジャンクション最大温度Tj=150℃
より、
θjc=(150℃-25℃)/120W≒1.04℃/W
FETのヒートシンクへの取り付けには、マイカとシリコングリス使いました。
このときのケース−ヒートシンク間の熱抵抗θchはデータブックより
θch=0.8℃/W
とします。
全て合計したθja(ジャンクション−外気間熱抵抗)は
θja=θjc+θch+θha=1.04+0.8+1.5=3.34℃/W
となります。
放熱についての考え方を以下のページにまとめました。ご興味があればご覧ください。
熱の移動と熱抵抗、放熱のまとめ
製作した電子負荷の使用可能範囲
電力
室温30℃、ジャンクション温度120度で使える電力を計算してみると。
P(W)=[(120℃−30℃)]/[3.34℃/W]≒26.9W
となります。
商品として売りに出すような場合では、使用温度範囲が規定されたりするのでそのような場合には
50℃とか60℃とかで計算することになります。
電圧
理論上はFETの最大定格まで入力して大丈夫なのですが、今回作ったものはユニバーサル基板で、
配線も抵抗のリード線の切れ端などを使っています。高電圧に対して何も考慮されていないので
24Vを上限として使用したほうがよさそうです。
電流
流せる電流は電圧と許容される電力によって変わってきます。
目安として計算すると、
24Vのとき:26.9W/24V≒1.12A
12Vのとき:26.9W/12V≒2.24A
9Vのとき:26.9W/9V≒2.99A
5Vのとき:26.9W/5V≒5.38A
のようになります。ただし、R4に流せる電流を5Aまでになるように設計してあるので、電圧が低くても
5A以上は流せません。
電圧と同様、私が作ったユニバーサルでは高電流に対して考慮して作っていないので、実用的には
1〜2Aをめどに使用することになります。
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