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隗 作品抄
進み来る佞武多太鼓の横一列 飯島千枝子
根の国にちちはは枝にけらつつき 篠原悠子
道端に忘れおかれし吾亦紅 鴫谷良雄
海と空溶けて色無く冬はじめ 永島正勝
川の面を躍らせ越の時雨ぐせ 須賀智子
聞かぬふりして聴いてをり竃猫 中村 格
黒猫のよぎり山茶花散りにけり 榎 和歌
三毛猫の初の御目文字暮の秋 田辺キミ
残菊を避けてかけたる梯子かな 山口文美
あんこうのぐたりと箱におさめられ 石附法子
もの云わぬ老女の描く秋の雨 永谷弘子
時雨るるや老舗の本屋手帳買ふ 村井幸子
冬至南瓜夏の南半球より 小林正人
蟷螂の標本めきて贄となる 森田京子
朴落葉風にも日にも染まらずに 上田公子
縁遠き人には見えず冬薔薇 目黒和夫
路地裏の老いの商ふ新豆腐 ア啓子
秋霖や夢追ひし日の母校訪ふ 柾谷榮吾
京の嶺の会津の墓所や露寒し 木林万里
子に返る林に落葉蹴り行きて 大畠薫
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