『マインドコントロールからの解放』

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脱会者が推薦する書籍(6)


645 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 03:57
 カルト信者の特徴は、教団の教えは絶対に正しく、それに疑いを持つことは間違いであり、悪だと考えることである。教義に疑問を抱いても、それは自分の不完全さを証明するものでしかなく、不完全さを補うには、いっそう教義に忠実であらねばならないという逆の機制が心にはたらく。何かの事情で教義が変わってもこの機制は変わらない。教団の教えは常に正しく完全であり、不完全で間違っているのはいつも自分の考え方や感じ方のほうなのだと見なすのである。教義と自分のこの関係は、理想と現実をくらべ、現実は″間違い″であるとするある種のユートピア思想と似ている。

 

646 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 03:59
カルト信者の心に形成されるこのような世界を、「教義的ユートピア」と呼ぶ。カルトのマインドコントロールの中心にあり、人格まで変えてしまうほどの力を持っているのは、心に植え込まれた教義的ユートピアである。それだけ私たちは、ユートピア ― 現在を否定するような理想に弱いということだろう。

 

647 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 04:01
 教義的ユートピアは教義と信者とのあいだだけでなく、教祖と信者、教団と外部社会などさまざまな関係に出現する。たとえば、脱税で逮捕された文鮮明教祖に対して多少の疑念を抱いた統一教会の信者が、「疑った自分は罪人であり、罪を償うためには、さらに教祖に献身しなければならない」と自分を納得させる。輸血が必要であるという現実に直面したエホバの証人の信者が、「人間は死んでも千年後に今の肉体に復活する“輸血した者は復活することができない」と自分に言い聞かせる。教理を″現実″とし、現実のほうを″間違い″″架空″とする世界。坂本弁護士一家の殺害に先んじて麻原教祖が説いた「悪行を積む人を殺すのは立派なポアであり、殺人ではない」とする教えのほうが、一般の社会通念よりも”真実″として受け入れられる世界である。

 

648 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 04:03
 素直で優しく、頭のいい若者たちが、なぜ反社会的行動に走るのか。教義的ユートピアにのみリアリティーを感じる心を抜きにしては、この疑問は解けない。
 カルト教団のマインドコントロールの目的は、教義的ユートピアのみにリアリティーを置く人格をつくりあげることだと言っても言い過ぎではない。このような人格を、仮に私たちは「カルトの自分」と呼んでいる。それに対して、もともとの人格、つまり教義的ユートピアを形成する前の人格 「本来の自分」と呼ぶことにしたい。

 

649 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 04:06
 すでに述べたようにマインドコントロールは、教義的ユートピアのみにリアリティを感じる「カルトの自分」をつくりあげることを目的としている。さまざまな技法も、そのための手段である。では、どのようなプロセスをたどって、「カルトの自分」が形成されていくのだろうか。
 もちろん、一気に達成されるわけではない。ハッサンは、その著『マインドコントロールの恐怖』の中で、マインドコントロールは「解凍」「変革」「再凍結」の三段階を経て達成されると述べている。彼の定義によれば、解凍は人格を崩壊させる過程、変革は教え込みの過程、再凍結は新しい人格をつくりあげ強化する過程である。私たちの経験でも、このプロセスは適切と思われる。ただし、私たちは解凍=「本来の自分」の否定、変革=教え込みによる教義的ユートピアの構築、再凍結=カルトマインドの確立、と解釈している。カルト信者は主体としての自分を否定し、教義的ユートピアという他人の価値観を植え込まれ、見ず知らずの「カルトの自分」にやがて支配されていく。

 

650 名前: 『マインドコントロールからの解放』(オウム真理教信徒救済ネットワーク編著) 投稿日: 2000/03/08(水) 04:14
 「再凍結」は「変革」によって形成された「カルトの自分」に、「本来の自分」をしっかり押さえ込ませる過程、言い換えれば、「カルトの自分」と「本来の自分」を上位下位に固めてしまう過程であ 驕Bこのような構造に固定された心を「カルトマインド」と私たちは呼んでいる。

 カルト信者の中に存在する二人の自分。「カルトの自分」にがっちり押さえられているが、その下でまだ呼吸しつづけている「本来の自分」に、私たちは脱マインドコントロールの可能性と人の心の逞しさを見る。

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