熊公の伯父(お袋様のすぐ上の兄)は昨年(2001年)9月13日に帰天しました。生前(今から8年ほど前)、我が家で、キノコを肴にお酒を飲んだときに、「俺が死んだら、秋田駒ヶ岳の雫石の町が見える場所と、阿弥陀池が見える場所に埋めてくれ!!」と、頼まれていました。ですから、昨年、納骨の時に、頭骨の一部分をもらい受け、埋骨する時を待っていました。
秋田駒ヶ岳 横岳からの展望 男女岳中腹からの阿弥陀池と男岳
岩手山・裏岩手連峰・八幡平・乳頭山(烏帽子岳)を望む
この伯父は、雫石周辺の山を中学生時代(戦前)から愛し、特にこの秋田駒ヶ岳を愛した方でした。土曜になると学校の帰りにそのまま山に行き、国見温泉に泊まって、山を歩いたと聞いていました。母方の兄姉の中で東京に住まっていたのはこの伯父だけ。その分行き来が多くて、沢山の思い出をくれた伯父です。ですから、この伯父の遺言は絶対に叶えてあげたいと思いました。
やっとそれを実行できる時が来て、10月14日(月)に、秋田駒ヶ岳に行って来ました。熊公の兄と、いつも鍛冶作業でお世話になっている須賀川の伯父の3人で行くことが出来ました。この3人で熊公の学生時代、山に行ったり、スキーをしたりしましたから、30年ぶりの三人旅となりました。
前日の13日は、伯父のお骨と一緒に祖父母の眠る墓に墓参りをして来ました。亡くなる前に病院で、「雫石に行きたい!! 連れて行ってくれ!!」と、何度頼まれたことでしょうか・・・・・。今回、岩手県に入った時、雫石の町には行った時、「伯父さん、此処まで来たよ!!」と、呼びかけていました。一つ一つ伯父の願いを叶えていける喜びを感じました。
宿泊した岩手山麓の宿では、夏の大三角形やカシオペア、白く帯に広がる天の川にアンドロメダ大星雲、そして東の空にプレアデスを眺めることが出来ました。満天の星に晴れ晴れとした気持ちになれる夜でした。「伯父さん、明日は約束を果たせるよ!!」と、星空に向かって呼びかけました。
今回の登山は時間短縮を考え、田沢湖側(秋田県側)から八合目小屋まで車(バス)で入るコースです。
登山して、まずは雫石の見える場所へ。秋田駒ヶ岳には、大焼砂・横長根と言われる場所があります。この最高地点が横岳(1583.0m)です。この尾根は雫石側(岩手−秋田県境線 日本の分水嶺)に面していて、雫石を足下に眺められる場所です。横岳からの展望は抜群で、雫石の盆地を一望でき、岩手山、裏岩手連峰、八幡平、乳頭山(烏帽子岳)など、伯父の愛した山々が全て眺められます。今回も晴天の下、その通りの展望を得ることが出来ました。
この地点は伯父も必ず通過した場所です。国見温泉から秋田駒ヶ岳核心部に入るためにはここを通るか、手前から小岳の東側を回り込み、男岳−馬の背の鞍部に出るコースの2つです。自分の生まれた雫石をこよなく愛した伯父は、ここを通過することを大切にしたものと思います。三角点の東側、岩手県側の乳頭山(烏帽子岳)への縦走路の分岐点に場所を定めました。ここに骨の3分の2を埋骨し、ケルンを積みました。このケルンの上には石楠花の木があり、来年の花芽をつけていました。来夏は綺麗な花に飾られるはずです。
続いて、男女岳(1637.4m)へ行きました。伯父はここの中腹のハイマツ帯に投げ込んでくれればいい・・・、と言っていましたが、やはり山頂の方が良いのではと、頂上に登りました。山頂は足下に阿弥陀池の見える場所、そして秋田駒ヶ岳の男岳・女岳・馬の背・横岳を一望に出来ます。ここに残りの骨を埋骨して、ケルンを積みました。
横岳のケルン 男女岳のケルン
GPSを使って、それぞれのケルンの東経・北緯を記録してきました。
横岳ケルン・・・・・北緯39度45分12秒 東経140度48分31秒
男女岳ケルン・・・北緯39度45分29秒 東経140度48分29秒
ケルンは今までにも何度か積んだことがありますが、これほど思いを込めて積んだものはありません。いつまでもこの形を保つとは思いませんが、出来るだけ長くこのままであってほしいです。そしてまた、山で見るケルンの中には僕らのように思いのこもった物があるのだな・・・・!!と、思いました。伯父さんもこれで大好きな秋田駒ヶ岳の一部になれるわけです。
伯父もきっと喜んでいることと思います。そして、今回の山行きほど充実感を味わう事の出来た山行きはありません。思い返せば返すほど素敵な登山だったと感じます。伯父の喜びが伝わってくるような登山でした。
(2002.10.15.)
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