熊公の独り言 V




◆ 舘岩紀行 ◆
 福島県 南会津郡 舘岩村までの地図

東北道 西那須野塩原IC からのコース

 熊公の兄はさいたま市で教員をしています。今年3月までは教頭先生として学校勤務でしたが、4月から『さいたま市立舘岩少年自然の家』の主幹(番頭さん・副所長)として、山の勤務になりました。「良い処だから来い来い!!」と、言われ、熊公もこういうところ好きですから、8月19日(金)に出かけました。距離は自宅から232kmです。
 東北道 「西那須野塩原IC」で降り、峠を3つ越えて行くことになります。高速を降りてから約79kmです。塩原の温泉街を通り抜け、上塩原温泉を抜けると上り坂が急になり、しばらく登ると『尾頭トンネル』です。これで一つ目の山越えです。下りきると、右折して会津鬼怒川鉄道と並行して走るようになり、坂道が急になって少しカーブが増えてきたかな?と思っていると二つ目のトンネル『山王トンネル』に入りました。ここが日本の分水嶺、県境線で福島県に入りました。雪深いのでしょうね、スノーシェッドなどが出てきました。下りきると会津鬼怒川鉄道に再び出会い、T字路を左折します。このころになると前後にいた車も別々の方向へ行ってしまい、一台きりで走ることに、山はどんどん深くなっていきます。道はどんどん高度を上げ、金竜・銀竜の二つの橋を渡ると、今まで以上に立派なスノーシェッドを付けた『中山トンネル』に入りました。三つ目の山越えです。トンネルを出た側はよほど雪深いのでしょうね、これでもかという感じにスノーシェッドが続きました。下りも今まで以上にグングン下ります。
 右に高杖スキー場への道を見て、更にグングン下っていくとちょっと開けて村役場が出てきました。村内唯一の信号機を抜け、兄がいつも言っていた、「一番近いコンビニまで11km」というそのコンビニを左に見て、しばらく走ると、いよいよ左折、西根川にそって登り始めました。山また山の連続でした。少年自然の家の入り口の橋の所に兄が迎えに出ていてくれました。
 兄は出張で月に二度くらいさいたま市の本庁舎に来ますが、この距離を往復するのか・・・・、と思うと頭が下がっちゃいました。
 まずは兄の官舎へ、なかなか素敵な所でしたが、冬の雪深さが分かります。二重窓は当然ですが、雪囲いが夏なのに取り外されていませんでした。雪の時季は雨戸を入れっぱなしにして、穴蔵生活のようになると聞きました。
 お土産と、特製の『立ち鎌』をプレゼントしました。早速宿舎周りのシダなんかを試しに刈っていました。喜んでくれて嬉しいです。 南側の庭と言えばいいのか、ちょっとした空間があるのですが、ここにはカモシカが来るとか、大自然の中が兄の職場です。熊もいて、熊の肉も食べられるとか、確かに夕食には鹿の刺身も食べました・・・・。秋が深まったとき、兄が熊に遭遇しないことを祈ります。この辺りは雪深いため猪はいないそうです。


さいたま市立舘岩少年自然の家

 兄の宿舎でしばらく休み、兄のオフィスに行きました。所長さんにお会いして挨拶して、その後、兄に館内を全部案内して貰いました。宿泊施設は充実していて、講堂、天体観測施設、野外活動の施設もいたれりつくせり、完璧です。何より大浴場は温泉の掛け流しです。野外炊飯をする広場の所に流れている川にはイワナの魚影を見ました。この川でイワナのつかみ取りをしたりするとか、その生き残りが住み着いているようです。それにしても、さいたま市の小中学生は恵まれています。

    
       兄のオフィス                        気分は副所長・・・・

 館内見学の後、食事をしに出かけました。美味い所という曲屋というところに行き、『裁ち蕎麦』を食べました。食事後、村内を案内して貰いました。さいたま市の1.2倍の広さを持つ村です。近々田島町等と合併するということですが、山だらけの村です。
 村役場近くに唯一の信号機があります。丁度赤になりました。「オオ〜〜、この信号機が赤になったのは久しぶりに見た!!」 と、兄は喜んでいました。

 
       昼食は名物 『裁ち蕎麦』 美味かったです     物産館のある商工会議所 準村民の兄はここに会議に来るそうです

 兄は準村民扱い、舘岩の人たちと会議をすることも多いし、村立小学校や中学校の行事の時には来賓として招かれたりもするそうです。会う人会う人に挨拶して、村の人たちも、兄を大切にしていてくれるのが分かりました。会う度に「東京から実の弟が遊びに来まして・・・・」、そこで熊公も「いつも兄がお世話になっています・・・」、村の人は「いやいや、似てる人だと思ったが、弟さんか・・・、いつもこちらこそお世話になっています・・・」この会話、何度したでしょうか。

    
   村内唯一の信号機 赤信号は珍しい               檜枝岐に抜ける林道の崩落現場

 湯ノ花温泉の方にもドライブしました。ここに診療所があって、病気の子供が出たらここまで搬送するんだそうですが、20kmはありますか・・・。ここで駄目な場合は、田島町まで、片道50kmの搬送になるそうです。救急車も待っていたら1時間くらい掛かってしまうので、車に乗せてある程度下り、そこで落ち合って搬送して貰うことにもなるそうです。山深いところの大変さが分かりました。でも、本当に山里の風景を残した景色を見ることが出来ました。お墓の中に畑があるという感じに、古い墓石の周りに畑が作られていました。墓石が沢山あるのはその地区に昔から人が生活していた証、そして、畑と墓所が一緒なのは平らな土地が少ない証ですね。
 湯ノ花温泉をドライブしていて夕立に遭いました。ものすごい雨になりワイパーも効かなくなっちゃう感じです。そのさなか、この林道も見せたい・・・と、唐沢峠を越える林道を使い、西根川に出るコースに入りました。ダート道に入ると、道を川のように雨水が流れてきてちょっと怖くなる感じでした。やっとのこと抜け出して、今度は檜枝岐に抜ける林道を見に行くことに、この道の途中に、少年自然の家の飛び地というか、林業体験をする林がありました。本当に全ての物が揃っている場所です。
 トンネルを抜けしばらく行くと崩落現場でした。昨年の集中豪雨で崩落したところです。作業員の方達雨がひどかったから様子を見るために休憩してる所でした。凄い崩落だな!!と、見ている矢先、先ほどの夕立で地盤が緩んだのでしょうか岩がガラガラと崩れてくるのを目撃しました。作業員の人たちも、様子見に降りて良かった!!と、ホッとされていました。
 兄の勤務する舘岩少年自然の家は舘岩村の木賊地区に有ります。この地区の人とは本当に親しげに話をしていました。物産屋さんでは、兄の繋がりで家へのお土産を買うときには2割引ぐらいにして貰いました。村の人たちと本当に仲良くしているのが分かりました。
 木賊地区には星さん・芳賀さん・橘さんの姓が多いそうで、下の名前で呼び合う風習があるそうで、兄もそれに従っているためでしょうか、何だかものすごく近しい感じを受けました。

 一度兄の官舎へ戻り、荷物をまとめて今日の宿に出かけました。僕としては兄の官舎に泊まっても良かったのですが、イワナのフルコースを食べさせたいからと、宿を取ってくれていました。福本屋という民宿です。自然の家でイワナを取り寄せるときはこのお店のイワナを使うそうで、兄も自分の酒の肴に塩焼きを頼んで置いたり、刺身にして貰ったりしているそうです。ご主人とも若女将とも、お孫さんとも顔見知り・・・。とにかくアットホームな感じです。

 
福本屋さんの食堂 大正12年に建てられた物です  天井には火ぶせの神様が・・・・・子孫繁栄も願ってるのでしょうね

 今月中に茅葺きの上にトタンを張ってしまうそうです。ちょっと残念ですが、茅葺き職人さんが今はいるのだそうですが、次の葺き替えにはおそらくいなくなっているだろうし、ご主人が元気なうちに何とかしておきたいということで決断されたそうです。茅の上にトタンを葺き、空間を開けておくと、何十年も持つということです。
 宿舎と食堂は20m位離れています。宿舎にあるお風呂は勿論温泉の掛け流しです。まずはゆっくりと汗を流して、夕食を待ちました。
 食堂には4つの囲炉裏が切ってあります。4組しか泊めないということですね・・・。有名人の方々が沢山来ているところで、山田邦子さん・江崎玲於奈さん・佐藤栄作さん・秋元久美子さん・立松和平さん・・・・、とにかく沢山の方々の色紙がありました。

 
イワナのフルコース  塩焼き・山椒味噌焼き・唐揚げ・刺身・叩き・親子あえ
お豆腐・茄子とチタケの炒め物・甘草の酢の物・お浸し・中落ちの潮汁・・・
キュウリにトマト・トウモロコシも出してくださいました
 鹿刺しも食べました

 イワナづくし、大満足です。飲兵衛兄弟です勿論イワナ酒へ・・・。

 
イワナ酒を準備するご主人                     イワナ酒用の酒器  


イワナ酒は美味い!!

 ご主人が準備してくださいました。そして、兄貴の顔でお酒随分サービスして貰っちゃいました。こんなに美味いイワナ酒は飲んだことがありませんでした。素焼きにして囲炉裏にかざしカラカラ状態にしたものを使わなければこの味は出せないとか、そして頭の方がよりコクが出るそうです。1年半物で1升飲めるということです。確かです、飲んじゃいました。熱々の燗にしますから、アルコールも随分飛んでいるのでしょう・・・・。
 鹿肉の刺身も食べました、この辺りの鹿は厳しい環境のため、冬場に木の皮しか食べられないと言うことで、草を食べられない分臭みのない肉になっていると聞きました。確かに美味い肉でした。
 高山植物の紹介のページで『花チダケ刺し』の紹介にチダケを見たことがないと書きましたが、今回初めてチダケを見て食べました。ここら辺ではよく食べるものらしく、兄も料理したことがあるそうです。牛乳のような液体が出てくるキノコらしいです。食感はややゴソゴソした感じ、茄子と合うそうで、美味かったです。
 最後にご主人、特別に3年物のイワナの頭を干した物を持ってきてくれて、それでトドメのイワナ酒を作ってくださいました。この味は最高の物でした。アア〜〜〜、もう一度飲みたいな・・・・。

 夕食後、自然の家の大浴場に行くことにしました。真っ暗な館内を懐中電灯一つで一番奥まで行くのは肝試し状態です。広々したお風呂に入ったのですが、兄は今日はぬるすぎるぞ? 夕立で停電になって、ポンプが動いていないみたいだ・・・というのです。確かにお湯が出てくる口からはチョロチョロとしか出ていませんでした。自然の家のお風呂が残念だったということで、木賊の名物岩風呂に入りに行くことにしました。混浴の温泉です。ちょっと雨が降っていたためでしょうか、入浴している人たちは一人も居らず、兄弟二人で独占して入りました。
 この岩風呂、江戸時代に掘って作った物と言うことです。村(木賊地区)の人たちの大切な集いの場所に成っていたようです。現在はこの岩風呂の上に、地区の人たち専用の共同浴場がありました。

 
木賊岩風呂 江戸時代に岩を刳り抜いて作ったということ 熱い方とぬるい方二つの浴槽があります
こちら側は熱い方 柱の向こう側がぬるい方です


2人で記念撮影

 西根川のすぐ脇に作られた岩風呂、熱い方の湯船の底からはお湯が沸き出しているのが分かりました。ぬるい方は熱い湯船から流れていった物で化学変化が起きているのか少し白っぽくなっていました。
 温泉の梯子をして宿に戻り、またまたビールを飲み、しばらく語らって寝る前にまた温泉に浸かり、床に入りました。

 
舘岩の朝 清々しい空気に覆われていました          朝食、イワナの甘露煮ご飯はキノコご飯です

 朝、目覚めたらまたまた温泉に浸かり、清々しい空気をいっぱい味わいました。朝食もさすがにイワナの宿です、甘露煮が付いていました。10時ころまでゆっくりして、その後は頼んで置いたお豆腐などを取りに行き、兄の官舎へ戻りました。11時、福本屋さんにイワナの塩焼きを頼んでおきましたのでそれを受け取りに行き、兄とここで別れました。楽しい1泊でした。1升酒飲んでもまったく爽やかな朝、イワナ酒はいくらでも飲めちゃうお酒です。
 見えなくなるまで兄が手を振っていてくれました。嬉しい気持ちでいっぱいになりました。ちょっと別れるのが辛い感じでした。兄には元気に事故無く舘岩勤務を終えて戻ってきてもらいたいと思います。兄が村の人に大切にされていることを感じることが出来て良かったな!!

 
  木賊地区の蕎麦畑                     もうすぐ日本の分水嶺 羽鳥湖

 今度は須賀川に向かって行きます。まずは田島町へ出ます。西根川が舘岩川に合流し、更にその先で伊南(いな)川に合流します。今回は川をグングン下っていく感じです。伊南川は只見川に合流します。トマトで有名な南郷村の村役場の所で右折し、伊南川と別れ、山越えに掛かります。駒止(こまど)トンネルを抜けてグングン下っていき、大きな町(これまでの集落から比べて)の中に入って行くとここが田島の町でした。約50km、自然の家で少しひどい病人が出た場合はここまで搬送するということです。大変だな・・・・。
 田島から阿賀川にそって下っていきます。阿賀川は只見川と合流して阿賀野川になり、日本海に流れていきます。右手に那須連山の西斜面を見ながら走ります。『塔のへつり』の先、約5km大内宿への道を左に分けて少し下った所のT字路を右に入り、今度はまたまた山越えです。
 二股温泉への道を右に見送り、岩瀬湯本温泉を通り、羽鳥湖の堰堤を見て一登りすると、鳳坂峠、ここが日本の分水嶺です。ここからは二度走っている道、急坂をグングンと下り、勾配が緩くなるとどんどん山から離れていく感じになります。新幹線の高架の下をくぐり、東北道の下をくくれば須賀川の伯父の家はすぐそば、予定していた時刻よりも随分早く到着しました。舘岩から2時間半程で着きました。距離は約120kmです。

 今日は須賀川の花火大会、毎年見に来ています。須賀川の花火大会は毎年面白いイベントがあります。今年は7時開会ですが、その前に6時から『昼花火』という物の紹介がありました。明るい中でも見ることが出来る花火で、普通の花火のような華やかさはありませんでしたが、それなりに面白かったです。
 開会が近づくにつれ夕立模様になってきました。花火大会は15分早まりスタートしましたが、始まったと同時くらいに雷雨が強まりました。雷神が花火の音に負けまいとゴロゴロ鳴らしているような感じ、近くに落雷があったりで、一時停電もしました。花火会場の方からは凄い落雷の度に悲鳴が聞こえました。事故にならないことを祈りました。途中さすがに中断して、様子を見ました。30分くらいたってから再開、今度はちゃんと見ることが出来ました。2尺玉もあがりますからお腹に響きます。

     
   綺麗に上がる花火                  伯父に剣鉈1号作品をプレゼントしました

 伯父は90才、現役のテニスプレーヤー、パソコン使って自分史を作ったり、メールのやり取りなどしています。夜はパソコンの操作で分からないことなど指導して、舘岩の話などして過ごしました。

 21日午後1時過ぎに帰路に付きました。兄と会い、舘岩の山深さを味わい、温泉三昧をして、イワナを食らい、美酒を飲み、須賀川の花火を眺め、伯父と語らう・・・・、中味の濃い2泊3日でした。
(2005.08.22.) 






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