定時制の授業は午後5時25分から始まります。1時間目のあとに給食があり、その後に3時間の授業が続きます。4時間目の授業が終わるのは午後9時5分になります。現在はどこの学校でも立派な食堂がありますが、私たちのときは、給食の時間になると係りの生徒がパンやスープを教室に運んで食べました。その給食ですがかなり美味しいものでした。卒業した後で振りかえると、黒板での先生がたの明るい声やクラスメートの明るい笑顔が浮かびます。
よい思いでだけが心に残り苦しいことは忘れてしまいがちです。しかし、実際の学校生活はかなり苦しいものでした。私が在学した昭和30年代は社会全体が貧しく、生徒もほとんどが経済的に苦しい生活を強いられていました。人々は貧しさから抜けだそうと会社や工場で努力を重ねていた時代でした。ただ、教室のなかでは、お互いに明るくふるまっていたので苦しさはうかがい知れませんでしたが。授業では先生の説明についていくのはかなり大変でした。先生がたは定時制だからといって手加減するわけではありません。
気を抜いていると分からなくなってしまいます。また、英語や数学の問題集を開いても分からない問題が多すぎます。自分の力の無さを思い知ります。今の勉強が将来にどうつながっていくのかが見えません。不安な気持ちがつきまとっていました。とくに、数学は難しいと思いました。どうしても分からない問題があったので数学のSA先生に質問したところ、先生はその問題を苦もなく解いてくれました。先生の解き方を見て気がついたことがあります。先生の考え方はとても柔軟でした。問題を解くには先生のような柔らかい考え方が必要だ、硬い発想ではだめだと思いました。
4年のときだと思うが、3時間目か4時間目の授業中に隣の教室からある先生の歌が聞こえてきました。その歌は一見して童謡のような素朴な感じでした。教室の張りつめた空気が一瞬和みました。突然だったので級友の中には顔を見合わせて微笑む姿が見られました。ほどなくして歌は終わり、授業は静かに進みました。ある級友によると、その歌は漢文の授業のときに、先生が作品の説明のために歌ったということでした。どの先生がどんな作品のところで歌をうたったのかを知りたいと思いましたが、確かめることなく卒業してしまいました。
(2006.10.28)