朗読者

ベルンハルト・シュリンク
松永美穂訳
新潮社
2000年4月

著者は弁護士、アメリカではミリオンセラーとなった。前半は親子ほどにちがう二人の恋愛、後半はナチの犯罪という重いテーマになっている。

小説は、主人公ミヒャエル・ベルクのハンナ・シュミッツとの回想物語として展開する。 彼の父親は哲学教授、彼女は路面電車の車掌をしている。

二人の出会いは、学校帰りに嘔吐、何歳も年上の彼女に介抱を受けたことに始まる。逢い引きでは、どういうわけか本の朗読を求められる。

彼女は彼を坊やと呼んだ。親の留守には同棲したり、数日間の旅行にも出かけたりする。二人の相愛の関係は続くが、ある日些細なことでけんか、突然、彼女は姿を消す。

数年後、ナチス裁判のゼミの参加で、ミシャエルは彼女を見かける。彼女は親衛隊の一員で、アウシュビッツに関係した罪に問われている、被告だった。裁判を通して、彼女の過去の姿が暴かれていく。

彼女は文盲であることを恥じるあまり、教会の焼殺事件の主犯としての罪を、甘んじて受ける。無期懲役の判決が下る。

主人公はすでに結婚、娘もいるがまもなく離婚、いまは法史学者になっている。彼は服役中の彼女に手紙を書くこともなく、ただ朗読テープを送り続ける。彼女はテープを聞き、本と照合しながら文字を覚える。数年後短い手紙を受け取るが、テープを送り届けることはやめなかった。

彼女の文盲の理由ははっきりしないが、生い立ちが極貧の環境にあったことを、暗示されている。18年目に出所、アパートも仕事も用意されていたが、その前日に彼女は自殺する。

遺書には、残したお金をアウシュビッツで生き延びた娘に渡すこと。文盲の人たちに役立つように使われることが、書かれている。娘は入れ物の缶だけを受け取る。お金はユダヤ人識字連盟に送金された。('06.11.7)


しかし、今は、私たちは自分を捕らえていた律法に対して死んだので、それから解放され、その結果、古い文字にはよらず、新しい御霊によって仕えているのです。
ローマ人への手紙 7章6節