ホームレス失格

松井計著
幻冬舎
2005年6月

著者の母は教員、授業中に陣痛、2100グラムで出産、46歳で死亡している。子供は3歳で冬望子、生まれたばかりの竜之介。妻は少し知能が低いと言われている。

家計が破綻、妻は家出、子ども二人も施設に引き取られる。公団も家賃不払いで退去。出版社と連絡のため、携帯だけは持っている。

落ちぶれると、借金に行っても貸してくれない上に、必ず説教される。返すときには3千円借りたのに5千円だと言われる

女性のホームレスも見かける。ホームレス特有の悪臭になじめない。路上で横にならない、残飯をあさらないと、自らに誓う。

終電と始発の間はシャッターが閉じる。その間、夜の町を歩き回る。金があるとカプセルホテルに泊まったりしている。ホームレスでなく、作家としての姿をかろうじて保つ。

路上生活の空腹と寒さ、それ以上に先の見えない不安、恐怖がある。1分千円、殴られるだけで金をもらえる晴留屋の仕事もする。山手線の3時間の有効時間を自動精算機で解除、電車の中で時間をつぶすことも。

妻に会いたい、子どもの顔も見たい。金ができて絵本と書籍を送るが届かない。施設に電話しても職員の冷たい応対、連絡もとだえる。

公団の退去から8ヶ月目、「ホームレス作家」の著書が出版され、テレビ出演や原稿の依頼が入るようになる。マンション入居。しかし、ハウスレスでなくなったが、家族がいないので、ホームレス状態に変わりはない。

700万ほどの手取りに500万ぐらいの印税がくる。借金の返済、住民税、国民保険、公団の家賃などなどの滞納の支払い、さらに弁護士費用も加わる。一度失ったものを回復、取り戻すのに、どれだけ大変かが身にしみる。

まっ先にパソコンを購入、携帯のカードは月8万円にもなっている。読者から年内に200通もの励ましの手紙も届く。なかには現金なども入っている。スナックのママからテレもくる。

ホームレスの後遺症は死の恐怖にある。ホームレスをやめてから同じところを歩くが、全くちがう景色がある。

どうもDVということになっていて、行政が妻子に会わせない。職員が独断で妻の方だけに生活保護を与えるのは、法律に違反している。所長との話し合いもうまくいかない。対処すると言いながら返事もくれない。

手紙を書いても妻に届かない。自分の妻子でありながら、会うこともできない。ついに区議員の助けを求める。しかし解決しない。嘆願書も3通書く。

妻子は行方不明という。捜索願も用意するが、実際はうそで、施設で絶縁指導を受けていた。養育する能力も意志もない。子どもを会わせてはいけない。離婚しないといけない、と言われているらしい。

結局、離婚の調停が成立する。二度と経済的苦難を味わいたくない、との妻からの言い分である。妻子には何もできないが、本を残すことで子どもに著作権の継承ができる。50年間、子どもに受け継げる。

ホームレス自立支援法が成立した。ただ排除だけのものになるのでは、と懸念される。('06.11.8)


すると、イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕する所もありません。」
マタイの福音書 8章20節