東呉酒乱記 IN 合肥
※一部のキャラクターは真三國無双の影響を受けております。



合肥でのにらみ合いが続く魏と呉であったが、膠着状態が続き、兵の消耗もひどくなった。
そこで、両軍ともに兵を引くことになった。
そのときふと誰かが言い出した。
「宴会しましょうか」

兵の鋭気を養うのと根っから酒好きの呉将たちはそれに賛同し、すぐさま魏へと使いを出した。

曹操:なんだと?宴を開こうだと?むぅ・・・。
程c:殿、これは罠です。
荀ケ:おそらく宴の最中に伏兵を立て、我らを絡め取る策でございましょう。
曹操:ふむぅ・・・
夏侯惇:どうするのだ、孟徳。
曹丕:父上、受けて立ちましょう!ここで下がっては臆病者呼ばわりされますよ。
張遼:その通りです!殿、行きましょう!
許チョ:オラ腹に入るんならなんでもいいよ〜
楽進:おまえは黙ってろ。
荀攸:兵の鋭気を養うにはいい機会ですが・・・。
荀ケ:ならばこちらも伏兵を準備しつつ参るとしましょう。誰がいいでしょうねえ・・・?

一同、じっとお互いを見合う。
要するに伏兵に抜擢された者は酒が飲めないというワケなのだ。
それぞれがサッと目を逸らせた。

許チョ:オラはいやだど〜
李典:私も遠慮します。
楽進:俺には伏兵は向いていないからな。

皆が役を押しつけあう所へ、夏侯淵と張コウがやってきた。

夏侯淵:なんだなんだ?何かの会議か?
張コウ:ああ〜なんだかむさ苦しい・・・こんな狭いところに汗くさい男がイッパイで・・・。
曹丕:そういうおまえもむさ苦しい男の一人だってこと、忘れんなよ。

冷静な言い草であるが、それにちょっとムッとした張コウであった。

張コウ:子桓様、それは違います。私は美しい男なのです。むさ苦しいのはこういう・・・

と、横にいた夏侯淵を指さした。

夏侯淵:おい!
曹丕:(ちょっとニヤリと笑う)そーかそーか、そんなに俺達といるのがイヤなら、儁艾、おまえにはもってこいの任務をくれてやる。
張コウ:なんですか?

そこにいた全員がピンときた。

張遼:おお、それはいい。
李典:儁艾殿なら身のこなしも素早いし、伏兵にはもってこいですね。
張コウ:??なんだかわかりませんが、そんなに私に向いているのであればお引き受けいたしましょう。
荀ケ:これで決まりましたね。それでは呉へ使いを出しますよ。
全員:はーーい。

そしてここには一人妄想に老ける中年オヤジがいた・・・。

曹操:・・・・いい女いるかなぁ・・・・。
夏侯惇:・・・孟徳・・。ここをどこだと思っておる・・・。
曹丕:父上・・・ゲームじゃないんだから戦場に女なんかいるはずないでしょ。
曹操:二喬ってどんなんかな〜(聞いていない)
曹丕:まったく・・・。
夏侯惇:そういう二代目も奥方を連れてきているではないか。
曹丕:ギクッ。あ・・あれは・・だな、ほら!ユーザーの声にお答えしてだな・・・・
夏侯惇:何をわけのわからんことを言っておる。
曹丕:は・・はは・・ま、まあよいではないか。なっ曹休?
曹休:そんな急に話を振らないでくださいよ・・・。



そのころの呉軍−。

諸葛瑾:殿、魏から返事が参りました。
孫権:そうか!で?
諸葛瑾:軍団総出でくるそうです。
孫権:ふふふ。かかったな!ようし!急ぎこちらも準備をせよ!
呂蒙:しかし殿、敵もおそらくは伏兵を立ててくると思われます。充分ご注意を。
孫権:そのくらいのこと、とっくにマルッと全部お見通しだ!
呂蒙:は?マルッと・・・?
孫権:気にするな!
魯粛:子明殿、宴の場所はどこでやるのか聞いておられんのか?
呂蒙:はい・・・どこで?
孫権:船の上だ!!
孫権は腕組みしながら笑って言った。

魯粛:船はすでに黄蓋殿が準備しておる。
呂蒙:ほー、さすがですな!
魯粛:船は実は二重底になっておってな。そこに兵を伏せておき、魏のやつらが酔った隙に床を破ってヤツらを一網打尽にするという寸法だ。
孫権:これで中原は俺のものだーー!!はーっはっはっはーー!!
諸葛瑾:殿、殿、まだ気が早うございますぞ!
魯粛:・・・くれぐれも先に酔わぬよう、お願いいたしますぞ、殿。
孫権:うっ・・・!わ、わかっておる!
呂蒙:・・・大丈夫なんでしょうね・・・。
魯粛:私に聞くな!
呂蒙:して、伏兵は誰が?
魯粛:・・・それはあとのお楽しみだ。
呂蒙:なんで!?教えてくれなきゃ準備できませんよ!
魯粛:とにかく秘密だ!それよりあとの連中はどうした?
呂蒙:・・・・宴会やるってんでまたどっかで殿の隣の席決めてるんじゃないですか?

呂蒙の言ったとおり、その隣の部屋では他の武将らがじゃんけんをしていた。

太史慈:・・・!!やった・・・・勝った・・・!!
凌統:俺も・・・よ、よかった・・・・!!

そこには丁奉、甘寧、朱桓、董襲、潘璋、呂範、陸遜、蒋欽たちがいた。

蒋欽:あれ?太史慈・・・おまえ合肥で死んだんじゃなかったっけ?(酒乱記IN荊州参照)
太史慈:・・・ここはどこだ?
蒋欽:合肥だろ。
太史慈:合肥なら俺がいるのは当たり前だと思わないか?
蒋欽:う〜ん、なんだかわかったようなわからないような。まっ、いいか。
太史慈:こんな話を真面目に読んでいるヤツなんかいるわけないだろうが。
蒋欽:それもそうか。ははっ。
潘璋:「ははっ」ってそんな暢気な・・・。

そのとき、悲鳴が上がった。

丁奉:うわーーーーっ!!!マジで俺かよ!?
呂範:がんばれよ、丁奉。
陸遜:そうそう、誰もが一度は通る道なんですよ。
朱桓:そういえば朱然殿がいないなあ。
甘寧:あいつちっこいからどっかに隠れてるんじゃないの?おーい、義封ー!
陸遜:興覇殿・・・いくらなんでも茶筒の中になんか隠れてませんよ・・・。
朱桓:おーい、義封殿ー
陸遜:・・・当然ですがそんな剣の鞘の中になんかもいませんからね・・・っていうか。わざとやってるでしょう?
朱桓:はは・・は・・バレました?う、受けた?
陸遜は溜息をついた。

周泰:おーい、おまえたち、酒樽運ぶの手伝え!
潘璋:はーい!
董襲:これはまたたくさん運びますね・・・。魏のやつらって結構のむんだろうな〜、なんてったって金持ちだしなあ。
甘寧:よっこいしょっと。う〜〜おもてーなあ・・・。
潘璋:酒の重みで船沈みそうですねえ。

一人一樽ずつ持って船に運び込む。

董襲:うっ・・・・!!こ、これはまた特別重い・・・な・・・!

董襲が持ち上げようとした酒樽があまりに重いので、蓋を開けてみた。

董襲:あ。
朱桓:なんですか?
呂範:どうかしたか?
陸遜:?

董襲持っていた酒樽の中をみんなで覗き込んだ。

甘寧:あ〜〜!!
丁奉:朱然殿、みーーーっけ!

酒樽のなかには朱然が膝を抱えて丸くなって入っていた。

呂範:・・・・おい。ちょっと待て・・・。義封のやつ、どうやってこの中に入ったんだ・・・?
朱桓:・・・・というかいつからここに入ったままなんでしょうね・・・。

その酒樽の上蓋部分の入り口の直径はどうみても30センチくらいしかない。子供ならともかく、大人の男が入るのには小さすぎる。

甘寧:おい、いびきかいて寝てるぞ。どうする?
呂範:ほおっておけ。そのうち気付くだろう。
陸遜:で、でもここから出られるんですか?
呂範:自分で入ったんなら、出るだろう。
甘寧:あいかわらずだなあ、あんたも・・・。
董襲:この樽どうしましょう・・・。

周泰:おい!そこ、さぼってないで早くしろ!

全員で顔を見合わせて、そのまま朱然入りの酒樽を船に持ち込むことにした。



そして、長江の真ん中に錨を降ろされた楼船にそれぞれがやってきた。
楼船の大広間にはいくつもの酒樽と料理が用意され、良い匂いが漂っていた。

程普:いやはや、これだけの食糧と酒、よく用意できたものだな。
諸葛瑾:ふふふ・・・この諸葛の瑾ちゃんにかかればざっとこんなもの・・・。
長い顎に手をあてて不敵に微笑む諸葛瑾であった。


孫権:曹操は無類の美女好きと言うからなあ・・・本当は舞姫とか歌姫とかいれば良かったんだが・・。
魯粛:近隣の村人たちは避難してしまっていませんしねえ・・・。
呂蒙:せめて公瑾殿でもいればなあ・・・。
孫権:なにっ?それはいかん!曹操が公瑾に惚れて連れて帰るなんて言い出したらどうするんだっ!
魯粛:いくらなんでも男女の見境ぐらいつくでしょう?
孫権:あんな野獣にそんな理屈が通じるか!
呂蒙:う〜ん、それは充分ありうるような・・・
孫権:だろう?だから曹操には絶対会わせん!
魯粛:なんだか女子を持つ父親のような発言ですなあ・・・。
孫権:・・・はあ〜公瑾は今頃どうしているのかなあ・・・。
魯粛:というか殿。この「三国志」という本によれば公瑾はすでに死・・・
孫権:何か言ったか?
魯粛:い、いえ・・
孫権:美形がそう簡単に死んでは歴史が面白くないではないか!若者がついて来んぞ!
魯粛:そ、そーゆー問題ですか・・・
孫権:そーゆー問題だ。我が孫呉のイメージは「若さ!美貌!はじける!」だぞ。
魯粛:い、いったいいつ決まったんですかっ!そんなキャッチフレーズ!
孫権:今決まった。
呂蒙:子敬殿、ここはあまりツッコミしない方が無難ですぞ。
魯粛:むむむ・・・。
孫権:というわけで会いたいが我慢しておる健気な俺なのだ!
呂蒙:殿、なんだか片想いしている乙女みたいですな。

その孫権を柱の影から見守る男・周泰がいた。
周泰:殿・・・・(うるうる)なんという健気な!
そのまた奥の柱の影から見守る男・蒋欽がいた。
蒋欽:オレはお前の将来の方が心配だ・・・。

孫権:両想いになりたい・・・
魯粛:えっ?
孫権:ごほん、ごほん。なんでもない。うー、あー、と、ともかくなにか余興が必要だな。何か無いのか?
呂蒙:若い者たちの裸踊りとかなんかどうでしょう。
孫権:男の裸なんぞ見てあの曹操が喜ぶと思うか?

そこへ諸葛瑾が通りかかった。

孫権:そうだ!動物の真似はどうだ!?
諸葛瑾:・・・・いきなり何ですか?
魯粛:しかし驢馬ではねえ・・・。
諸葛瑾:だから何ですかっ?
呂蒙:いつも驢馬ってのも芸がなくはないですかねえ・・。
諸葛瑾:ま、またその話ですかっ!!ひ・・ひどいっ!!

諸葛瑾は泣きながら行ってしまった。

孫権:・・あ、子瑜・・・。行ってしまったか・・・。
魯粛:殿が驢馬とか言うから・・・。
孫権:俺は言っとらん!おまえだろ!
呂蒙:そうですぞ子敬殿。
魯粛:まあ、それはそれとして。
孫権:おまえらなあ・・・。
呂蒙:うーむ。女がおらねばせめて見目麗しい若者を選抜して剣舞でもさせてみては?
魯粛:見目麗しい・・・ねえ。
孫権:そんなのいたか?
呂蒙:若手というなら丁奉とか・・・。
魯粛:陸遜はどうだ?
呂蒙:ここだけの話しですがね、ありゃああみえて結構いってんですよ。一見童顔に見えますが実は・・・(ヒソヒソ)
孫権:なにっ!うう、む(メモメモ)・・・ま、それはそうと連中に何かやれと言っておけ。一人ぐらい芸達者なやつがいるだろう。


さて、時は日没。魏軍はぞろぞろとやってきた。
楼船には松明が明々とともり、いつもは戦のためにうちならされる戦太鼓が今夜は楽しげに拍子を取っていた。

荀ケ:フフフ・・・準備は万全だ。はやく尻尾を出すがいい。
荀攸:えっ?し、しっぽ?
荀ケ:独り言だ。いちいち真に受けるな。

孫権:やあ、魏軍の皆さん、今日は日頃の労をねぎらうという意味でも存分に飲んで楽しんで行ってください。今夜ばかりは戦はナシですぞ。本日は無礼講ということで・・・。

出迎えた孫権はまわりを臣下に厳重に囲まれながら言った。

夏侯惇:どこが無礼講だ。あんなに大勢の武将に周りを囲ませおって。
張遼:まったくだ。それに我らは入り口で武器を預けたのだぞ。丸腰なのだぞ・・。
于禁:でも小刀を隠し持ってたりするんでしょ?
張遼:う・・うむ。
李典:まあ、いざとなったら誰か盾になっていただきましょうか。
楽進:誰かって誰だ?
李典:そうですねえ・・・大きくてすぐ死なないような・・・。
李典が言うと全員ある人物の方を見た。

許チョ:うおおお〜〜食い物だあ〜〜食い物だあ〜〜!どあああ〜〜

于禁:まあ、手頃かな。
張遼:手頃か。
李典:手頃ですね。
夏侯惇:貴様ら、鬼畜だな・・・。


そういいながらも彼らのところに酒が回ってきた。


曹操:良い月もでておる。江も静かだ。このような夜に騒ぎなぞ起こるはずもなかろう。のう?孫権殿?
孫権:な・・なははは。そのとーり!今宵は無礼講ということで!
曹操:おお!では儂がお注ぎいたそう。
孫権:おお、魏公じきじきのお酌とはかたじけない。おおっとっと。(こぼれそうな杯から酒を飲む)

周泰:・・・大丈夫でござるか。
諸葛瑾:ううむ。あのままのペースだと呉主さまのほうが先に酔ってしまわれるような・・・。
魯粛:そんなことになってはせっかくの策が台無しだ!
蒋欽:伏兵たちは今か今かと出番を待っているはずでしょ?
魯粛:伏兵・・・伏兵って誰だ?
蒋欽:は?知らないんですか?
魯粛:いやいや、今度のことはご主君自らが計画したことなのでな。
周泰:それよりも俺は殿がこのまま飲み続けられることの方が怖いのだが・・・。
諸葛瑾:ん?何故?
呂範:お忘れか?ご主君は酒乱なのですぞ?
魯粛:うおおお。そうであった・・・!
呂範:酔っ払って変なこと曹操に言ったりしませんかね・・?
魯粛:だ、誰かに様子を見にいかせよう。おーい呂子明!

と、呂蒙を呼んだが一向に来ない。

魯粛:あり?あいつめ、どこへ・・・

きょろきょろと探していると、魏軍に囲まれて飲んでいるのを見つけた。

魯粛:ありゃいかん・・・



その頃、甲板のはじっこでは一つの出会いが生まれていた。

張遼:太史慈・・・子義!
太史慈:久しぶりだな張遼・・・。どうでもいいがフルネームで呼ぶのはやめてくれ。
張遼:いやすまん。しかしなぜおぬし・・・。
太史慈:俺はな・・・不死身の子義と呼ばれているのだ。(もちろん嘘)
張遼:なんと!
太史慈:先だってはうちの配下の馬鹿のために不本意ながらも敗走したがな・・・。
張遼:部下なぞあてにならんものよ。
太史慈:まったくだ。

いつの間にか、肩を寄せ合い、さしつさされつのお酌をしながら二人きりでしんみりと飲んでいるのであった。


凌統:いやーこの前はうちの部隊全滅させられちゃいましたねえ。
楽進:いやーあれは愉快であったなあ。
凌統:(ムッ)
李典:なんというかうちは精鋭ぞろいでしたしねえ。
徐盛:・・・・。
周泰:・・・・。

かなーり険悪なムードが漂い始めた。

丁奉:一番、丁承淵、剣舞、披露しますっ!

いいタイミングで丁奉の芸が始まった。

孫権:おお、承淵か〜〜がんばれよ〜〜
曹操:ふむ、おぬしのとこの若い衆か。
孫権:いや、お恥ずかしい〜綺麗所がおらぬゆえ許されたし。
曹操:(内心がっかり)


諸葛瑾:・・・結構酔ってますね、殿・・・。
魯粛:どうする?
諸葛瑾:どうする?ったって・・・・。
魯粛:このままだと怖ろしいことに・・・。
諸葛瑾:ひぃぃぃ
魯粛:まだ何もいっとらんぞ。
諸葛瑾:急に驚いて動けなくなったら困るでしょ。今の内に練習しとくんです。
魯粛:・・・・。

また別の一角では、酒が入ってなにやらシャンシャンと音が聞こえてきた。
甘寧:さあさあさあ!どーした!
曹休:うおおお!
甘寧と曹休が素手で戦っていた。
周りにいる連中も酒を片手にやんや、やんやとはやし立てる。

程普:いいぞいいぞ!連中、かなり酔いがまわってきとる。
呂蒙:殿もですがね・・・。
程普:いざとなれば周泰あたりに面倒みさせればいい。そろそろ伏兵の出番だ。
呂蒙:あ、そうそう。その伏兵って誰なんです?
程普:ん?なんだおぬししらんのか。
呂蒙:殿が秘密だ、って言って教えてくれんのですよ。
程普:なに!おぬしもか!
呂蒙:おぬしも、って徳謀殿、まさかあなたも知らないなんてこと・・・。
程普:うむ。きいておらん。
呂蒙:ええ!?
程普:殿が独自に指令を出されたのだ。
呂蒙:だ、大丈夫かなあ・・・・。

その時であった。
楼船のへりに、ずぶぬれの一軍がよじ登って現れた。
髪は濡れ、顔が隠れ、ぎょろりとした目玉だけがこちらを向く。

魯粛:あ、あれは!!
諸葛瑾:ひぃぃぃぃ!
朱桓:でたーーー!貞子ーーーーーーっ!



さあ、大変!何がやってきたの!?→