東呉酒乱記 IN 荊州



さて、今回東呉の面々は荊州に赴くことになった。

朱桓「ここが樊城か」
陸遜「ちょうどいい機会ですから、いろいろと構造を調べておきましょう」
呂蒙「おまえはいつでも知恵がまわるなあ」
朱然「あれ?殿は?」
董襲「遅れてくるそうですよ」
甘寧「あ〜今回は出張だからご老人たちがいなくて羽が伸ばせるなあ」

そうなのである。
今回は張昭らをはじめ文官たち、都を守備するために残った者たち以外がやってきていた。

孫権「なあ、こんなことで本当に荊州を返してくれるんだろうか」
魯粛「劉備を酔わせて、荊州を返す、と言わせるんですよ。これだけの人が聞いていれば、言い訳のしようがありませんからね」
孫権「この作戦、公瑾は反対していたが大丈夫か?」
魯粛「単に孔明殿と顔を合わせたくなかったんじゃないですか?」
孫権「だがなあ。公瑾がいなかったら宴会も愉しくないぞ・・・第一華がない」
魯粛「舞姫と楽団だけじゃダメなんですか」
孫権「ダメだな〜」

樊城の大広間に入ると、劉備たちが待っていた。

劉備「おお!よくぞ参られました!義兄上」

劉備は立ち上がって孫権をむかえた。

孫権「・・・義兄上・・?」
劉備「ええ、先だって妹君を娶らせていただきましたし」
孫権「・・・そうだった・・・・!」
関羽「兄者、皆そろったようだぞ」
張飛「早く飲もうや!」
孫権「・・・・ということは私はこの三人と兄弟ってことに・・・(ぼそ)」
周泰「殿、殿、聞こえておりますぞ・・(ぼそ)」
劉備「おお!たしかにそういうことになりますな!ははは!四人で桃園結義しましょうぞ!」
孫権「・・・・(それはいやだ〜〜!!こ〜きんと断金の誓いのほうがいいっ!!)」

孫権は遠い目をした。
このヒゲづらのおっさんたちと桃園で杯をかわしている自分をちょっとだけ想像してしまったのだった。

凌統「今回は都督殿、おいでじゃなくて寂しいですね」
甘寧「ああ〜そうなんだよ!!そのことだけがタマにキズなんだよな〜!しくしく」
朱桓「丁奉や徐盛も留守番だったな」
呂範「太史慈なんか合肥で討ち死にしちゃったしな」
甘寧「おいおい・・・その話はやめようぜ。しんみりしちゃうだろ」
呂蒙「そうだったな・・・よし!子義の分まで飲もう」
陸遜「あ、劉備軍の方々もみなさんお揃いのようですよ」

そして宴会が始まった。

劉備「本日は遠路お越しいただき、呉のみなさんには感謝しております。これを機会に双方理解を深め・・・・」

馬超「おい、こら。まだ飲むな。玄徳殿がお話中ではないか」
張飛「うぃ〜っ・・・だってよ〜劉のアニキ、話なげえんだもんよ。俺の温酒がさめちまう」
関羽「・・・温酒か・・・なつかしいな」
黄忠「温酒に華雄を斬る、ってのがあったのう」
関羽「うむ。名言だ。華雄を斬って戻ってきたとき、行く前にのんでいた酒がまだ温かかったからな」
張飛「そんときの酒、爪先でももてねえくらい熱かったんじゃねえか?」
関羽「・・・翼徳」
関平「なにをいってんですか!父上は凄いんですよ!」
周倉「そうそう!」
馬超「だ・か・ら!静かにしてろって」

まだ劉備は立ち上がって皆に話をしている。

潘璋「あ〜なんかトイレにいきたくなってきた」
甘寧「がまんしろって」
呂蒙「しかし、本当に話が長いな・・・」
陸遜「校長先生の話みたいですね」
呂範「貧血で倒れてみるか」
朱桓「公瑾殿がいたら似合いそうですね、その役」
呂範「なんだ、俺じゃ不満だってのか?」
呂蒙「そんなか弱そうな美青年って感じじゃないじゃないですか。派手だし」
呂範「いいだろ、派手でも。嫁さんの好みに文句つけんな」
 

孫権「なあなあ、玄徳殿。話はそれくらいにして、さっそく飲もうではないか」
劉備「おお、これは失礼。では乾杯の音頭を・・・」

乾杯の前に劉備はまた話し出した。

張飛「・・・も〜我慢できん!俺は飲む!飲むし食う!」

そのとき、ちょうどやってきた一団がいた。

諸葛亮「ああ、ちょうどいいタイミングだったみたいですね」
趙雲「そのようですね。さすがは軍師殿」
馬良「殿の話は毎回長いですからねえ」
ホウ統「それ以外は本当に良い方なんですがねえ」
姜維「僕はこのまえ貧血で倒れましたからね・・・」
諸葛亮「伯約はもう少し鍛えなさい、ね」
姜維「すみません・・・」
夏侯覇「いやいや、伯約殿はそういう役どころがお似合いです。白皙の美青年ですから♪」
麋竺「おや?孫乾殿や簡雍殿、他の方々は?」
姜維「孫乾殿はお使いにいってます。厳顔殿は簡雍殿のぎっくり腰の世話をしていますが」
麋竺「は〜ご老齢には勝てんということですか・・・」
黄忠「誰が年寄りじゃ!」
麋竺「誰も言ってませんよ、そんなこと・・・」
馬良「そういえばうちの弟も来ていませんね」
ホウ統「幼常殿ならさっきなにやら魏文長殿と表でもめていたぞ」
馬良「本当ですか!?ちょっと行ってきます」
諸葛亮「魏延、ですか・・・彼の反骨の相はちょっと・・ねえ」
姜維「前から聞こうと思っていたんですが反骨の相ってどんなんです?」
諸葛亮「ん?ああ、好みの顔じゃないんですよねえ」
姜維「えっ!?そんな理由?!」

そんな姜維をよそに彼らは関羽たちの傍に座った。

関羽「遅いではないか、孔明」
諸葛亮「すみません、いろいろと準備がありまして」
張飛「本当だぜ!兄者のありがた〜い話が終わっちまったじゃねえか」
馬超「ちっとも聞いてなかったくせに」
諸葛亮「では私はわが君と孫権殿にご挨拶をしてまいりますね」
趙雲「あ、某も参ります」
 

周泰「・・・殿。あまりペースをあげないで飲まれますよう」
孫権「ああ?おう、分かっておるとも!」
蒋欽「・・・大丈夫ですか?なんかもう呂律がアヤシイんですが・・」
諸葛亮「我が君、呉侯殿ごきげんうるわしゅう」
劉備「おお、孔明に子龍、待っておったぞ。ささ、おぬしも飲め飲め!」
魯粛「・・・・ちっ・・(邪魔なヤツが来た・・・)」
諸葛亮「なにか?子敬殿」
魯粛「あ〜いいえ、なんでも」
孫権「おお、噂に名高い趙雲将軍か!ささ、こっちへ。杯を授けよう」
趙雲「おそれいります」
諸葛亮「・・今日は周公瑾殿はお見えではないのですね」
魯粛「ええ。こないだの宴会からちょっと体調を崩しておりましてねえ」
諸葛亮「・・・・(身に覚えがありすぎて無言)」
劉備「そうですか、それは残念。東呉の華がご不在とは」
孫権「なんのなんの。趙雲将軍や劉軍の方々もなかなかですぞ」

孫権は趙雲と差しつ差されつ、で上機嫌だった。

魯粛「・・・まずいな」
周泰「劉備は全然酔っていないみたいですよ・・・」

孫権「いやー趙雲将軍は漢前だな!はっはっは」

孫権はばしばしと趙雲の肩を叩いた。
趙雲は迷惑そうな顔をして苦笑いを浮かべていた。

周泰「・・・公瑾殿といい、趙雲殿といい、なんだか殿は面食いみたいだな・・・」
魯粛「・・そんなこと、今更わかったのかね」
周泰「はあ・・・」
ホウ統「それに比べてうちの殿はヒゲマニアですからね」
魯粛「・・それもどうかと思うが・・・」
 

その様子を遠巻きに見ていた甘寧たちは、そっと呟いていた。
甘寧「・・劉備んとこのやつら、意外におとなしいのな」
凌統「・・うちが相当なもんだからじゃないですか?」
董襲「えっ?何がですか?うちってそんなにひどいの?」
呂範「・・そうか、董襲に潘璋、おまえたちいつもいなかったもんな(ニヤリ)」
潘璋「な、ななななんですか、呂子衡殿、その「ニヤリ」はっ!!?」
呂範「興覇、頼むぞ」
甘寧「オッケーッす!おらおら、飲め飲め〜」
潘璋「うわわっ!ちょ、ちょっと待ってくださいよ!それ水瓶じゃないですかっ!そんなんで飲んだら死んじゃいますよっ!」
甘寧「そんじゃ、おまえたち二人で回しのみしな!チマチマ飲んでんじゃねーぞ!」
陸遜「ちょ、ちょっと、興覇殿。ここは東呉じゃないんですよ・・・」
甘寧「関係ねーって!おらあ!俺の酒が飲めねえのか!(ギロリと睨みをきかす)」
董襲・潘璋「ひえ〜〜〜っ!」

張飛「おお、なんだかあっちは盛り上がっているようだぞ!俺達も仲間にいれてもらおう」
関羽「儂は好かん。酒は静かに呑みたい」
関平「父上がそういうのなら、自分もここにおります」
関羽「儂に遠慮せず、若い者同志、向こうで盛り上がってこい」
周倉「いや、我らは雲長殿のお側にいられればそれで美味い酒が飲めるというもの」
胡班「うんうん、同感」
廖化「関羽殿にかんぱ〜い♪」
関羽「よせ・・・恥ずかしいではないか」
関平「あっ、父上、照れてる〜」
張飛「しょーがね〜な、この関羽信者らは。行こうぜ馬超」
馬超「気易く名を呼ぶな」
張飛「なんだよ〜いいじゃねえか。一騎打ちした仲だろ」
馬超「なんだ、それは。それとこれとは別だ」
張飛「いいじゃんか!減るもんじゃないし」
馬超「おまえに呼ばれたら減る!」
張飛「ほ〜そうか、じゃあ試してみるか?超、超、超〜」
馬超「超超言うな!おまえはコギャルか!」

そうして、張飛・馬超らを交えて呉の陣営はますます盛んに酒盛りを開始した。

甘寧の水瓶酒攻撃ですでに何人か撃沈していた。
董襲や潘璋、朱桓や朱然らがそこにころがっていた。

馬超「この俺とやろうってのか!面白い!」
甘寧「おう!いいぜ!一対一でいくか!?」
張飛「俺を忘れんな〜〜!」
甘寧「ようし!このストローでいくぜ!」
馬超「くっ・・ストローでこの瓶いっぱいの酒を飲みつづけるのか・・・!?」
張飛「ストローはやめようや〜!」

呂範「・・・馬鹿はほっとこう」
陸遜「・・やっぱり、周都督がいないと今ひとつ盛り上がりに欠けますね」
呂蒙「おまえもそう思うか」
凌統「自分も同感です。それに、殿も心配ですし」

凌統が見ると、孫権が趙雲に絡んでいる。
諸葛亮らがそれをひきはがそうとしていた。

諸葛亮「・・たく、絡みグセは直っていないようですねえ・・」
周泰「申し訳有りません・・・殿、殿」
孫権「うう〜〜ん、なんだ、邪魔するな。俺は趙雲将軍と飲んでおるのだ〜」
趙雲「ぐえ〜、と、殿〜お助けください〜」
劉備「子龍、我らは荊州を借りる身だ、おとなしく人身御供となってくれ」
趙雲「そ、そんなっ!と、殿〜〜っ!!」
姜維「いつまでも女嫌いとか言ってるからそんな目にあうんですよ・・(ぼそ)」
諸葛亮「これ、伯約。それは言い過ぎだ」
魯粛「ああ〜やっぱりこうなってしまったか・・・」
周泰「どうするんです」
魯粛「・・・とにかく殿を正気に戻せ」
蒋欽「無理ですよ・・・公瑾殿でもいないかぎりは」

孫権は趙雲の首を羽交い締めにしていた。
趙雲「ぐえ〜〜っ!こ、殺されるっっ」
劉備「うん?それくらい耐えよ!五虎将の名が泣くぞ!」

劉備の言い放った「五虎将」の言葉に当人たちが振り返った。

馬超「なんだ!趙子龍、情けないやつめ!それでも永遠の若武者か!」
関羽「儂が筆頭だーーーー!!」
黄忠「誰が年寄りじゃーーーー!!」
張飛「おるぁぁーーー!酒のませんかーーい!」

呂蒙「・・・・こ、これが名だたる五虎将か・・・!」
陸遜「みんな、酒に弱いみたいですね」
凌統「うちはみんな場慣れしてるから・・・」
呂範「でも劉玄徳殿だけは平気みたいだぞ」
陸遜「本当ですね・・あんなに飲んでいるのに」

陸遜「あっ・・・殿が〜〜〜」


さ、、ついに事件勃発!殿がどうしたの!?→