かくれ鬼をした。
「白雪が先に鬼をするから、おまえは逃げるの」
これは北条の姫
「とうまでかぞえたら、つかまえに行くよ」
われは”イヤしき”忍の”マツエイ”
「ひとつ」
頭領は言う。
姫と触れ合ってはならぬ。
触れ合えばxxxxにxxxをあて、xxが見えるまでxxxxし、xxとxxxxxでxxxxにする。
「ここのつ」
頭領は言う。
姫と言葉を交わしてはならぬ。
交わせばxxのxxの隙間に一つずつxxをうずめ、xxxxxxし、xxからxxxxをxxぎxむ。
「とう」
木の葉に化け、探し始めた姫を樹上から目で追う。
日が傾くまでわれを探し、ついに見つけられず、疲れ果て、鯉のいる池でしゃっくりのように泣きだした。
(おめえは白雪を守っとけ)
うしろに立つ
「いたぁ」
わあわあ泣きながらわれの手をつかまえる。
また触れ合ってしまった。
ああ、頭領にxxとxxxxxでxxxxにされる。
***
布団を二枚つなげてあるから、小太郎でもはみ出すことなくおさまっていた。
布団が敷かれているのは小田原城御殿の広間という、忍ごときが一人で使うにはたいへんに贅沢な場所である。
怪我は本職によって治療されたあとらしく、包帯にくるまれた間接がごわごわした。
誰にやられたか、髪までもすべてほどかれて浴衣を着せられているこの姿は、真っ裸でいるより不本意だ。
布団の横に視線をずらせば、介添えを誰にも譲らなかった白雪が下のまぶたを盛大にはらして座っていた。
手には数珠など持って、一見すると小太郎が死んだような景色である。
小太郎が目を覚ますようにと祈り続け、必死にすり合わせていたその数珠は、いま役目を終えた。
「こた」
開口二文字で感極まり、白雪は口を覆った。
まばたきせぬままぼろっと涙が落ちて小太郎はぎょっとした。
これは本当に白雪だろうかとあやしくなった。
白雪姫といえば、小太郎の足が変な方向を向いていても、わき腹がえぐれていても顔色一つ変えず微笑んでいた女なのだ。
それが泣くほどだから、小太郎が寝ている間にさては別になにかあったのかもしれない。
「氏康が死んだか」
小太郎の声に白雪ははたと瞬きして、首を横に振った。
「ならばなにを泣く」
白雪は涙をのせた長いまつげをしばたたいた。
「・・・わからぬと申すか」
「わかる」
「・・・」
ちょっとの沈黙をおいて、白雪は、正体不明のやるせなさに拳をにぎりしめて肩をひくつかせ始めた。
「わたくしが泣くと、小太郎がこまると思っ・・・ずっと、我慢し、・・・っ」
ぐうにした拳を熱いひたいに押しあてて、形のよい唇をかみ締める。
一度冷静に息を整えようと努めたが、五秒ともたずに感情の第二波が押し寄せ泣き崩れた。
きれいに処置された小太郎の腕に、涙でしめった両手がのった。
「小太っ郎、すまぬ」
指に力が入りすぎて強張っているのに、小太郎の腕に爪をたてることは決してしない。
「ごめん、ごめんね。こんなにひどい怪我をっ、すまぬ、痛かったろう」
白い顔がいまは溶けた鉄のような色にまでのぼりつめている。
「死んでしまったかと思っ・・・うっ、うう」
「・・・」
今度は天井をあおいで、わあ、わあ、と童女にかえったように泣き出した。
涙は次から次に枯れることなく溢れてくる。
「・・・おい」
わあわあ「小太郎が生きて、よかっ」わあわあ
「白雪」
わあわあ「おまえがいなければわたくしは生きておれない」わあわあ
「白雪」
わあわあ「小太郎、こたろう、こたhうぃ!&%(」わあわあ
「・・・」
小太郎はむくりと上半身を起こした。
大怪我をしているのにもう起き上がれる事実に白雪は驚くべきであるが、大混乱の白雪の目には小太郎が起きたことすら映っていなかった。
といた赤髪もそのままに、乱れた浴衣もそのままに、風魔の手が白雪の両手首を掴んだ。
これでも白雪はわあわあ泣いて気づかない。
その両手首を持ち上げられて、バンザイするような格好にさせられたがまだわあわあ言って気づかない。
バンザイの格好で左右に揺すぶられてもまだ気づかない。
「・・・」
バンザイで揺すぶっていた紫の手がしずかに位置をかえる。
白雪の両頬と耳を下からすくいあげるように覆った。
風魔が迫る
泣き声がやんだ。
「よくがんばった」
わずかに離れたすきに息の声がそう囁いた。
白雪がなにも言えないようもう一度ふさぐ。
見開かれていた瞳はやがてトロンと溶けて、目を閉じたときに最後の一滴が落っこちた。
そして
かたむく
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***おまけ***
「おうい、風m・・・」
様子を見に、広間の襖戸をあけた氏康は止まってへんな顔をした。
「わぷっ!急に立ち止まんないでくださいよー!もうっ、あたしの鼻が低くなったらどうすんですかっ。ってお館さま?あ!わかった、あいつのことだから、さてはもう逃げて・・・」
オマケにくっついてきた甲斐姫まで中をのぞきこむ。と、声にださずにワーキャーのた打ち回った。
(ちょ!なにこれ!あの二人ってこういう仲だったの!?ちょ、写メ!写メ!!)
「うるせえな。小声で騒ぐんじゃねえよ」
御殿の広間で、嫁入り前のかわいいかわいい孫娘が悪人面の忍と同衾しているではないか。
白雪の襟の形がきれいなまま寄り添ってぐうぐう寝ていることから判ずるに、信じがたいが、本当に同衾しているだけのように見えた。
とはいえ、自分はやんごとなき家柄の大殿であるわけだし、とりあえず小太郎のケツっぺたを蹴っ飛ばしたうえ、落下地点で忍法千年殺しをしてやるべきかと、氏康はあごをひねった。
「このド阿呆。忍の分際で俺が近づいても寝続けるたァ油断がすぎる」
「ツッコむのソコ!?お館さま的にはあれってありなの?ありなの?うちの孫になにすんじゃーいってしないの?」
「千年殺しはお見舞いするがな、好きあってるってんなら俺ァ反対しねえよ」
「それにしてはあたしの手料理食わされたみたいな顔してますよ」
「そりゃあ、触りッてモンがあるだろうが」
「触りって?身分?」
「大きさがなぁ・・・」
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