平和島静雄は緊張しきりであった。

金曜日の夜、仕事終わりにと連れ立ってTSUTAYAへ行き、それぞれ観たいDVDを一つずつ借りてきた。
上映場所はDVDプレーヤーのある静雄の部屋である。
静雄は仕事の先輩、田中トムから薦められた候補から検討に検討を重ね『ローマの休日』をチョイスした。

『主役二人イイ雰囲気なのに最後切ないから、そのもどかしさを埋め合わせたい的な心が芽生えるかもだべ?あとは頑張っておまえから誘ってやるようにな』

というトムの言葉に胸をうたれたためである。

さて、いよいよ、前日に念入りにファブリーズした静雄の部屋へをお招きした。
帰る場所が隣の部屋、という気軽さからすでに時計は23時を回っている。

「どぞ、汚いとこすけど」
「お邪魔します」

「きれいないいお部屋ですね」と褒められた。
静雄は昨日掃除をがんばった自分をほめたたえ、心の中でガッツポーズした。
タバコ吸うときは一応外で吸うようにしてるから室内にタバコ臭さなし。
掃除OK。
飲み物OK。
トイレ掃除OK。
・・・ふ、風呂も念のためやっといた。

この下心の後ろめたさから、どちらのDVDから先に見るかという話になったときに先を譲ってしまった。
飲み物を用意し、座布団を二つ折にして背もたれにしながら二人並んでまずはチョイスのDVDを鑑賞だ。

「そいや、さんなに借りたんスか?」

視聴の前のご注意の画面を見ながら尋ねる。自分のDVD選びでいっぱいいっぱいで聞くのを忘れていた。

(ちょっとでも俺を意識してくれてるならやっぱ恋愛モノとか選んでくれているのだろうか・・・ちょっとエッチなのとか)

静雄はそこまで想像して

(別にそういうんでDVD観るんじゃねえし!)

頭をぶるぶる振って雑念を払った。
の返事より早く、東映ならば波がドドーン!20th Century Foxならパンパカパーン!なオープニング画面に世界一有名なねずみのロゴが現れた。
その後、本編に入ると黄色いクマが






『ハァチミツだいすき』

「・・・」

真剣に画面を見つめるの横で、静雄は自分の心の汚さに打ちひしがれていた。




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