【本館宴会場「鶴の間」】ETU新年会 偉い人の挨拶



ETUは金がない。
東京Vのように慰安旅行の行き先をアンケートで自由に決めるなんて夢のまた夢である。
ゆえにETUの宿泊先は今年も例年どおり台東区の提携保養施設だ。
ホテル本館の宴会場「鶴の間」に料理がずらりと並ぶ。
到着が早かった彼らはすでにひとっ風呂浴びており、浴衣に着替え18時からの夕食を今か今かと待ちわびていた。

各々乾杯のグラスを手にとった。

会長は腰痛のため不参加、副会長は露天風呂でヅラがずれるのを恐れて私用のため不参加、後藤は年始のあいさつ回りが済んでから合流するとのことで到着が遅れていた。ともすれば乾杯の合図を出すのはこの男しかいない。

「えー・・・二十歳未満のみなさん」

まわりに言われて達海はめんどくさそうに立ち上がった。

「お酒を飲むとサッカー選手やっていられなくなるかもしれないとともに」

達海の挨拶中「やあ悪い、遅れた」とよれよれになったジェネラルマネージャの後藤がちょうど鶴の間に案内されてきた。後藤は姿勢を低く、声も小さくして下座にススッと着いたので達海含め、下座の者たち以外は彼の到着に気づかなかった。殿山がさっと後藤のグラスにビールを注いだ。後藤もグラスを携え準備万端だ。
達海の言葉は続く。

「責任者として後藤や俺が罪を問われ、やがて後藤はストレスで痩せこけ、枯れ、禿げ、そして死にます。なので絶対に飲まないように。二十歳以上のひとは、おしっこだけは漏らさないように気をつけて。んじゃ、去年はおつかれ!今年にかんぱい」



「「「「「かんぱーい!」」」」」

「・・・」












【本館宴会場「鶴の間」】ETU新年会 丹さんのカンパイ講座



「いいかぁベイビーたち、俺たちはおまえに酒を飲ませてやることはできない。なぜだかわかるか。わかるな?そう、俺とおまえの干支が同じだからだガブリエル!聡くやしくなんてないんだから!っつーわけで、掛け声だけでも覚えて雰囲気で酔うんだゾ。わーったな」

下座で丹波に手ずからコーラを注がれたガブリエルは、わかったのかわかっていないのか、グラスを持ってこくこく笑顔でうなずいた。
その横では上田と椿、宮野が正座させられている。
椿と宮野は二十歳だが、どうも口を挟めそうにない。
さては丹波はこの宴会前に待ちきれずにアルコールをたしなんでいる。

「じゃあワカゾー諸君、もう一回練習だ」

丹波のカラになったグラスには横の掘田が苦笑いで瓶からビールを注いだ。
そのグラスをぐいんと天井へ掲げる。



「イインダヨ?」

「「「グリーンダヨ!」」」




「丹さん・・・変な言葉教えないでやってくれよ」












【本館宴会場「鶴の間」】ETU新年会 大人問答



鶴の間下座で丹波が若手を正座させているかと思えば、上座でも年上が年下を正座させていた。

「俺は枯れてますか」
「いいえ」
「俺は禿げてますか」
「いいえ」
「誰のせいで年末にクラブハウスでバルサンしなくてはいけなくなりましたか誰がやってあげましたか誰が休日返上でしましたか」
「そりゃ老朽化が」
「ポテロングリーグジャパンチップスじゃがりこおっとっとハッピーターン!」
「はい、俺のせいです」

後藤による達海へのお説教を遠巻きに見ていた世良と清川はどこかかわいそうなものを見るような顔つきで呟いた。

「後藤さん、背高いし、ケッコーいい男なのに」
「たいてい監督のおかんみたいだからな・・・」



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