■アリババ案:「お風呂でばったり」
「こ、こういうのはどうでしょうか。間違えてシェハラザードさんが入っている女湯に入ってしまうんです。なにか考え事をしていたんだごめん!、っとか言ってパっと出てきたら、そんなに怒られないんじゃないでしょうか・・・なんて」
ちらりと大人たちの反応をうかがう。
しらぁ~・・・としてる。
アリババの若い心が凍りつくほど、円卓会議場がしらぁ~っとしている。
「それ、顔見られてんじゃん」とシャルルカン(しらぁ~)
「え」
「らんま2ぶんの1の見すぎですな」とヒナホホ(しらぁ~)
「アリババくん・・・ふつうは脱衣所で気づかれるんだよ。夢ばっかり見ないでよ」とアラジン(しらぁ~)
「え、え」
予想だにしない、大バッシングの嵐に見舞われた。
助けを求めて視線をめぐらせるが、誰ひとりアリババと目を合わせてくれない。
シンドバッドは深く深くため息をついた。
「しかたない。・・・シャルルカン」
「はい、王サマ」
「やはりここは君だけが頼りだ」
「お任せを。長年にわたり練りに練った女湯のぞき大作戦、ミッションチンポッシブルをご披露しますよ!」
■シャルルカン案:「混浴デー」


■■■ 混浴Dayのお風呂の様子 ■■■

あれ?
円卓会議場は、シンドリアが永遠の闇にとざされたかのように暗くしずんでいた。
お風呂は決してのぞけないんだ。
誰もがそう諦めかけたとき、シンドバッドの肩にトン、と手をおいたのはマスルールだった。
「マスルール・・・」
「本人に頼めばいいんじゃないでしょうか」
「なにを言っているんだマスルール。そんなこと、できるはずがないだろう」
シンドバッドは肩におかれた手をふりはらった。
「・・・シェハラザード様は、シンさんを愛しています」
マスルールの口から”愛”などという言葉が出たことに、円卓の将たちは目を見張った。
注がれる視線に眉ひとつ動かさず、マスルールは続ける。
「シンさんが本当に望むことなら、あの方はわかってくださると思います」
シンドバッドの心臓がコトンと打った。
衝動の根源をたずねる。ひさしくわすれていた。
好きだ
好きだよシェハラザード
きみのすべてに触れたいと思うのと同じに、きみのすべてを見守りたい。
「たのむ」
月のうつくしい夜に、シンドバッドはシェハラザードにすべてを打ち明け、素直に頭をさげた。
シェハラザードはベッドに腰掛け、黙ってシンドバッドの話をきいていた。
シンドバッドの言葉がおわると、長い沈黙の帳がおりた。
シンドバッドはシェハラザードの声も好きだったけれど、沈黙のあいだ細い肩から音もなくすべりおちた髪のひとたばもまた、彼にとっては至上のうつくしさであった。
このひとを愛していると、沈黙のうちに再認識した。
やがて、長いまつげが上をむく。
「本気で言っているのですね、シン」
「ああ」
「・・・わかりました」
「シェハラザード・・・!」
シェハラザードは大きく一度だけうなずいた。
「シンドバッド、あなたがそこまで言うのなら。行きましょう」
「え、い、今すぐいいのかい!?」
シェハラザードの小さな手がシンドバッドの手を握り、「善は急げ、です」と微笑んだ。
ああ
ああ・・・!
マスルール、ありがとう!
世界の真理は愛なのだと、俺ははっきりと理解した。
ガシャーン!
「え?」
シンドバッドは鉄格子越しに、愛する人の絶対零度のまなざしを見た。
「この者はおそれ多くもシンドバッド王の姿を模倣した性犯罪者です。裁きが下るまで決して牢から出してはなりません」
ですよねー。
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