不肖、わたくし千石清純に
先日、とてもカワユイ彼女ができました。




彼女は青春学園の生徒で三年生です。
なんとあの手塚国光くんと同じクラスなのだそうです。
さらに一昨日の席替えで隣の席になったのだそうです。
一生けんめい身振り手振りで話す様子が微笑ましいです。

彼女はとてもカワユイです。
二人で人ごみを歩くと狼たちがちらちら視線をよこすのが分かります。
ちょっとした独占欲を感じて彼女を抱き寄せてみると、狼たちは
お手つきだと再認識して視線をはずします。
これまたセンセーショナル(←どうゆう意味かわかんないけどねー)。

彼女はとてつもなく奥手です。
付き合ってからもう一ヶ月経つというのに、俺の呼称は「千石くん」。
俺はというと、「ちゃん」とか、たまに「」とかカッコつけて呼んで
みたりするけど、彼女は進歩無し。

でも違うんだよ、勘違いしないで欲しいのはちゃんはちゃんなりに
一生ケンメイなのだよ。ってことさ。

あんまり話すの得意じゃないみたいだけど、俺ばっかしゃべってるから
申し訳ないって言って、クラスのこととか席替えのこととか話してくれたんだ。
俺がしゃべってるのは俺がおしゃべりだからなのにね
デヘヘ、カワユイナ〜。






「もしもーし、ちゃん?」
『ぁ、はい。おは、ぁ、こんにちは』

萌。

「今さー、とある学校に視察にきているのだけれども」
『青学ですか?』
鋭い!さすがマイハニー。
「当たりー!また来ちゃったー!というわけで帰りは一緒に帰ろうよ」
『あの、すみません。今もう学校に居ないのですが』
「え!?そうなの?どこどこ?すぐ行く!」
『視察はいいんですか?』
ちゃんを視察に来たのだよ」
は困った声で笑った。
困りっぷりも愛らしいゼ、ベイベ。
「で、どこ?」
『青春台の駅前のゲームセンターの』
「えぇ!?ゲーセン!めずらしー」
『横の、細い袋小路にいます』

「・・・ふくろこうじッスか?」

『はい』
「アハハ!ウケルー、何をしているんだよー」
『長身で銀髪の、たぶん山吹中生と思しき方に募金をしているところで』
ぎ、銀髪って奴しかいないじゃん。
しかも募金?募金って・・・
それって・・・

カツ上げされてません?



「・・・ちょっと、その人に変わってみてくれちゃったりしてみて」
「ぁ、はい」

『のすみません、変わっていただけますか・・・はい、すみません。あ、はい、お付き
合いをしている方で、はい』


受話器越しにかすかに聞こえた問答の相手は

『んだテメェ』

やはり、あっくん


「亜久津ゥ〜、人の彼女にカツアゲするなー!」
亜久津は少し黙って(考えているらしい)メンドクサそうに言った。
『・・・テメェかよ。俺に命令すんじゃねぇ、テメェには関係ねぇだろうが』
「だから彼氏なんだってば」
『どーせまたとっかえひっかえしてる女だろ』
「わ、ひど!ってーかそれ禁句!よりによってちゃんの前で言うなー!」
『いーじゃねぇかよ女の一人や二人』
「ちょ、ちょい待ちあっくん!ストップストップ!ビークワイエット!」
『んだよ。・・・っておい、なんだよ、ふざけんなよ』

突如、亜久津が慌てだす。
受話器越しでなにがどうなっているのかわからない。

「へ?」
『だ、ちょっと待てよ。まだナンもしてねーし、・・・なに泣いてんだよ』

な、泣いた!!!??
泣いたって?
あの我慢強いちゃんが!?
号泣?

「ちょい、あっくん」
『んだよ』
「今から行くからずぇっっったいちゃんからはなれないように!」
『は?おまえなに言っ』


( hold ) ツーツーツー








「・・・なんなんだよ」

一方的に切られて、しかもその場にいるように云われてわけがわからない亜久津。
くわえて、目の前の女は泣いている。

「おまえもなんなんだよ」
両手で目を覆って肩をふるわせるばかりで返事も無い。
「んだよ、しらね―よ!勝手にしろ!」
はき捨てるように云ってから、大通りにでようとする。と、一歩手前で後ろに引っ張られた。
振り返ると、目の端に涙を湛えた少女が歯を食いしばって涙こらえながら、亜久津の制服の
袖をひっぱっていた。

ちょっとかわいい

「・・・ち、ちげぇよ!」
自分の思考にツッコミをいれはじめる亜久津からは動揺が見て取れる。
「ぁ、ぁの」
しかしてこの少女も号泣して混乱していて、亜久津の動揺に気づかない。
「さっきからなんだってんだよ!ぶっ殺すぞ!」
亜久津ににらまれ再びしおれる、千石曰く“ちゃん”は、
手のひらを亜久津に出した。

「けぃ、携帯を」

あ。

亜久津は手にもっていたままの携帯を見た。

「それならそうと早く言えよテメェ!ヤられてぇのか!!」

ちゃんをヤるのはオレ!」



聞きなれた声に亜久津が振り返ると、千石が髪を逆風に逆立てたまま、
息を切らせて仁王立ちしていた。
大通りで『ヤる』などと叫んだものだから一気に注目が集まる。
会社帰りのサラリーマンや、学校帰りにゲームセンターによった学生たちが
袋小路を覗き込む。
「ぁに見てんだ、コラ」
そこは正統派悪党亜久津君の活躍で人払いができた。
にらみをきかせる亜久津の横をすり抜け、千石はのもとに到達する。
ちゃん、平気?泣かないでいーってば」
学ランの袖口で頬を拭ってやる。
「千石くん・・・、わたしは」
「遊びじゃないよ」
髪を撫でながら額に軽くキスをする。
「遊びだったらね、オレね、すぐエッチしちゃうんだ」
「千石君」
ちゃんとはエッチしたいけどしなくても平気なのはオレが君にゾッコンラヴだからなのだよ」
は肩をときおりヒクつかせるが、ようやく落ち着きをとりもどしてきた。

「オレ女の子大好きだけど、女の子はちゃんの次に好きなの。わかりた?」

「・・・わかりた」

「よろしい!カワユイ!ゾッコンラヴ!」

高らかに宣言するとの唇に触れるだけのキスをした。
は恥ずかしそうに笑って、甘んじてそれを受ける
「んじゃ、帰りましょ」
一方的にの手をとって大通りにでようと踵をかえした。

「おや、あっくん」

千石は亜久津のことを完全にわすれていた。
「おまえら・・・バカじゃねーの」
「あっくんも混ざりたいー?」
「ざけんな」
一蹴してすたすた行ってしまう亜久津を、は千石の指をほどいて追いかけた。

「亜久津さん!」

体格の違う亜久津の袖に、は必死にすがった。

「どうしたのさちゃん!まさか・・・まさか亜久津に一目ぼれ!?」
「はっ!?」
なにげにドギマギ亜久津くん。
「違います」
鮮やかな否定。


バキッ

「携帯を返してもらえませんか」

「あ」

亜久津は手に握ったままのの携帯をポケットから出した。
ディスプレイが見事に割れていた。
バキッ、という小さな音の正体はこれだったのだ。
ついさっき不覚にも動揺したときに手に力がこもって割ったらしい。

「あー、いーけないんだーいけないだ」

睨みつけても千石に関してはだけは効果が無い。
「これは買ってあげなきゃ男じゃないよねー、というわけで一緒にショッピングへ行こう!」
「は?ふざけんな、オレが知るか」
「ぁ、はぃ。あの・・・いいんです、わたし・・・全然・・・かまわな・・・ひ」

再びひくりひくりと震えだす肩。

「なーかせたーなーかせたっ」

なぜか嬉々としている千石。
泣き出すその彼女。
困惑する亜久津。

往来の注目の的である。










結局、
折れたのはあっくんで、その日はちゃんとあっくんと一緒にお買い物をしました。
あっくんは、カツアゲしたお金を持っていたのでお金持ちだったので、機種変も食事も
全部おごってもらっちゃいました。
俺は亜久津にビビるちゃんを守って、ちゃんとの仲良し度もアップしました。
帰りはちゃんを家までおくって、あっくんと猥談して帰りました。

今日もラッキーでした☆         



おしまい。





おまけ