【第1回】

 

第110号(2009.1.1発行)

ヒヨドリジョウゴ

 
【掲載文】  

いつも通る路、冬枯れの竹やぶのそば、つるの癖に巻きつこうとせず、ただなんとなく誰かに寄り添って頼りげに、風が吹けば風と共に揺られて見え隠れ、逆光の木漏れ日の中でひときわ輝き、透き通るようなルビー色のこの果実、晩夏に白いかわいい花をつけたヒヨドリジョウゴです。行く冬を見届けるように、雪を帽子に早春まで命をつなぎます。

 

 

 
【説明文】  

自宅の坂の藪の中から見え隠れしているヒヨドリジョウゴの果実です。11月後半から早春に掛けて濃いグリーンから真っ赤な透き通った果実に変身していきます。その色はピッカピカで宝石のようです。冬枯れの竹薮の日陰の果実をこの季節独特の強い夕日の逆光の木漏れ日を浴び、そよ風に揺れている様は筆舌に尽くしがたい美しさがあります。もう直ぐこの赤い果実にも粉雪が降り 積もり今度は朝日に輝く美しさも見事です。

この草は、周りの雑草や、細い竹などに沿うようにして上に伸びていきます。周りの草が枯れれば自分も下に落ち、周りの草が揺れれば自分も揺れています。もちろん巻きひげなどなく、まさに「寄り添う」というのはこのようなことを言うのでしょう。8月後半から9月にかけて小さな白い花弁を持った花が咲きます。それも1ー2日程度でしぼんでしまうので、注目してなければ人の目に付くことはありません。

この野草がなかなか見つからないのです。そこで今年は大切に育てようと下草を刈り、支柱を立て紐でずり落ちないように縛ってやりました。するとどうでしょう。弱よわしくなり一向に成長しません。今度は虫がつき始め、花はついたら直ぐに落ちるし、葉っぱは穴だらけになったので、軽く殺虫剤を掛けてやりました。すると益々しおれるように弱ってきて花の2割程度しか実はつきません。日当たりもよくなったし、害虫も寄り付きにくくなったであろうし、周囲の草の状況にあわせて何度も何度も這い上がる必要もなくなったのに、です。しかし、この野草には 有り方迷惑だったのでしょう。自然のものは自然に、人の浅知恵など受け付けないのです。無駄なあがきはしないということです。すべて成り行きに任せているようで、1つのポリシーを持って生きている感がして、いつも眺めています。