【第2回】

 

第111号(2009.3.1発行)

リュウノヒゲ(ふきだま)

 
【掲載文】  

エメラルドグリーンからコバルトブルーへ色が変わり「ふきだま」とよんでいました。土手などで見つけることができますが、最近は少なくなりました。子どもの頃、肥後守と「しのべだけ」で、この実を弾にしたふきだま鉄砲を作り野山を駆け巡ったのも遠い思い出です。肥後守は学校にも持って行ったし、遊ぶときはポケットにしのばせている男の子の必需品でした。鉛筆を削り、工作をし、研いだり、手を切ったりして手加減を覚えていったのでしょう。

ふきだまとは、リュウノヒゲの実のこと、肥後守とはナイフ、しのべだけとは矢竹のこと

 
【説明文】  

----この項「周辺の草木の花実」より一部転載----

ふきだま鉄砲の実です。本当の名前は「リュウノヒゲ」の実です。田んぼの土手などに自生している5−8cm程度の細い密集した葉っぱを掻き分けると見つけることができます。が、こんな 、なんでもない実ですが最近はなかなか見つけるのが難しくなってきました。

この実は、透きとおった空色から紺色のものまであり、宝石のように実に美しい色をしています。

子供のころ、今の時節になるとこの実は「ふきだま鉄砲」の弾になります。青い皮をむくと硬い種が出てきます。

この時代の男子はほとんどが「肥後守(ひごのかみ)」というナイフが必需品です。駄菓子屋などで売っており、いつもポケットには入っていました。切れ味が悪くなると砥石で研ぐこともできます。勿論学校にも持っていき、鉛筆を削るのにも使用します。この肥後守で笹薮で「 シノベ竹」を切って竹鉄砲を作り野や山を駆け回るのです。鉄砲の弾には、リュウノヒゲ(当時はふきだまと呼んでいた)の実のほかに、春になると「杉の 花(花粉症の元)」を使い、その他の季節は新聞紙を濡らしてちぎって詰めていました。今では考えられないことですが、新聞紙をちぎって口で咬んで唾液で濡らしていたと思います。勿論インクの匂いと味がしたものです。

それぞれの弾の大きさに合わせたシノベ竹が要ります。特に杉の実は2ミリ程度で実に繊細な加工を必要とします。こんな鉄砲でもびっくりするような音が出て、煙まで出るから驚きです。

この単純な遊びの中にも、ナイフで鉛筆を削る、物を削る、切断する、寸法を図る、ナイフを研ぐ、空気は圧縮されることを知る、竹と木の性質を知る、ピストンとシリンダーの関係を知る・・・等、理科、科学の知識がいっぱい含まれています。

先日ある機会に、小学校のサポーターをしている人が、竹とんぼなど工作するからナイフか小刀を持ってくるようにと子ども達に言って、先生があわてて訂正し、後で注意されたと言っていました。時代の流れを感じます。

今の子ども達、いや父兄も含めて鉛筆をナイフで削れる人がどの程度いるのでしょう。ちなみに私の家では草刈鎌で夜、明日の鉛筆を削っていました。

(このナイフの特徴は、ジャックナイフのように刃が飛び出したとき刃が固定しない。折りたたんだときまたは刃を出したときのロック機構がなくブラブラしており、使用するときはチキリと呼ばれる刃部のヘッド部分を押さえながら使うカンタンな構造。それだけに器用さを必要とした)