【第3回】

 

第112号(2009.5.1発行)

ウグイスカグラ

 
【掲載文】  

ここは青貝山山頂、南に箕面森町、西に東ときわ台から大阪湾がかすんでいます。少し東へ稜線をたどれば、南の斜面はオンコの谷。昔、谷は一面クヌギ林でした。真冬でも谷を流れる風は温かく、ここで炭を焼き牛の背中に揺られて長尾街道を西へ池田方面に運ばれていたといわれています。吉川から上止々呂美への間道でもあったところです。今は檜や杉林に覆われ、かすかに漏れる陽光の中に朽ち果て苔むした炭焼窯がその面影を残すのみです。早春のクロモジの黄色い花に混じって、サーモンピンクのちっちゃな花が微風に揺れていました。ウグイスカグラです。桜やツツジのように遠くからわからず自己主張しない謙虚な姿が魅力です。

 
【説明文】  

豊能町及びその周辺地区は石炭、石油にエネルギーが転換されるまでは「炭」の生産が冬の主な産業でした。又、その品質は高く評価され「池田炭」(池田地方に問屋があったのでその様によんだと思う)として高く評価され広く流通していました。もちろん原木採取から製品まで運搬手段は人力、牛馬によるものでした。この あたりいったいは長老によれば、見渡す限りクヌギ、コナラの広葉樹林で山は手入れされすばらしい里山だったそうです。原木は8年サイクルで伐採され、翌年新芽が出た後数年は下草刈りが必要でした。

今、その山を歩けばうっそうとした杉、檜の林に変わっています。 そして朽ち果てた炭焼窯が散在し、その林道もシカやイノシシの通い、かろうじてその痕跡を残し時代の流れを物語っています。

そんな中、わずかな空間から差し込む陽光を受け、ウグイスカグラの小さな花が時折風に揺られているのが印象的でした。3月から4月に掛けて花が咲き、その花尻から青い実がつき5月には真っ赤になります。しかし、この赤い実は鳥がついばむのか、なかなか数を見ることができません。