有店舗仮想商店街に関する研究

研究の目的

対象地区の調査分析

有店舗仮想商店街の提案

結論


研究の目的

 現在、岡崎市康生地区商店街は、総合病院・中央郵便局・職業安定所等、集客力のある核施設が次々に郊外へ移転し、モータリゼーションや郊外型の大型ショッピングセンタ等の出店激化の影響を受けて、空洞化、衰退化の危機に瀕している.
本研究では、岡崎市康生地区商店街の活性化を目的とし、インターネット上での情報ネットワークを利用した有店舗仮想商店街構想という視点から研究するものである。
 現在、インターネットによる利便性は「いつでも」「どこでも」といった地理的、時間的制約からの解放が、最大の利点として考えられている。
しかし、その反面地域性や人間性といった部分が阻害され、フェイストゥフェイスの対面的コミュニケーションの稀薄化が問題になってきている。
 本研究ではこのような問題意識に立って、これまでの行政中心的な対策ではなく、商店街が持つ人間性や地域密着性を考え直し、康生地区商店街特有の新たな有店舗仮想商店街構想の可能性について検証することを目的とする。


対象地区の調査分析

 現在の康生地区商店街周辺の現状を把握するため、康生地区周辺住民540人(店舗経営者200人)を対象に意識調査を行った。その結果を年齢別にまとめたものが図1,図2である。

図1 各情報の年代別需要(図2)

図2 ネットショッピングに対する需要(図G-1)
図3 1日の商店街店舗の平均入店者
図A-3-1

表1 現存するバーチャルモールの代表例
高島屋バーチャルモール 単一店舗型 大型の百貨店等に多く、イベントの紹介や、サービス情報が主であるあとは、カタログショッピングと変わらないものがほとんどである。
質屋バーチャルモールBMM 専門点集合型 各地に点在する特定の業種を扱う専門店を集めたものである。決算方法が各店により異なる場合が多く面倒である。
大分市中央商店街バーチャルモール 地域集合型 地域の活性化を目的とし、主に情報発信や顧客からの声を集める場として構成されている。
日本情報サービス(株)バーチャルモール 無特定店舗集合型 各地に点在する不特定の業種を集めたもので、リアルモールを持たない店も多く、信頼性に欠ける。

 現在の生活情報に対する需要については、全体的にイベント、医療、公共に関する情報の要求が多く、また高齢者には金融に対する情報サービスの需要が多く見られた。また図2のインターネットショッピングに対する需要については、住民の全体的理解は低いものの、若年層と高齢者に比較的需要を求める意見が見られる。
 また商店街の一日平均入店者数では、10〜29人が最も多く(図3)、接客のない空き時間が多い事が伺える。
こういった状況にも関わらず、商店街活性化に対する地域の意見は、「駐車場の確保」「品物の充実」等、商品の魅力では勝てない大型店特有の戦略を真似るものが多い。同時に、商店街の地域性を生かした意見が非常に少なく、商店街の抜本的見直しの必要性を示唆している。

 すでに大店舗商業施設ではヴァーチャルモールを構築し、バーチャルショッピングシステムを開発しているものも少なくない。その代表的な例を紹介したものが表1である。これらのシステムは、現在の電話回線によるインターネット環境を基準に構築されているため、内容もインターネット上のカタログショッピングといったものに限定されているものが多い。
 現在注目されているメディアの一つであるCATVの岡崎市におけるカバー率は8割近く、これらは電話回線の10〜100倍以上(192kbps〜10Mbps)の伝送速度を可能にする。今後CATV、ADSL、衛生通信等の通信インフラを利用することにより、広範で高次なコミュニケーションを可能とする。その結果、商店街の特徴である人と人とのコミュニケーションや、専門店の知識情報サービスといった生活情報をリアルタイムで提供することも可能であると考えられる。


有店舗仮想商店街の提案

 調査分析の結果、岡崎の商店街周辺は地価が高いなどの問題点はあるが、いまだ徒歩圏内に多くの購買施設や公共施設を持つなど、高齢者にとって中心街の人気は高く(図4)、また行政の政策として、中心街での高齢者の生活を促進する傾向が見られ、今後の高齢社会における康生地区商店街の需要は拡大すると思われる。

図4 中心街の高齢者に対する住環境意識(図E-2)

 また商店の空き時間の有効利用と、商店街や地域の情報発信源、特に高齢者を対象とした医療介護、生活情報提供等をリアルタイムで繋ぐ、地域密着型の複合的サービスがこの地域での必要条件として位置付けられる。
以上の条件に対する具体的提案をまとめると以下のようになる。          

(1)空き店舗対策としたコミュニティ空間の提供
・商店街を利用した買い物客の休憩場所   
・商店街の商品検索用店舗案内
・公益的な行政情報サービス
・コミュニティ空間としての情報ネットワーク端末の設置
・観光客を対象とした岡崎の文化、歴史、生活、土地の案内所

・地域住民の方との情報交換の場所 
(2)空き時間を利用した商店の情報提供サービス
・リアルタイムによる店舗情報
・店の人と直接会話による注文の受注、康生地区
限定の商品配達サービス
・店頭の商品の特徴を生かした使い方の指導
・顧客の身長等の個人情報をコンピューター に入力し商店の衣料品をデーター化し、コンピューター上での試着、コーディネイトサービス     
(3)高齢者の精神的バリアフリーサポートシステムの構築   
・医療機関、保健施設からのコンピューターによる自宅での問診・健康管理システム
・インターネットと従来のメディア(電話、FAX、テレビ)を連携させた使い安いシステム
・余暇を充実させる福祉及びイベント情報サービス
このように、インターナショナルなものとして定着しているインターネットに地域性を取り込み反映させることで、新しい商店街における地域コミュニティを形成する。


結論

 岡崎市康生地区商店街の活性化の方針として地域の固有性に基づいた情報ネットワークによる新たな有店舗仮想商店街構想について、現地調査、地域商店街、地域住民へのアンケート、岡崎市商工会議所や各関連活動団体とのヒアリングを通し検証を行った。
 その結果、商品情報に加え超高齢化社会に対する地域問題等を含めたコミュニケーションを前提とした行政、商店街、周辺地域の生活情報を提供する複合ネットワークの必要性が明示された。
 本研究は商店街の活性化に対して,コンピューターネットワークを多角的、複合的に扱う有店舗仮想商店街構想として提案し、岡崎市康生地区商店街活性化の新しい方向性を提示するものと考える。



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