階層別利用形態に関する研究

研究の目的

研究方法

現状の調査

都市計画上の調査

住民意識のと調査

結論 


 

研究目的

 岡崎市は人口33万人有し、道路幅など周辺環境が整っているにも関わらず、その商業の中心地である康生通り沿線の建物は全体的に低層の建物が多い。
 一般に、都市の空間利用形態はそこにある建物の階数とその店種に大きく影響している。また建物のそれぞれの階は通風や日照にも大きく関係し、住民の生活や心理にまで影響する。しかし、これまで階層別利用形態については、一般の平面計画の中ではさほど重要視されていなかった。
 本研究は、岡崎市中心の商店街を対象に、建物の階数による利用状況に注目し、都市の有効性について考察することを目的とする。


研究方法

 研究の進め方は、まず岡崎中心街の現状を知るため、建物の高さ、階層別の利用のされ方の実態を調べる。次に路線価や建築基準法、都市計画法をもとにこの地域の法規制について調査する。さらに空間利用に関する住民の意識を調査するためにアンケートを行い、中心街での空間利用に対する意識と現状の利用のされ方とを比較をする。これらの結果をもとに岡崎市中心街の現状を評価し将来の展開に対する方向性を示唆する。


現状の調査

 巨大なデパートと比べ康生商店街は低層の商店が連なり、空間利用に関しては上階を住宅や物置に利用しているため、小さな床面積で営業しているところが多い。業種別では1階に日用品店、2階以上ではサービス業や事務所が多く(表1)その配置も比較的分散している。(図1)
 次に対象地区の建築物の築年数を調査したものが図2である。この図からも明らかなように、建物の老朽化もかなり進んでいることが分かる。従って商店街の活性化のためには立て替え時の都市的視点での方針を明確に作る必要もある。

表1 商店街階層別利用業種状況

A西康生通商店街発展街 B岡崎東康生町 C籠田商店街 D伝馬通商店街 E伝栄会 F岡崎銀座商店街 G連尺通商店街 

H康生通一番発展会 I豊橋通発展会

                 図1 商店街階層別利用形態分布                
食料品 飲食店 日用品  公的施設 サービス業 趣味  その他の業務

1階利用状況

2階利用状況

3階利用状況

表2 岡崎中心地主要地点路線価

1平方メートルあたり
JR岡崎駅前 180,000
名鉄東岡崎前 335,000
中心街(シビコ東) 340,000


都市計画上の調査

 岡崎の中心街の用途地域は商業地域で容積率600パーセント、建ぺい率80パーセント、防火地域、駐車場整備地域、戦災復興土地区画整理事業区域であり、その商店の中心である伝馬通りの道路は約20mあるため、建物の高さの制限は道路斜線からは少なくとも50m、隣地斜線でも31mの許容となり、10階近い建物が建つキャパシティを持っている。
 また地価を調べたところ、階層別の利用の規模と地価の高さが比例していない(図3)。岡崎で乗車人数が特に多い名鉄東岡崎駅やJR岡崎駅の周辺の地価に比べ、康生通りは岡崎市のなかでも特に地価の高いところである。(表2)これらにより1フロアで商業をするには経済的とは言えない。               

図3 岡崎市中心街路線価分布
(1平方mあたり)

図4 2階以上の店舗としての利用意識(表A-6)

                         



住民意識の調査

 康生地区商店街において1階のみを店舗として利用している商店主200人に対し、将来2階以上を店舗として利用したいかという質問に対し回答を求めたところ、図4に示すように「利用するつもりはない」という回答が55.4%を示した。ただ3割以上の無回答者があり、方法によっては利用する可能性を持っていると考えられる。


結論

 以上の結果から岡崎市中心商店街は、同業種が連係することによる相乗効果が初期から取り入れているにもかかわらず有効に機能していない。その理由の一つとして空間が有効に利用されていないことが上げられる。
 また都市計画上では現状を上まわる容積の設定がされており、地価も土地のポテンシャルを反映して高価なものになっているが、住民はその意識は低く、現状のような使われ方につながっている。また建物の老朽化も考えると商店街の活性化のためにもその物質的な面での変革も視野に入れておく必要がある。また現状においても1、2階の有機的につながった空間の利用形態は可能であり、そのためには住民の意識の向上も必要であると考える。



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