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『見せつけられて…』




1:金曜の午後
(夏の一歩手前の日差しで気怠い熱さの残る教室内…)

「ねえねえ美香(みか)〜」
「な〜に、博美(ひろみ)〜?」
「今度の土日、空いてるでしょ?」
「う〜ん… 一応。」
「じゃあさ…」

ゆとり教育によって産まれた土日連休を利用して、連休中は両親がいない美香の家で
泊まりがけの勉強会を開くことを私は提案した。
二つ返事で美香のOKが出た。
どうせ連休中はお互いすることもないんだし、こうやって友情を深めるのが青春なんだろうし。

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家に帰って美香の家に行く準備をする。
誰も居ない家の中、着替えとパジャマを適当な鞄に詰め込む。
あ、お兄ちゃんに言っておかないと…… え〜とケイタイの番号は……

「あ、お兄ちゃん?」
「博美か? どうした?」
「私ね、美香の家に泊まることにしたから。」
「美香って…… ああ、あのポニーテールの?」
「そうそう。 もしかしたら途中で帰ることもあるかもしれないけど、
 とりあえず今日の晩ご飯は要らないから。」
「わかった。 二人にはなんて言っとく?」
「……。 もし帰ってきたら言っておいて。 いま言ってもどうせ関係ないだろうし。」
「……ん。それじゃな。」


お兄ちゃんが言った『二人』とは父と母のこと。
二人して根っからの仕事人間で、私たちが手の掛からない兄妹に成長したと見るや、
滅多に家に居着かなくなってしまった。
休日返上で仕事をしていた方が気の休まるような人に、
元から子育てなんて出来るとは思えないけど……

まあいいや。
あんな人たちなんて、今は関係ない。
あ、それと宿題も入れておかないと…… ゆとり教育とか言いながら結構あるねぇ……

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「じゃ、始めますか。」
美香の部屋の机に宿題を広げ、座布団に座って勉強を始める。

でも結局は女の子同士。
勉強なんかは半ばそっちのけでおしゃべりしてばかりで、
勉強会とは名ばかりのお泊まり会になっていた。
(まあ最初からそのつもりだったけど。)

晩ご飯もお菓子で済ませちゃったし、後はどうしたもんだか…



ガチャ
いきなりドアを開けて入ってくる人。
それは美香のお兄さんで俊久(としひさ)さんだった。
がっしりしとした体格で、おてんばな美香の頼れるお兄さんって感じがする。
「どうも…」
一応、軽く会釈しておく。

「あ、お兄ちゃん。 さっきお母さんから電話あったでしょ?なんて?」
「仲良く留守番してろってさ。 いつまでも喧嘩ばかりしてるガキじゃないっての。」
「あはは。」
美香の両親は夫婦水入らずで旅行中だとか。

……どこの親も同じ、か……

「美香とお兄さんって、そんなに喧嘩してる方だったの?」
「昔はね。 今はこの通りの仲良しだけどな。」
お兄さんが答えて美香の肩を抱く。



「ふ〜ん… 私のお兄ちゃん…久典(ひさのり)ってんだけどさ〜
 これがなよなよしててなんだか頼りないの。どっちが年上なんだかわかんないぐらい。」
「へ〜… そう、なんだ…」
「まあそれでもちゃんと社会人してるからマジメな方なんだろうけどね。」
「それ、現在無職な俺に対する当て付け?」
「え? あ、いやそうじゃないんだけどね…ハハハ…」

? 美香の顔が赤い。
肩を抱いているお兄さんの手を掴んでもじもじしてる。
これって、もしかして……

「美香、ちょっと……」
美香を部屋から連れ出して、秘密の相談。

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「もしかしてさ、美香って、お兄さんの事……」
「え!? べ、別にその……」

やっぱり。 これは確実にきてる。
「美香はお兄さんのことが…好きなんだ。」
「……。」
黙ったまま頭を下げる美香。



「もう、ハッキリ打ち明けちゃいなさいよ。 好きなんでしょ?」
友人としてはこういうのを推奨するのはちょっとどうかと思うけど、
所詮他人事なので火に油を注いでしまう。

いけない事とわかっていながら興奮してしまうのは……
他人事だから? それとも私も妹だから……それは無いか。

「私のお兄ちゃんなんか、ちょっと甘い顔しただけでイチコロなんだから。
 ちょっと色目使えばイケるわよ。」
「……。」
「じゃあ… もしマジになってたら、私が冗談だったって言ってあげる。
 それなら大丈夫でしょ?」


「うん… そうだね…

 でも………… 私、本気だから…」
「うわお… そんな思い詰めたよな顔しないで。 笑って、スマイル。

 じゃ、戻ろうか。」

でも、その時に私は気付いていなかった。
うつむいた顔を上げて、こちらを見たときの美香の目が… 暗く…澱んでいたのを…

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少しの間、静寂に包まれている室内。
宿題をして、まじめに取り組んでいるフリをしながらタイミングを見計らう。

「ふう… 今日はこのぐらいにしときしましょ。」
「うん……」

「なんだ? 今日の美香はやけにおとなしいな。
 なんか隠し事でもあるのか?」
美香のベッドに腰掛けた俊久さんが話しかける。
やっぱり変だよね。 いつも元気な妹がうつむいてると。

「……。」
美香がこちらを見ている。
……もうその時が来たようだ。 ああ、鼻血出そう。



「……ところで俊久さん、ここで私があなたのこと好きだって言ったら、どうします?」
「はい!?」
「ちょ… 博美ちゃん!?」
驚いてる驚いてる……ムフフ

「はは…冗談冗談。

 じゃあ、美香がお兄さんのこと好きだって言ったら……」

「……それも、冗談なんだろ?」
「……。」
「美香〜?」



美香が立ち上がって俊久さんに近づく。
「私、ね… お兄ちゃんが…  好き、なの…」
そしてそのまま戸惑う俊久さんを襲うように……キスした。

「うわあ……」
いくら自分が煽ったとはいえ、ここまで本気だとは思ってなかった。
美香も結構やるねぇ…

しかも俊久さんの方も、実の妹から迫られてるはずなのに…結構熱く応じている。
こりゃ双方かなり思い入れてたみたい…



「……お兄ちゃん、セックスしよ……」
…………なぬ?

「ああ。 今日は観客も居るし、熱くなれるな。」
か、観客って… 私!?

「……博美ちゃん、ちゃんと見ててね……」
ちょちょちょちょちょちょちょちょ

「ちょっと待ったー!!」
思わず大声を張り上げてしまう。

「な、な、な、なんでいきなりそーなるのよ!?」
いそいそと脱ぎ始める二人を前に説得を試みる。
でも止める気配は全く無さそう。


「だって、好き合ってる者同士がセックスするのは当たり前だろ?」
「あ、あんた達兄妹でしょ!? 近親相姦がいけないことだってぐらい知ってるでしょ!?」
「博美ちゃんが勧めたんじゃない。」
「ここまでやれとは言ってな〜い!!」

そう空しく言う前で、二人はさらに熱く絡み始めていた。
「ちょ、ちょっと……」
「博美ちゃん… 見ててね。
 私とお兄ちゃんが、愛し合うトコ……」

もはや止めても無駄なのか…… もはや二人は私を興奮するための観客としか見ていない。
二人が終わるのをおとなしく待つしかないか…
諦めて座布団に座り直す。 なるべく、二人を意識しないようにして……


けど…… 見てて、と言われたから見る訳ではないけど… やはり嫌でも気になる。
なんせ目の前でセックスが行われているのだ。
しかも兄妹での… 禁忌の近親相姦が……

「博美ちゃん、ホラ見てよ。 私がお兄ちゃんを銜えちゃうところ……」
まだ挿入してなかったらしい…
見せつけるように、こちらに体を向けて性器を見せつける……


「んんん……」
……スゴイ。
自分にも付いてる、指が入るかどうかの穴が……
あんなに、拡がって…… 入っていってる……

「はぁぁ… お兄ちゃん…気持ちいいぃ…」
口から涎すら垂らして美香が喘いでいる。
ベッドが壊れてしまうぐらいに腰を振り立てて、
そんなに…気持ちいいんだろうか…

知らず知らずのうちに体がむずむずしてくる。

美香が、お兄さんと、セックスしている…

美香が、 お兄さんと、 セックスしている…

美香が、  お兄さんと…


「あは…… 博美ちゃん、よかったらオナニーしてていいよ〜」
「え…?」
「だって、見せつけられて…感じてきてるんでしょ?」
「……。」
そんなハズない。 絶対にあるわけない。

でも熱くなってる体が、微かにそれを否定する信号を発していた。

「わ、私の事なんていいから… 早く済ませちゃって…」
「んもう… 博美ちゃんが勧めたんで、

 ふぁああああ!」
「ひいっ!」
美香が急に叫ぶかのような声を張った。
私も驚いてしゃっくりのように息を呑む。


「ど、どうしたの美香!?」
「……ちょっと、イっちゃった。 お兄ちゃん、気持ちいいんだもん…」
「へへ… そりゃ毎日してるもんな。」

毎日…? 今日が、初めてじゃ、ない?
「……あ、あんた達、もしかしてずっと前からこんな事を……」

「あ、バレたか。」
「……そうだよ。 私達、ずっとずっと前からセックスしてるんだよ。

 兄妹でセックスするのってね、すっごく気持ちいいんだよ。

 それがしちゃいけない事だって意識すると特に、ね……

 ごりごりってね、膣が擦られてね… たまらなく気持ちがいいの。

 でね、きゅっ、きゅっ…てお尻に力を入れてアソコを締めるとね……」


「うおお…」
ぶるぶるっと二人の体が震えだした。 なに? まさか……
「んはぁ…… 今ね、お兄ちゃんが射精してるんだよ。
 私の中に、いっぱい精液出してるんだよ。」
「な…!」

「いっぱいいっぱい出してるんだよ。
 もしかしたら妊娠するかもしれないけど、それがすっごく気持ちいいんだよ。」

信じられない。こんなおぞましいことをされてるのに、それが気持ちいいだなんて……


「……もう、帰っていい……?」
「あれ? 博美ちゃん、帰っちゃうの?」
「当たり前でしょ! こんな、こんな事…兄妹でなんて……

 そんなのして、見せつけて悦んでるなんて!! あんた達、変態よ!!」
急いで立ち上がって荷物を掻き集めて部屋を飛び出す。
そうだ、最初からこんなのに付き合う必要なんて無かった。
なんでそれに早く気付かなかったのか……


「博美ちゃん、濡れてるでしょ。」
「!!」

体半分が部屋から出たところで背後から声がかけられた。思わず振り向く。

「だってほら、座布団。」

私が座っていた座布団に僅かに染みが残っている。
汗…だけとは言えない。 確かに私のパンツの中は……湿っていた。



「博美ちゃんだって… 濡れてた。

 変態なんだよ。

 私とお兄ちゃんのセックスを見て、自分と重ねて濡らしてた変…」

「違う! 私は、変態なんかじゃない!!」

バンッ!!

乱暴にドアを閉めて部屋を飛び出す。

あとはどう家に帰ってきたか、よく憶えてない。

2へ続く