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『もう一人は…』

掛け布団を勢いよく捲り上げたて、そこに見えたのは

たわわに実った白桃と、白い和紙にぽつりと浮かぶ水墨画の草むらだった。


「は……?」


いやつまりそのこれはあれだようん…………



妹の、裸だ。 いや丸裸ではなくて、はだけられた衣服から覗く、汗の浮いた肌のエロチズム……

沸騰した頭脳で、腕に巻き戻しを命じる。 ゆーっくり、捲り上げた布団を元に戻していく。


…………目覚めてはいないようだった。 そのまま、音を立てないように部屋を出る。




一階に下りてきて、水を一杯飲んでもまだ治まらない。
まるで心臓がガソリンエンジンみたいにフル回転し続けている。

あ、あいつ、なんて格好で寝てるんだよ……
制服は半ば以上はだけていて、一つ手をかければそのまま全裸になってしまいそうだった。

脳裏に浮かんだ妹の半裸体……
あの胸…… 妹の同級生どころか、俺と同年代の女子と比べても1・2を争うだろう大きさだった……
俺と同じ物を食べているのに、みるみる大きくなったなぁとは思っていたが……
俺の手と比べて…… いや、触れてみないときっとわからないだろうが。


っつ、つーか、今までもブラもパンツも履かずに寝ていたのか? 俺の部屋で、俺の布団で?!
いや、そんなワケないよな。 夜は普通に自分の部屋で寝ているわけだし
あえて俺の部屋で裸になる必要なんて無いだろうし……

などと思い返していると自らの下半身が激しく自己主張していることに気が付いた。
「……ちっ」
舌打ちしてみるが何か打開されたわけでもない。
処理しようにも自分の部屋には勃起の原因である妹が寝ているわけだし、
まさか白昼堂々と居間でするわけにもいかない。

もう一つ舌打ちをしてから、とりあえずソファーに座って気持ちが落ち着くのを待った。


「ふわ〜〜〜 おはよ〜〜〜」
間延びした声の妹が降りてきた。 やはりさっきので目が覚めたらしい。
……無論制服はちゃんと着直されていたが。 ちゃんとブラとパンツはしているのだろうか……

「ただいま〜〜!」
もう一つ元気の良い声が響き渡る。 ……母だ。親子揃ってまったく……

「あらどうしたの? 二人共制服のままで。 早く着替えなさい。」
「いや俺は…」
「そうする〜」
間延び声を発した妹が、風呂場へと向かう。 どうやら一風呂浴びてから着替えるようだった。


……つい、後を追うようにして脱衣所に来てしまった。
妹は浴室にいて、鼻歌を上機嫌に歌いながらシャワーを浴びている。

……下着ドロな気分で脱衣カゴを見てしまう。
目的の物はすぐに見付かった。 薄ピンク色のブラとパンツ……
心なしか湿っているような手触り。 さっきまで、妹が着けていた……

いや確認だようん。
ただ普段から妹が下着付けていないのではないのかと疑っちゃったりなんかはしていないわけで。
しかし兄としては妹の動向が気になって気になって…


ガララッ と音がして風呂場の戸が開いた。
現場が現場だけに、びくっと身がすくんで思わず手をポケットに突っ込んだ。

「あれ? お兄ちゃんもお風呂?」
「ああいや…    !!」
今度は全身から湯気と湯の雫を滴らせた妹が俺の目の前に出現していた。
…もちろんタオルで体を隠しながらだが。

「俺は…いいよ。 うん。」
先ほどよりは露出が少ないが、風呂上がりで髪も濡れている妹の姿は…実に色っぽい。
「……じゃあ出てってくんない? 体拭きたいし着替えるんだけど。」
「あ、あああそうだな。」
ピンク色の肌を横目に、たじたじ、と脱衣所から逃げ出す俺であった。



…結局何をしに行ったのか自分でもわからない。

ただ明らかなのは、妹は普段はちゃんとブラとパンツを着けていて
でもさっき俺の部屋で見たときは着けていなくて
…いまは着替え中だから着けていなくて

そしていま、ポケットに突っ込んだままの俺の手に
何故かその問題のパンツが残されていることだけが、確かな事実だった。



結局そのあと自分の部屋に戻って来たのだが……
さすがにさっき会った妹の裸体で己の勃起を処理することはためらわれた。

そう思いつつもなぜか体はベッドに横たわってズボンを半脱ぎにしているのだったりするのだが。

「ふぅー…」 とため息を付いて深くを息を吸う。
なんだか、甘いような酸っぱいような匂いがするな… 布団からだろうか。
自分の匂いではない気がする… 妹の、匂い…なのだろうか。
さっきまでここで寝ていて、そういえば汗まみれだった、妹の……

その胸をくすぐる匂いに、勃起が激しく反応していた。



「う、うおぉ…」
取りだした竿を掴み、少し手で扱いただけで呻くほどの快感が走る。
それほどに身も心も興奮しきっていた。

なぜこんなにも自分は興奮しているのだろうか。
妹の胸を見たから?
風呂上がりの妹を見たから?
この布団に残っている妹の匂いを感じたから?

……ふと気付くと先ほど持ち帰ってしまったピンク色の布が目の前にあった。


妹の、下着…
汗ばんだ俺の手で握りしめていたからだろうか、さっきよりも湿っている気がする。

「うぐ、うぐぁぁ…」
自分の鼻の頭へとその布を押し付け、染みついている匂いを嗅ぐ。
まるで変態みたいだ。 妹の下着で、自慰をしている兄なんて…
いや変態そのものだ。まるでこのベッドの下にある本の、兄達みたいな……

そんな己を軽蔑する考えとは裏腹に、己を慰める手はさらに速度を増していく。


「うぁ、う、あ、あ……」
爆発した快感と共に放出する液を、反射的に手で押さえる。

俺はいま、妹の匂いで自慰をして、絶頂してしまったんだ……

「あ、ちゃ〜〜……」
……押さえていた手を離してから気が付いた。
妹の下着が、俺の目の前から消えて、股間に押し付けられていたことに。
脱力感と罪悪感…そしてなんだか情けない気持ちが、脳内に拡がっていく。



ティッシュで残り汁を拭いて、汚してしまったパンツを持って風呂場へと向かう。

「はぁ…」洗面台で一人ため息を付いた。
なんとか大部分の粘液は取れたが、やはり布自体に染みこんでしまっている。
しょうがないから、もうこのまま洗濯機で洗ってしまおう。
と濡れたパンツを籠の中の洗濯物に押し込んでいく。

ついでに風呂に入るか… と服を脱ぎ始めた。


「きゃ…!」 「あん?」
黄色い悲鳴と間抜けた声が交差した。
間抜けた声はもちろん俺。 では黄色い悲鳴は…

「お、お兄ちゃん……」
すっかり私服に着替えた妹がそこにいた。
なんでここにいるんだ?という思いよりも、
さっき俺がズリネタにしてしまったことの方が大きくて、一抹の罪悪感が心に突き刺さる。

「お、お風呂入るの? 入らないんじゃなかったの?」
「…やっぱり入ることにしたんだよ。 寝惚けてたら汗かいちゃったし。」
「そ、そう……」


…なんかさっきとは逆だな。 まあ別に俺は裸なんて見られてもあまり恥ずかしくはないが。
「……あの、出てってくんない? 下も脱ぎたいんだけど。」
何故か俺の半裸体を見つめて固まっていた妹に呼びかける。
「あ、うん……」
顔を赤らめながら、たじたじと出ていった。まるでさっきの俺みたいに……

何やってんだか。俺もアイツも… 頭が冷静になるまでしっかり風呂に入るとするか…


「び、びっくりした〜〜……」
なんとなく入った脱衣所には、なぜか半裸のお兄ちゃんが……
さっきオナニーのネタに使っちゃったから、尚更びっくりした。
その前に脱衣所にいたお兄ちゃんを見ても、あまりびっくりしてなかったのに…
やっぱり、その、裸、だったから……?

男の裸を見て驚いちゃうなんて、やっぱり女の子だからかな…
自分の裸を見せた時も、こんなにドキドキしてたのかな……
おにいちゃん、は……


「あ、れ…」
何故か逃げ込んだ先はお兄ちゃんの部屋だった。
そこになぜか漂う違和感を感じる……

「なんだろ、この、……」

フラフラと、吸い寄せられるように…ベッドへと体が向かっていく……


糸売く!!!