なぜなに!? 未熟の天使

序文という名の言い訳

 「未熟の天使」には色々と”あからさま”から”若干分かりづらい”伏線やら表現があちこち紛れ込んでおります。ぶっちゃけ普通の人には『単に推敲が不完全なだけでは?』と思わせる様な出来の悪い表現も多く、下手な文章との相乗効果で読みづらさをいっそう引き立てる凄惨な事態となりはてています。
 なので本作ではそういった分かりづらい伏線のネタバレをすると同時に、作者が何を書きたくて結果上手くいっていなかったのか、今一度振り返ることを目的とします。
 ……などとカッコイイ(?)ことを言ってても意味が分からないのは自明なので、正直に言うと自分自身の為の備忘録っす。むしろ本当にちゃんと全部の伏線回収出来てたか、何年経って確認してるんだと……

「未熟の天使」について

第1話 [プロローグ]

 この辺は拙著の『未来からのメッセージ』にある通り。そして以前Galleryにあった『Angel09』への壮大な伏線になります。

STP-103

 みぃの型番のSTP-103の意味は、"ST"は適当。"P"はプロトタイプ、103は単に3番目って事です。何で100から始まっているかは、特に意味はありません。

疑似人格OS

 みぃの動作原理などは、完全にオリジナル(つまりは妄想の果ての産物)であるわけですが、そもそも作者はシーズウェアの『luv wave』というゲームに多大なる影響を受けたままネットワーク技術者になっちまったヲタでありまして、その辺の設定やらを作品全体に無意識にリスペクトしている(敢えてパクリとは言わないで!)可能性は多分にあります。
 だいたいluv waveのアリスも良い感じにすっとぼけた性格をしていたし、知らず知らずのうちにパクっていたのか!?(汗) まぁ、作者は無から有を生むというのは極めて不得意としているところでありまして(職場でやったスキルチェックでもそういう結果が出ている)、そもそもクリエーターの才能などありやしません。期待するのがハナから間違いというヤツであります。ちなみに個人的に思うに、みぃは田中ユタカさんの愛人[AI-REN]に出てきた”あい”に影響受けてるんじゃないかなーと思うのですよ。性格とか全然違うけど、個人的にはノリとか物腰が似てるんじゃないかと。
 ちなみにシステムガイアとかガーディアンとかの名前は土門弘幸さんの作品に出てきたような気がしますが、その辺もリスペクトという事にしておいてください……。名前がモロに被っちまいましたよ、気がついたら(涙)
 ところで作者はおもしろがってパクっただの似てるだのと書いておりますが、意図的にパクったワケでは無いのでご注意を。そのくらいのプライドと矜恃は持って駄文を作ってるんです、Webに自作の痛いデータを上げる人間として。単に、後で似てるって気がついてもめんどくさいから直さなかっただけです。

「何で私がそんなことを!!」

 たけちんがみぃを押しつけられたときに最初に言った台詞。
 実はこの物語を書き始めたとき、たけちんは喜んで(エロ的な意味ではなく)みぃの世話をするという設定だったのですが、嫌々ながらやった方が面白いかな〜?とその場で考え、以降彼らの関係はビミョーにギクシャクしたあげくに結局ラブラブになっちまったというわけです。むしろたけちんツンデレであると。

たけちんの観察日記

 最初は事務的な事ばかり書いていたのに、そのうち(本人気づかず)みぃが大好きになっちゃったたけちんは、本来みぃの成長過程を克明に記す為の観察日記に、単なる感想文+如何に自分がみぃが大好きなのかをカミングアウトするだけの駄文を書き殴るだけに成り果ててしまいました。まさに恋は盲目。ヘタレたけちんの出来上がりです。

第2話 [私の名前は、みぃ]

 ちなみにこの辺のみぃの笑顔で、たけちんはしっかり撃沈されてしまいました。
 観察日記には「彼女の純粋無垢な笑顔を見ていると、そのAIの高度な機能に感服すると共に、そのAIを育てるという自分の仕事が非常に意義のあることだと再認識させられる。云々」なんてよく分からないことを書いていますが、日本語訳すると「この女の笑顔に爆裂惚れた。こいつのためなら死ねる」って事です。

第3話 [みぃと散歩]

 この時期のみぃの台詞は、漢字とひらがなが入り乱れたおかしな文章になっています。これはみぃの発する言葉のソース(出所)によって使い分けをしているからです。
 使い分けの基準は以下の通り。
 漢字……脳みその辞書やネットから拾ってきた文章をそのまま読み上げている場合
 ひらがな+簡単な漢字……みぃが自分で考えた言葉
 例えば、
「うお? えーと、えーと、言葉はその真意を1%たりとも正確に伝えることはなく、たとえ一度でもヒトの口から出た言葉は全て嘘となる……ってやつ?」
 の場合は”言葉はその真意を1%たりとも正確に伝えることはなく、たとえ一度でもヒトの口から出た言葉は全て嘘となる”はどっから拾ってきた文章そのまま。逆に、
「うおー、じゃあじゃあ、コトバっていうのは、自分のミソのじょうほうを、えーと、コトバっていうプロトコルにへんかんしてつたえるってことなんだねー………はじめからミソどうしネットでつなげればいいのに、めんどくさい〜〜」
 こっちはほとんどみぃが自分で考えた言葉になります。

「………。お前、素か?」

 みぃの素とは何でしょうか。
 あのぶっとぼけた性格はほとんど素です。ただし、物語の中盤からは、みぃは自分の武器をしっかり活用する腹黒い面も見せ始めます(たけちんと雪遊びしていて窓ガラスを割っちゃうあたり)。
 みぃは、上っ面はめんどくさがりの享楽主義者ですが、かといって決して不真面目ではありません。むしろ一旦やると決めたら最後まで根性を振り絞ってやり抜くだけの責任感を持っています。また割と尽くすタイプなので、幼妻として所有権を確保したたけちんは幸せな野郎かも知れません。
 また中身が機械なだけあって、割と計算ずく(打算)で事を進めます。ぱっと見ではその場のノリだけで生きているように見えますが、実はかなり細かく計算して動いています。なので感情で物を言うことが少なく、研究所の野郎共にモテていたのも、女心の分からない理系野郎でも女性特有の感情論で物を言うことがないので簡単に「話が通じる」からです。
 ちなみにみぃの羞恥心はかなり低いのは事実です。その辺の男にスカートをめくられたら「ぶー!」と怒りますが、これは恥ずかしいからではなく、セクハラ行為をされた場合は相手の違法行為を責める、というロジックが働くからです。むしろ自分の身を守るためではなく、相手を教育しようとして文句が出る、といった感じです。ただし、物語の最後の方ではちゃんと羞恥心も持ち始め、ちゃんと年頃の女の子になっていきました。

第4話 [みぃと飲み会]

「そーか、みぃが運んでくれたんだ……」

 鬼畜な飲み会でツブれた自分を、みぃが介抱してくれたことを知るたけちんの台詞です。
 観察日記では”意外な一面”などとオトナぶって(?)書いていますが、本人嬉しくてしょうがなかったようです。ラブ度+1です。

第5話 [みぃと羽根]

「はかせぇ、手ぇだいじょうぶッ!?」
 半ばパニックになったみぃが、こぼれ出る涙を払いもせず、放心状態の武由に抱きついた。

 みぃがたけちんの事を大好きなのがバレバレの一文。
 みぃは割と漢らしいので、好いただ惚れただのといちいち言わずに態度で示すいい女なのです。

武由はみぃのお頭に手を乗せ、優しく撫でた。
「えへへ」

 みぃはこのたけちんに撫でて貰えることが嬉しくて、心の中に渦巻く憎悪を押し殺して最後の最後まで頑張っていました。エロゲだと、ここで撫でてないとみぃが最後にヤンデレ化して全員殺す感じになるかと……。

第6話 [みぃのおつかい]

「そうだったんですか……まぁ一度相手にしていただければ分かるんですけど、面白いですよこいつ、ヘンな性格してるので」

 ヘタレのたけちんがほざく暴言。しかしこの頃、自分がみぃの事を好きだなんてまったく自覚していないバカタレがいたわけです。

「うぇぇぇ! こんなんだから、博士にいっつも怒られるんだ〜〜!」

 みぃはちゃんと自分のことを分かっています。いつもたけちんに褒めて貰える様に努力していますが、当のたけちんは基本人を減点法でしか見ないロクデナシなので、結果として怒られることが多いのです。

しかし、もし復旧が正常に行かず、人格形成に多大な障害を残してしまった場合、我々はみぃというかけがえのない財産を永遠に失うことになっていただろう。

 日記でまたこしゃまっくれた事を書いていますが、日本語訳すれば「みぃがおかしくなったら俺は死ぬ。後悔は死んだ後だ」ということです。ホントに自覚無しのツンデレです。

第7話 [みぃの誕生秘話]

 みぃのAIインストール場面で出てくる暗号鍵取り扱いのくだりは、割とリアルです。あるギョーカイの人はニヤリとするでしょう。

第8話 [みぃの試験]

「うん、分かった……でも、みぃちゃん、やっぱりお手紙書く。もしもみぃちゃんが、みぃちゃんの事忘れちゃっても、みぃちゃんのこと思い出せるようにするの。いいでしょ?」

 みぃのOSを入れ替える前夜の、彼女の台詞です。
 このときみぃは、OSの入れ替えで自分が完全に死ぬんだと思い込んでいました。
 なお、設定的にはみぃの本質(魂みたいなモノ)はOS載せ替え前後でも同一であり、コピーした人格が起動してオリジナルが死んだとかいうことはありません。念のため。

第9話 [あたらしいみぃちゃんへ]〜みぃの手紙〜

 作者は自分で書いておきながら、この文章を見ると本気で涙が出てきます。だからここはあまり推敲できていません。まぁ、少しくらいおかしな日本語の方が、みぃが書いたというリアリティを出せるって打算もありましたが。
 しかしこの文章、手紙と言うより、ほとんど遺書の趣です。ひたすらに、たけちんとずっと一緒にいたかったという念が籠もった文章になるよう頑張りました。結果は分かりません。

第10話 [新しくなった、みぃ]

 ロボット物で、AIが一旦初期状態に戻って主人公を忘れるエピソードはお約束なのであります。
 ところでみぃには、この手の話でよく出てくる『ロボット三原則』が適用されているのか、という問題がありますが、これは明確に『適用されていない』という設定です。何せ彼女は大量殺戮兵器としての運用も視野に入れて開発されていますから。ロボット物では、自機の破壊が確実なのにロボット三原則を守ることこそ”ロボットの誇り・プライドである”という設定が為されていて大変涙を誘いますが(そういうの大好きな作者はガチで号泣物です)、みぃは命令を出した人(つまりたけちん)の優先度や命令の妥当性が認める限り、平気で人を殺せます。一般的な人命尊重は優先度の高い命令として頭に入っていますが、敵や自分たちに敵意を持つ連中には容赦しません。

今のみぃは、瞳に輝きも感じられない、知性のかけらもない、感情すらない、役立たずのゴミだ。

 日記に書かれたヘタレたけちんの暴言。日本語訳すると「俺の大好きなみぃを返せやゴルァー!!」です。

第11話 [みぃのおつかい2nd]

何か言えばそれなりな返事をするし、基本的にかわいげのあるイイヤツだったのだ。

 ツンデレが少しだけデレてきた感じでしょうか。いつもニコニコ笑っていたみぃが居なくなって自暴自棄の極地にあるたけちんが(本人の自覚為しに)ビービー泣きながら頭の中で考えていた台詞です。

第12話 [武由の想い]

みぃがやっと元に戻った!

 この日記の一文だけでも、たけちんがどんだけ喜びまくったのかがよく分かる良い例と言えましょう。
 ちなみにみぃの新しい型番についてですが、これも特に深い意味はありません。適当です。

第13話 [みぃと柔道]

 作者が通う職場のビルのガードマンを見ていて、突然うりゃーとか言って構えたら相手はどんな顔するかなーという妄想をそのまま物語にしてみました。

第14話 [酒飲みみぃ]

「えーと、一瞬博士にコクられたかと思ったよー。びっくりしたー……」
 みぃもまた、くすくす笑い出す。笑い過ぎたのか、目から涙が一滴こぼれた。

 研究所玄関前の松の木にクリスマスの電飾を飾る、バカップルのたわいのない会話より。
 もちろんみぃは笑いすぎて涙が出たわけでなく、せっかく大好きだったたけちんに好きだって言って貰えてうれしさ大炸裂だったのに、直後からかわれたと言われてショックで悔しくて泣いています。それでも、それをおくびに出さず会話を続けるあたり、あまりにもヘタレたけちんに過保護だったと言えるでしょう。こんなだから、にぶちんのたけちんには想いが全く伝わらなかったのでした。

第15話 [みぃとバレンタイン]

「上城さんが結婚するのー!……みぃちゃん好きだったのに、結婚しちゃうのー!」

 みぃは上城氏のことは、実は全然好きではありません。後で言いますが、「好きにした」のであります。もちろん知人としての好意は持っていますが、それは恋愛感情ではありません。そしてそのことは自分自身でもしっかり分かっています。
 みぃはたけちんの事が大好きで大好きでどうしようも無かったのですが、しかし一向にその想いは伝わりません。だから彼女は唯一自分にマトモに接してくれた男性である上城氏を[好きである]と強制認識させ、たけちんに想いが伝わらない寂しさを一時的にでも忘れようとしました。
 しかしそんな浅はかな策略すら上城氏の結婚で失敗し、みぃはこんなつまらないことすら自分の思い通りにならず、悔しくて悔しくてたけちんに抱きついて大泣きしたのでした。
 それを「いい恋してたんだな」などと評するこのロクデナシ、みぃも何でこんな甲斐性なしに惚れてしまったのか、本当に生まれた星が悪かったとしか言いようがありません。

第16話 [みぃとビデオ]

 何でたけちんがヘタレツンデレになってしまったのかのネタバラシ回であります。
 事の善し悪しは別として、設定的には「フツーここまで付き合ってりゃ、オトコにムリヤリ突かれたって文句言えなくねー!?」って周りの人に絶対言われる程にラブラブだったカップルなのでした(むしろさっさとやっちゃえと女友達にすら言われていた始末)。彼女の方が病的な程に潔癖だったという事を表現したつもりでしたが、伝わったでしょうか。ちなみに作者本人の考え方はどちらかというと彼女寄りですが何か?

第17話 [みぃと迷子]

 みぃの能力がどれだけの物かを表現した回でした。

第18話 [みぃとナンパ]

「……じゃあ、みぃちゃんの面倒一生見てくれるの? みぃちゃん兵器だけど、何かあったらどこでも助けに来てくれるの? みぃちゃんのOSがぶっ飛んで生ゴミになっても、ちゃんと後片づけてしてくれるの? 全部ちゃんと責任取ってくれるの!?」

 このみぃの台詞の裏の想いは、たけちんなら全部やってくれるという強い確信が彼女にはあったということです。

「全然そーゆー気持ちがなきゃ、勘違いもしないと思う……」

 みぃのあまりにもド直球なお言葉。そして思いっきり本心を突かれたヘタレたけちんは、逆上する以外なすすべがありませんでした。そしてこの日の日記は極めて大人げなく、いつものみぃ大好き!ではなく事務的な事ばかり書かれてあります。ヘタレもいいとこです。

第19話 [兵器としての、みぃ・1]

 この回は特に伏線はありません。
 ちなみに鹿沼女史に通信衛星をディスらせていますが、作者は人工衛星大好き人間です。

第20話 [兵器としての、みぃ・2]

「はやくしろーっ!!」

 みぃにしては珍しい命令形の言葉。つまりちゃんと状況に応じて言葉を使い分けられるってことです。

「STP-03βは人造遺伝子のクローン体で、あの程度の怪我では命に別状はありませんよ……」

 研究所は割と縦割りな文化があります。だから普段みぃと関わりのない部署は、みぃを可愛い女の子ではなく単なる機械として扱います。

みぃの身体を合成した生化学チームの人間が作業を始める。みぃの火傷を調べるために、タンカの上で仰向けに寝ている彼女をひっくり返えした。
「うお? いて〜」
 みぃは寝ぼけ眼で声を上げる。

 ここの記述も、生化学チームという部署名は同じでも、1年前にみぃを合成したり面倒を見た連中は配置転換で居なくなり、「あー、それもそーっスね、それだけ人間に近い……いや、そこいらの女よりもいい女になるってことか……いいっスね、それいいっスよ!」と熱い台詞を吐いていた人達はもう一人も居ない……という寂しい現実を表現……出来ていません。

第21話 [みぃと武由・1]

 ついににぶちんたけちんが、自分もみぃ大好き!と言うのを自覚してしまう回です。
 極めてヘタレ、甲斐性なしの誹りを100万回言われてもしようがないたけちんでありますが、それ以上にみぃの思い詰めようがハンパないっす。オトコにフラれて自殺を企てるロボ子は今まで居たでしょうか? それともお約束でしょうか??

第22話 [みぃと武由・2]

 バカップルの誕生です。もう勝手に幸せになっちまえと。

第23話 [みぃと虫歯]

 みぃがやたらオッサン臭いことばかり宣う問題(?)のネタバラシ回であります。
 ちなみに歯医者さんで口の中で変なモン突っ込まれて云々のネタは、作者自ら歯医者さんで虫歯を削られながら考えました。病気です。

第24話 [最終試験のみぃ]

 みぃちゃんつよい! それだけであります。

第25話 [お別れのみぃ・1]

 こういう話で、最終試験に理不尽に落とされるのはお約束なのであります。
 あとは、今まではどちらかというと研究所寄りな考えをしていた鹿沼女史が裏切ってたけちんの肩を持ったあたり、作者自身妙なカタルシスを感じました。
 そして、普段ニコニコしているロボ子が腹の中には怒りをため込んでいて、それに所有者が戦慄するっていうのもお約束なのであります。このみぃがずっと怒りを隠し続けていたという伏線は、一切張っていませんでした。設定としてはもちろん最初からありましたけど。これは読者にたけちんと一緒にドキッとして貰いたかったからです。そして、たぶんその試みは失敗したと思います。やっぱ少しくらい伏線張っておけば良かったかなぁ?
 ちなみにこの話がエロゲになったら、この辺で愛情値が足りなければみぃがヤンデレ化して皆殺しをし始めます(笑)

最終話 [お別れのみぃ・2]

転送されてきた来た物の中身は、みぃの開発終了を告げる告知文と今後の予定(後3日で廃棄処分と書かれている)、4号プロトタイプの概略の設計書が数通だ。武由は前の二つだけ読み、残りはそのままゴミ箱に捨てる。

 このメールを捨てていることで、たけちんがもう研究所を退職する気である事を表現したつもりです。

「んー……えーと、前に読んだとある本にはね、人の心はガラスと一緒って書いてあったよ。傷がついて濁った心は、愛の力で熱すると、ガラスのヒビが溶けてくっつく様に、透明度を取り戻せるんだって。……きっと、そーゆー風に思えることもあるだろうけど、でもでも、そんなのはウソだよ」

 このガラス云々は、拙作の『自分を、信じて…』のクライマックスの時にユキちゃんが言っていた台詞です。それを他作品のキャラに真っ向否定させるあたり、作者は結構なドMの様です。

疲れ切ってふらつき気味の鹿沼は、しかしその表情から怒りの感情は感じられない。みぃの書き換え作業を成功させた満足感からだろうか、彼を見る視線にはいつもの柔らかさが戻っていた。

 これが次作の最後の部分への伏線となります。
 さて、みぃは後半ことある度にえっちえっちと言っていましたが、本気でセックスしたかったのでしょうか。この問いに対する答えはNoです。みぃは好きな人と一緒にすることで一番効果が高いって事を知っていたので、たけちんに抱かれることでよりその絆を深め合おうとしていました。ちなみに好奇心は少しはありましたが、それよりも「えー、だってだって、好きな人を全身でいっぱい感じられるんだよ? レセプター焼き付いてもイイから、そゆ事してみたいなぁ……」というのがみぃの本音です。

「未熟の天使 〜その後〜」について

 さて前作に引き続きみぃが記憶をすっ飛ばされた(演技をしていた)続編ですが、こちらはよりあからさまな引っかけの伏線が入り乱れています。
 ところでたけちんは最後の最後まで大女優みぃにまんまとだまされていましたが、読者様はどの辺からみぃは実は正気を保っているのでは? と気がついたのでしょうか。

生活 Life

ちなみに寝相の悪さは以前と変わっていない気がする。

 さすがに寝ているときは、大女優みぃも素のまんまなのです。

機嫌が悪い顔をしているときにおちょくると、なにやらホントに青筋を立てるときがある。また機嫌が良いような顔をしているときに甘い物をあげると、ほっぺがぴくぴくするときもある。

 まだ大女優みぃも未熟者と言ったところでしょうか。

雨の日 A day in the rain

そしたら、みぃはフラフラと立ち上がり、俺の横に座ると俺の体にべたべたまとわりついてきた。
おいおい、もういい加減にしてくれよ……お前は何だ、亭主にさんざ働かせるばかりで夜の勤めまでやれって言うのか?

 たけちんが疲れ果てて帰ってきたにもかかわらず、自分は何も出来ない設定であるので、彼に対して非常に申し訳なく思っていたみぃ。せめて自分を抱いて貰って、ストレスの発散でもと思っていたのですが、甲斐性なしたけちんにはそんなみぃの想いは伝わらないのでした。
 なので、演技だとバレるリスクを犯してでも今までのお礼を込めてキスまでしたのに、反対に突き飛ばされる始末。みぃはもう本当に悔しくてたまらず、ついつい涙をこぼしてしまいます。

眠い目を擦りつつ、俺はのそのそ起き上がる。万が一にでも布団を干していようものなら、それこそ夜帰ってから悲惨な寝床を目の当たりにし、ひとしきりの絶望を味合わなければならないのだ。

 ちなみにこの日、たけちんは会社に行く前に布団を干していました。
 そして昼休みに家に帰ったという記述は、全て彼の見ていた夢の中の体験です。昼休みが始まった瞬間に机に突っ伏し、以降社長に怒鳴りつけられるまで完全に寝ていました。
 だから一旦家に帰った時のみぃの反応(ケツを蹴っ飛ばしたら「きゃうん!」と変な声を上げ、たけちんにおっぱいもみほぐされたときはブーブー声を上げたなどという記述がある)は現実と違いますし、また布団も押し入れに入れたとなっています。
 しかしこの日の夜に帰った時に布団は干されていませんでした。雨が降りそうな空を見て、みぃが自分で布団を取り込んだのです。それで、いつも布団が置いてあった部屋の隅に置き、彼女は何食わぬ顔でたけちんの帰りを待っていました。

すまんなみぃ、お前の旦那はおっぱいだけ味わってさっさと寝ちゃうロクデナシだぞ。俺はみぃの頭を何度も撫でてやる。
博士……
俺の意識が飛ぶ寸前、みぃの声が聞こえてきた。

 実際にこの時、みぃはたけちんに「博士ぇ」と声を掛けてしまいました。疲れ果てた彼があまりにも心配だったからです。

歌声 A song

俺は、玄関先で突っ伏したまま寝くたばっていた。そして目覚めた瞬間、自分自身の傷んだサラリーマン人生を力一杯呪ってやった。悲しすぎるぞ、この寝方は。何とか毛布くらいはたぐり寄せていたようだが、如何に疲れていようと靴履いたまま玄関で寝るのはハイエンドすぎる。

 ちなみに玄関先で寝くたばっていたたけちんに掛けられた毛布は、みぃが掛けてくれた物です。いくら喰うしか機能のないマイハニー(死語)しか居ないたけちんハウスでも、玄関先に毛布は設置していません。

「んまぁ〜、だったら今日は天気もいいし、みぃちゃんとお出かけてもしたらぁ〜? みぃちゃんもご機嫌よ〜? さっき一人で鼻歌ふんふん歌ってたわよ〜?」
「はぁ、それはまた……」

 たけちんハウスのオーナーの奥様の台詞ですが、この言葉の通り、みぃはたけちんが居ないときは憂さ晴らしに鼻歌くらい歌う大女優なのでした。だからこのときもたけちんが玄関のドアを開ける直前までテレビの曲に合わせて一緒に歌っていたのですが、彼が慌てて鍵の掛かったままのドアを引っ張ったときに、急いで口をつぐんだのでした。

手紙 A letter from lab.

目が覚めた後、しばらくの間俺は自分が何処で何をやっているのかさっぱり分からなかった。取り急ぎ身の回りを調べてみると、着の身着のままで風呂も入らず、とにかく布団にだけは潜り込んだようだった。幸い、ちゃんと靴は脱いでいた。布団を出て玄関まで行くと、いつもは脱ぎ散らかしている靴が綺麗に揃えておいてある。むぅ、意識が飛ぶほど疲れて帰ってきたというのに、靴だけは揃えたのか俺………。なんだか自分自身がけなげで可哀想になってきた。

 ここでは、本当はたけちんは過労で風邪をひいたあげくに、また玄関先でひっくり返ったままになっていました。それを見たみぃが彼を引きずって布団に寝かしつけ、ついでに靴も脱がして玄関先に綺麗に並べておいていたのです。なので、あとで彼が風呂に入った後で体を拭いていたとき、すねに打撲の跡がいっぱい付いていたのは、みぃが彼を引きずった時に出来たものなのでした。

おーい、みぃよーぃ、ちゃんとご飯食べるんだぞー
そして俺がくたばっても強く生きれー?
俺がにこやかにそんなことをのたまっていると、さっきまでむにむに言ってたみぃがいきなり飛び起き、あわてて俺の顔をのぞき込んでくる。

 もちろんこれはたけちんの夢の中の出来事ではなく、現実です。突然意味不明な遺言を宣いだした旦那にびっくりして飛び起きたみぃが、慌ててたけちんの様子をうかがいます。
 そして後に続く、彼の自殺級のお戯れですが、これも残念ながら完全に現実の出来事です。みぃが声を上げる記述がありますがそれも本当の話で、高熱を出して前後と自分と人としての大切なプライドを完全に見失った旦那の狂態にパニクったみぃは、必死に彼を寝かしつけようとします。しかし自分の乳にむしゃぶりつく彼の意志(?)を尊重し、みぃは優しくたけちんの頭を撫でていたのでした。
 その後気絶した旦那をしっかり寝かしつけ、自分もいつでも介抱できるようにすぐ隣で寝ていたのです。

あまり汗もかいていないようだし、実はあんまり酷い風邪ではなかったのかな?

 しっかり大量に汗をかいていたので、みぃがちゃんと汗を拭き取っていたのです。なのでたけちんが水を飲みに台所に行ったとき、その時に使っていた洗面器やらバスタオルが置いたままになっていたのでした。

つまりこいつは、夜中に空腹のあまり起き出してきて、熱で寝入ってる俺にメシをせがんだままに、その場でこうして寝こけていやがるのか。なんとまぁ愛情に満ちあふれたシチュエーションだろうか。嬉しくて涙が出そうになる。

 甲斐性なしのたけちんはこんなひどい暴言を吐いていますが、現実のみぃは自分が起きている時はずっとたけちんのそばにいて看病をしていました。だから彼はさっさと病気が治ったのです。

「起きろみぃ、パンが焼けてるぞ!」
俺がそう声を掛けると、やっと脳みそが再起動したのか、みぃはなんだか不満そうな目でこちらをじっと見ている。
「………。」
そしてしばらくすると、なぜ故かそのまま布団の上にばたんと倒れ込んだ。

 みぃは不満そうな目をしていたのではなく、彼が元気になったのを必死に確認していたのでした。そしてちゃんと病気が治ったことに激しく安堵し、そのまま力が抜けてぶっ倒れてしまったのです。

「あれ? ここにあった洗面器どうした?」
 俺は何と無しにみぃに聞いてみたのだが、彼女はじっと俺の目を見るだけで微動をだにしない。まぁ、普段から似た様な感じで固まっているが、それにしちゃなんだか目がマジだな。
 俺はグラスを二つ抱えながらちゃぶ台に戻ると、みぃは、何故か手をきゅっと握り、そしてフラフラと腕を上げると、風呂場を指さした。

 このときみぃがマジな目をしていたのは、台所に置き忘れていた洗面器をたけちんに指摘されてしまったからです。もしみぃが彼のことを介抱したなどとバレてしまえば、演技してまで隠してきた自分の本当の状態を彼に知られてしまうからです。だからみぃは泣き出したいくらいの恐怖にじっと耐え、そして何とかひねり出した「自分は性能が良くなったので洗面器をしまいました」という一世一代の大嘘をつくため思わず手をきゅっと握り、そして風呂場をフラフラと指さしたのでした。

「未熟の天使」の基本コンセプト

 今更語ることではありませんが、作者は設定厨です。だからこの話では、自分のSF的な持ちネタを全て、全開で練り込みました。だからもう今後SFの話が書けるかは極めて怪しいです。ネタ切れです。すっからかんです。
 また文章がやけに短くあっさりしているのは、単に短時間(実作業時間)で物語を完結させるために文章表現を手抜きしただけです。クォリティが低いと言われればその通りです。しかし素人の趣味なんて自己満足が第一原理であるので、自分が楽しくないことは出来ません。作者とみぃのつきあいで楽しいと感じる結果として、ぶつ切りで厚みのない文章になっちゃったというわけです。もちろん、作者自身でも設定厨的に厨二病が炸裂して痛々しくもワリと面白いこの文章を、もう少し格好良く仕上げたかった、ぶっちゃけ勿体ないと思うところは大ですが、今更書き直すののめんどくさいですし、過去の物をいつまでも弄っていても進歩はありません。それに次回作も作成中ですし。
 ちなみにみぃの話は小ネタがいくつかありますので、気が向けば打ち込むかも知れません。何年後になるかは微妙なところではありますが。