第10話
少女は言った。
「神様はお空のずっと上で皆を見守っているのよ」
実装空(スカイ)は言った。
『じゃぁ、ソイツを見つけ出して地上へ引っ張り出してやる」
現在、高度数十万キロ上空。
地上の様子はもうわからない。
すでに体は凍てつき、
自由が利かない領域に来て居た。
『神、ドコにいやがる…貴様を皆の前でひざまずかせてやるまでは…』
薄れ行く意識の中、実装空は背中に気配を感じた。
自分より大きい何かが背中に触れ
、優しい温もりが実装空を包み込む。
すでにソコは虚空ではなく、
金色に輝く大小様々な翼が彼を歓迎のダンスで迎え、
笑い声と共に激しいツムジとなり天空へと消えていった。
背中の気配は次第に大きくなり実装空は恐怖に怯えた。
『これが死ってヤツかい…』
突然の解放。
落下。
生きている。
振り向くと光りの翼がまっすぐ宇宙へと消えた。
『あれは神?…いや、あれはもっと高ー』
雲海に遮られソコを脱出した彼の翼は
「金色」に輝き始めていた。
激しい郷愁感が胸を締め付ける。
『これはーやるべき事をやれって事? ボクって束縛されるの、
嫌いなんだけどな。やれやれ…』
彼はかつて時空石に破れた「天使石」の末裔であり、
神の御使いであった。
補足
・ 『あれは神?…いや、あれはもっと高ー』
彼が観たのは精霊か何か高度なレベルの生命体。
それは肉体を必要としない意志のみの存在。
実装空が懐かしさを憶えたのはそこが彼の
本来いるべき場所であるからだろう。
、神を否定する本人が
神に近い存在だったとは露とも思うまい。
・天使石
すべての平行世界に居る存在。
世界を破滅から救う為に
時空石の前に姿を現すも 敗れてしまい
時空を行き来する能力を奪われてしまう。
別の宇宙での実装空の姿でもある。