第28話
時空石は敗れた。
下界のあちこちから汽笛やクラクション、
音楽、歓声が鳴り響き始めた。
実装零を称えるかの様に。
歓声は勢いを増し崩壊する実装城を囲み始めた。
多くの人間が勝利を祝い、
時空石の影響が消え
言葉と知識を失い元に戻った実装石を
城から引きずり出し、
ある者は勝利の証として灼かれ、
潰され、吊るされていった。
この状況も想定の内だったのか、
今は彼らにその記憶も無いだろうが。
「時空石、
この世界は君が連れて来た人間が創った。
彼らを殺していれば実装世界は容易に完成できたハズだ。
教えてくれ、何故だ」
『天使石とその世界を滅ぼした私を
奴らは危険を承知で助けた。
新天地に向かう同胞として迎えてくれたのだ…
私は恩義に応え彼らを生かしたのだ。
それに実装石の進化にはまだある程度の
人間が必要な事がわかっていた。
成長段階に彼らと居ないと屑蟲以下の知能しか育たなかった…』
「しかし皮肉だな。進化した私や君の姿は人間そのものだ」
『…何故だ、なぜ宇宙には実装だけの…
虐げられる事の無い安住の地が無いのだ…』
「安住の地なんてのは
あらゆる世界に存在していたハズなんだよ。
君には小さ過ぎただろうが」
時空石の体は元の実装石に戻り始め、
体が半透明になり消え始めた。
「これが生まれながら持っていた能力、
時空転移か。
決して死なず、
キミは数多の宇宙を巡っては地獄を観て来たのか…」
時空石は腕を上げ何事か呟いた。何かを観て居た。
実装零は時空石の手を取ろうとしたが
すでにその体はこの世界のモノでは無かった。
補足
・下界のあちこちから
洋上、地下や隠れ家に居た人間と思われる
・連れて来た人間が
7話補足にて説明した2人の事である。
・君の姿は人間そのもの
人間を否定しながら
その姿は人間に近付いていく。
生物の進化として人間型が最も優れたカタチなのだろうか?
・安住の地 あらゆる世界に存在していた
「幸せの青い鳥は以外な所に居た」
とは少し違うが人間も遠くばかり見過ぎて
近くの幸せを疎ましく思いガチである。
・時空転移
新たに生まれた宇宙、
実装零によって救われた世界のどこかに旅立って行った。
・何かを観て居た
色々予想できるので説明は避ける。