第29

実装零は壁に激突していた未来石を助け起した。

『あッ!涙さ…誰ですか?』

「実装零、だが涙と呼んで構わない。
 ココは危険だ、事情は離れてから話す」

2人は郊外の丘に辿り着いた。
実装城での事、
未来石は狙撃場所をデビルに追われ
逃げ込んだ地下で人間が仕掛けた爆薬を見つけ
再配置した事、
穏やかな風景の中2人は長い間話しあった。

「さて、これからはキミの事を考えねば」

『私は…いいんです。
 未来はもう私の居た世界ではありませんし、
 このままこの世界の行く末を見守ります』

実装零は未来石に
転移装置の設定をするよう勧めた。

『反応がありません。起動装置の故障です。
 もういいんです、
 涙さん、あなたが一緒なら私寂しくありません』

実装零はかぶりを振り胸の装甲を開いてみせた。

「私の体は時空石を倒すためだけに造った
 その場限りの体なんだ。からっぽだろ?」

『そんな…』

「だが私は時空石と意識を共有した際、
 彼の時空転移の能力をコピーしたんだ。
 これでキミを未来へ帰す」

『もう戻っても私は忘れられた存在なんです!
 独りは否です!』

「未来石、誰もキミを忘れたりはしないよ。
 必ず迎えてくれる」

実装零は実装魂を強化服に吸収させ、
装置を起動させた。

『やめて下さい!私は涙さんがー!』

強化服は消えた。

実装零は丘へ昇る風に吹かれて居た。

「さて、こちらもわずかだが実装魂を解放しよう」
零の体から3つの光りが、
空、街、郊外へそれぞれに飛んで行った。
丘には零の姿はなく、

ただ春風のみが爽やかな緑の草木を
撫でては吹き抜けた。

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補足
・壁に激突していた
時空石に全速で突っ込んだ後,
強化服はバランスを失って
そのまま壁に激突していた。

・郊外の丘
実装城からはかなり離れた丘である。

・爆薬を見つけ再配置した事
実装城は飛行するまでビルを
土台にして建っていたので
城本体では無く土台のビルに
爆薬を仕掛け直したのだ。

・かぶりを振り
頭(かぶり)を振る 。
不承知、拒否の意味。
あまり小説を読まない方なので最近になって
この表現をみてしばらく?となったものだ。

・その場限りの体
これ程の覚悟で望んでも単独で
時空石には勝てなかったわけだが。
まぁヒーローらしい決断である。