第30

時空石から解放された世界は順調に復興の道を歩んで居た。

街頭からは「50人の救世主」という歌が流され、
人々はこれからの世界のビジョンを競っていた。

世界を救ったのは「人類」であり
悪の根源たる実装達では無かった。
世界が彼らの活躍を、名前を認めるには
まだ時間が必要であろう。

<それぞれの道>

・難民の避難所は
何時しか町となり
休日には人種も国籍も無く
礼拝所で有翼の神に祈りを捧げて居た。
外では少女が独り、
傷だらけの手鏡を天空に掲げていた。

「空、あなたはもういないのね…
 でも私は大丈夫、
 それにホラ、皆あなたに感謝しているわ」

何かが空に浮かんでいた。

『鳥じゃねぇな、ありゃぁ落下傘だ』
『馬鹿いうな、この世に飛行機が残って無いのに』

それは少女の腕の中に着地した。

『デスゥ!』

・スラム街にも
人々が戻り生活を始めていた。
ある焼き飯屋も新たなスタッフを雇い
新装開店していた。
『店長ーゴミ出し行ってきまーす』

「グゥレイトォ!気が利くな」

『うわっシッシッ!あっち行け!』

「どうした新人、」

『最近来るんスよ、こ汚い実装が〜』

「実装?この街にも戻り始めたんだなぁ」

『観て下さいよ、顔に靴墨塗って
 顔にチョークで傷かいてんすよ。
 それに残飯も焼き飯だけ選んで喰ってンすよ』

「…グゥレイトォ!
 あの野郎、約束守ったんだな。
 それも3匹も寄越しやがって…
 よし新人、3匹に焼き飯作ってやんな!
 そいつらが完食したら厨房に立たせてやるぜ」

・その実装石は道端でカードを片手に
道行く人々に声をかけていた。
気にかける人は居れど
立ち止まる者は居なかった。

心無い者が彼を蹴り上げ、
壁に叩き付けても、
汚水まみれになってもなお、
その実装石は立ち続けた。

ある時、無宿の親子が足を止めた。

「パパ、観て観てこの実装右腕が鉄で出来てるよ」

『これは珍しい、それに何だ、涙眼で震えてらぁ』

実装石は急いでボードに何か書き始めた。

「んー?コレハ ジッソウモジ デス
 ミンナデ ヒロメマショウ だって!」

『何だお前、学が無いお前でもこれは読めるのか?』

「うん。よくわかんないけど読めちゃった!」

『気持ちわりぃなぁ、ほれ行くぞ』

その文字は
知識の無い者でも読める不思議な文字だった。
実装も人間も読める共通文字であった。
彼は実装城に居た実装達の知識を
惜しみ無く披露し
命の限り世界各地を巡り普及に勤めた。

彼の死後、
ある言語学者の手によって
それは世界に発表され広く知られる事となる。
そして未来ー

31話へ

補足
・50人の救世主
実装城に爆薬を仕掛けた軍隊の事を指している。
実装涙達の活躍は復興の妨げになるという事で
事実上封印されてしまう。

・世界のビジョン
一瞬にして文明機器失った世界をどういった
方向に導けるかの議論である。
再び同じ世界を作り直すのか、
それとも
新たな創世紀となるのか。

・人種も国籍も無く礼拝所で
絶望の中に希望を見い出した者達によって
新たな神が誕生した。
空を翔け、地を這い、時空を超え、
諦める事無く 人々に希望を与えた小さな神に。

・あの野郎、約束守ったんだな
4話での約束だろうが一体どれを守ったのか。
焼き飯の味を守る?

・無宿の親子
実装文字に対する一般的な反応である。

・不思議な文字  実装達の知識
説明すると
一見すると意味不明な象形文字だが
人間脳の原始的な部分を使い
自然と解析できる文字なのである。
原始的な部分は実装石も
共通している所があるので
お互い読めるわけである。

この実装が実装城の生き残りか
実装涙かは不明。という事にして置こう。

・ある言語学者  世界に発表
おそらくは実装石の死後に
「実装文字の原本」を入手し、
翻訳、発表したと思われる。
しかしその翻訳には間違い多く
原本の内容に
勝手に手を加えた「第2版」が
最も多く広まっていた。