報告を書く場合の手順
- 専門用語の意味を調べる
- テーマに関する情報を収集する
- 情報を分類・整理する
- 整理した情報をもとに構想を立てる
- 具体的な実例やデータを揃える
- 報告を執筆する
(構成→草稿→初稿→推敲→完成)
テーマの理解
報告では、報告を求める側(たとえば、会社の上司、授業を担当する教師)からテーマ(課題)が与えられることが多い。そのため、まず必要になるのは、テーマを理解することである。
専門用語の意味
テーマ(課題)に専門用語が含まれるときには、まずその意味を知らなければならない。
たとえば、「『収穫逓減』と『収穫逓増』について報告しなさい」と求められたのならば、『収穫逓減』、『収穫逓増』の意味がわからなければ話にならないであろう。
テーマに含まれる専門用語を調べるには、以下のような方法がある。
どんな資料でも間違いや執筆者による誤解が含まれていることがある。できれば、ひとつの方法だけ、ひとつの資料だけでなく、複数の方法で複数の資料を参照するようにしたい。
たとえば、ひとつの用語事典だけでは、内容が古くて十分な理解が得られない可能性がある。また、ひとつのウェブサイト(ウェブページ)を参照しただけでは、理解が偏ったものになってしまうかもしれない。特に、ウェブサイト(ウェブページ)には悪意のあるもの(わざと間違った情報や極端な解釈を記している)もあるので注意が必要である。
情報の収集
次に、テーマ(課題)に関する情報を収集しなければならない。
情報を収集するには、以下のような方法がある。
情報を収集するときには、〈関連のある情報をできるだけ多く集める〉のが基本である。詳しい内容や情報の持つ価値(情報の質)は後でまとめて確認・判断すればよい。
情報のメモ
情報は、まず『メモ』として記録に残すようにする。メモでは、できるだけ情報をそのまま書き写した方がよいだろう(オリジナルのままの方が汎用性がある)。
情報をそのまま書き写したときには、カギカッコ(「」)でくくっておくとわかりやすい。また、情報の出典は必ず明記しておくようにする【参考→参考文献の書き方】。実際にレポートを書くときに情報の出典がわからないと、改めて調べ直さなければならなくなる。
分量のあるものの場合は、内容を要約して書いてもよい。このときも、情報の出典を必ず明記しておく【参考→参考文献の書き方】。
なお、いずれの方法でも、情報についての自分のコメントや意見を書いておくと、情報を整理する作業がしやすくなるだろう。
メモのメディアとコピー
メモは、ノートなどに書いてもいいし、コンピュータで入力して電子データにしてもよい。後でコンピュータを使ってレポートを作成するならば電子データにしておく方が便利だろう。
なお、情報を収集するときには、内容のメモだけでなく、資料そのものの『コピー』もとっておいた方がよい。
- 特に高価でない書籍は購入する
- 購入できない(購入しない)書籍ならば関連のある章や節をコピーする
- 論文、新聞や雑誌の記事ならば全文をコピーする
- ウェブページならば、ページをアーカイブ形式で保存するか、PDFに書き出す(プリントアウトする必要はない)
書籍など分量のあるものの場合、重要な部分だけをコピーしようとすると、後で前後の部分を確認したいときに困ることがある。できるだけ章や節などのまとまりをコピーするようにしたい。
情報の利用
必要な情報を収集するだけでは、報告を書くことはできない。収集した情報を、適切に用いなければならない。
情報の分類
情報を適切に用いるためには、まず、収集した情報を分類しなければならない。分類の基準は報告のテーマによっても異なるが、たとえば、記述の立場によって
- 〈否定的なもの〉
- 〈批判的なもの〉
- 〈中立的なもの〉
- 〈肯定的なもの〉
などに分類する方法が考えられる。あるいは、資料の性格によって
- 〈実例を記述したもの〉
- 〈概念を解説したもの〉
- 〈現象を説明したもの〉
- 〈原理を解釈したもの〉
- 〈理論を提示したもの〉
などの基準で分類する方法もあるだろう。
また、より単純には
- 〈簡単なもの〉
- 〈難しいもの〉
といった基準でもよいだろう。
情報を分類するときに重要なことは、情報の内容をできるだけ正確に理解することである。そのために、資料を繰り返し読んだり、意味のわからない箇所を調べたりするなど、内容を理解するための努力をしなければならない。
情報の整理
情報を利用するには、分類だけでは十分でない。分類した情報をさらに整理しなければならない。
情報を整理するということは、
- 情報からポイントを取り出す
- 情報の間の関係を明確にする
ということである。
ここで情報のポイントというのは、まず、その情報の《要点》のことである。また、それだけではなく、その情報が《何をしようとしているのか》ということも考えなければならない。たとえば、ある情報のポイントについては、要点が『意識は行動の結果である』であり、それによって『新しい理論を提示しようとしている』というように考えるのである。
そして、それぞれの情報のポイントを明らかにしていけば、情報と情報の間の関係も明確になっていく。たとえば、Aという情報のポイント《何をしようとしているのか》が『従来の説のわかりやすい解説』であり、Bという情報のポイントが『従来の説への理論的な批判』であれば、AとBには、BがAを批判するという関係があることになる。
構想を立てる
情報が分類・整理できたら、分類・整理した情報を利用して報告の構想を立てる。
報告の構想を立てるというのは、《何をどう書くか考える》ということである。
何を書くか
まず、何を書くか考えなければならない。
報告のテーマはすでに決まっている(決められている)。何を書くか考えるというのは、整理した情報のうちのどれを採用するか考えるということである。
報告は、分量に制約があることが多い(たとえば、「レポート用紙5枚程度」など)。収集した情報の量が少なければ、すべてを書くことができるかもしれない。しかし、多くの場合、収集した情報は取捨選択しなければならなくなる。
情報を取捨選択するときには、次のようにするとよいだろう。
- 情報が偏らないように選ぶ
- 信用できない情報は捨てる
- 同じ内容の情報はどちらかを捨てる
- 重複がある情報はひとつにまとめる
情報を取捨選択するときに最も重要なことは、情報が偏らないようにするということである。たとえば、「アメリカ軍の戦争犯罪」について報告するときに、アメリカ軍の主張ばかりを採用したのでは情報が偏ったものになってしまうだろう。
また、信用できない情報を採用してはいけない。信用できない情報が含まれているのでは、報告そのものが信用できないものになってしまうので注意しなければならない。
同じ内容の情報があったときには、どちらかを捨てるようにするとよい。たとえば「パソコンとは、個人的に使用されるすべてのコンピューターのことである。」という情報と「パソコンとは、パーソナルコンピュータの略で、文字通りに個人個人のコンピュータのことを指す。」という情報があったならば、「パソコンとは、パーソナルコンピュータの略で、文字通りに個人のコンピュータのことを指す。」という情報を捨てて、「パソコンとは、個人的に使用されるすべてのコンピューターのことである。」という情報を採用すればよい。
部分的に重複する情報があるときには、ひとつにまとめてみるとよいだろう。たとえば、モスクワオリンピックについて「ソビエト連邦で開催された1980年のモスクワオリンピックには、世界から81の国と地域が参加した。」という情報と「西側諸国は、政治的な理由からモスクワオリンピックを集団でボイコットした。」という情報とがあったならば、「1980年のモスクワオリンピックには、西側諸国を除く、81の国と地域が参加した。」のようにまとめればよい。
どう書くか
どう書くかというのは、どのような順序で書くかということである。
報告を書くときには、どのような順序で書くか、つまり、情報をどのような順序で用いるかをあらかじめ決めておく方がよい。
順序にはっきりしたきまりがあるわけではないが、次のような順序で書かれることが多い。
- 全体的なもの→→部分的なもの
- 基本的なもの→→応用的なもの
- 中心的なもの→→周辺的なもの
- 典型的なもの→→特異的なもの
なお、文章の構成や展開については『作文』の中にある〔構成について〕および〔展開について〕を参照せよ。
必要な情報を揃える
報告を書くために必要な情報がすでに揃っている場合は、報告を書き始めればよい。しかし、必要な情報が揃っていないときには、不足している情報をさらに収集しなければならない。
不足している情報を収集する方法には、次のようなものがある。
- 情報の収集(文献調査やウェブ検索など)をさらに進める
- アンケート調査を行なう
- 関係者や専門家へのインタビューを行なう
- 現地調査を行なう
- 統計調査を行なう
報告を執筆する
構想が立ち、必要な情報が揃ったら、実際に報告を執筆する。
報告のアウトライン
まずは、報告の構成を考える。報告を書く順序はすでに決まっているので、報告をどのような構成で書くかを考える。なお、構成について詳しいことは、【→レポートの構成】を参照せよ。
構成を考えるときには、さらに詳しい章立て(アウトライン)を考えておくと、執筆の手助けになる。
アウトラインの例
- 表題:日本の公共交通についての報告
- 本文
- はじめに:テーマの提示(日本の公共交通について報告する)
- 本論
- 公共交通とは何か
- 日本の鉄道について
- JRの場合
- 私鉄の場合
- 日本のバスについて
- 都市のバス事情
- 地方のバス事情
- 日本と台湾の比較
- 鉄道の違い
- バスの違い
- 結論(まとめ)
- データ:公共交通の利用実態(公共交通の利用人数や利用料金に関するもの)
- 資料:引用・参考文献
草稿と初稿
構成と収集した情報に従って、報告を執筆してみる。
まず、構成を肉付けする形で、それぞれの章や節の概要を書いてみる(おおまかな下書きを作成する)。
次に、概要を肉付けする形で報告の草稿を作成する(くわしい下書きを作成する)。
草稿ができたら、草稿を修正する。草稿を読んで、意味のわからない部分があれば修正する(自分がわからないものが他人にわかるはずがない!)。また、わかりにくい部分があれば修正する(このときには、アウトラインを変更しても構わない)。
こうして出来上がるのが、初稿(とりあえず出来上がった報告)である。
推敲と完成
初稿のままでは、報告として十分ではない。初稿が出来上がったら、しばらくしてから読み直してみる。初稿が出来上がったときには気づかなかった誤字や脱字、文法のミスや不適切な(わかりにくい)表現に気づくはずである。そのような問題点を修正する作業を『推敲』という(必要があれば推敲は何度も行なう)。
推敲が終われば、報告の完成である。レポート用紙に清書するか、用紙にプリントアウトして提出すればよい(レポートを提出するときは、体裁にも注意すること。体裁については【レポートの体裁】を参照せよ)。