BEMS とは   BEMSの階層構成  BEMSとBAなど用語の考察   BEMSと省エネルギー  BOFD LCCOM

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ISO/BACSについて

ISOでは1995年よりTC205委員会(建築環境設計、Building Environment Design)を設立し、その中のWG3が Building Control Designを担当し15年に亘ってISO規格化作業を行い、今なお継続している。ISUでは以下に述べるBEMSに代わってBACS(Building Automation and Control Systems)と命名しているがその内容は殆ど以下に定義するBEMSと同様の守備範囲であるので、BACS=BEMSと考えてよい。

TC205/WG3におけるISO/BACSの制定活動、BACSに関する詳細説明に関しては
こちら


 

 

 

 

BEMSとは

BEMS: Building and Energy Management System
BEEMS: Building、 Environment and Energy Management System

BEMSとはビル ・環境・エネルギー管理システムのことで、略して日本語でビル管理システム、BAという略号もしばしば用いられるここに包含される管理対象は固定的なものではなく、その範囲と形式、システム展開のルーツと利用者のターゲットは時代とともに、また関連者の認識とともにかなり流動的である。然し、最近は規格化の動向(ISO/TC205)やビル管理と自動制御ならびに情報通信内の密接な関係、省エネルギーやライフサイクル管理、故障検知制御などの先端技術管理への展開の動向により徐々に各界を通してその包含範囲についてのコンセンサスな関係がある。下図はBEMS(BACSとも云う)の守備範囲を示す。

BEMSの守備範囲

BEMSは建築設備システムの中央監視 ・遠隔制御に端を発する機器運転・環境状態監視・DDCにルーツを持ちつつ、コンピューター ・制御・環境・エネルギー・情報通信・維持管理・診断評価のキーワードの下に、アプリケーションの範囲と管理内容の深みと広さを広げ、ほかにルーツを持つOA(オフィスオートメーション)や電信電話及び企画管理系の情報処理システムと融合ないし関連を深めつつ展開してきたものであるこれはコンピューターや通信ネットワークシステム技術の展開 ・変貌に伴いつつ、個別から統合へ、統合から知的有機分散へと絶えず形を変えつつある。下の図はBEMSの発展過程を踏まえ、BEMS機能の階層的構成を示す。

BEMSの機能と階層構成

BEMSとBAなど、用語の考察
 

 

 

 

 

ビル管理システムは上記のようにその包含する範囲はかなり広く、それを建築設備の技術的範囲に限ってみても画然としないところが有るのは止むを得ない。管理対象は建築の環境 、ユーティリティーを司る設備の要素機器 ・システムの管理であり、そのためのツールである自動制御の要素、制御・監視機器、計算システム、情報通信システム、システムを動作させるに必要なエネルギー・物質の消費量 、またそれらの効率性、そして手動にせよ自動にせよ、これらの記録解析システムなどがある。

それにより、BEMSにおいては自動化というのが一つのキーワードであり 、それは省力化と環境の質の向上省エネルギーに通じる 、ということでビル管理システムはビルオートメーション(Building Automation、 BA) と呼ばれることが多い。これは先行した産業界のFA (Factory Automation) の対語であるからハードウェアのイメージを持った用語であり主としてメーカー側からの呼び名であると言えよう。Building Automationと言う言葉自体を見ると建設工事の自動化などのイメージの方が強いので他分野の人には誤解を招き兼ねない。

これに対して目的名称である環境・エネルギーさらにはその情報に基づく建築経営管理・FMの要素を含めて考えてキーワードを羅列すれば建築 ・環境・エネルギー管理システム(Building、 Environment and Energy Management System、 BEEMS)、或いは建築に環境要素を含めて解釈してビル ・エネルギー管理システム(Building and Energy Management System、 BEMS)と言う用語がユーザー側の要求を踏まえたソフトな用語として用いられる。ほかにその時々の時流また管理対象の焦点のあり方によって、EMS (Energy Management System)BMS (Building Management System)BAS (Building Automation System)BACS (Building Automation and Control System)などの用語と略号が用いられまた提案されている。建築設備と言う視点からはBEMS(英国日本)自動制御と言う視点からはBA、 BAS (ヨーロッパ一般米国日本)が、エネルギー/コスト管理と言う視点からはEMSBMS (米国)がよく用いられお国柄も伺われて興味深いところである。 現在進行中のBEMSのISO規格化の中では、国際共通用語としてBACS(自動管理制御システム)を用いることとしている。→コミッショニングのページ

BEMSと省エネルギー

文字通り、BEMSはビルエネルギー管理に直結している。ここに注意すべきは、

●室環境条件の制約無しの省エネルギーはビルにおいては有り得ない。                              ●エネルギー計量計測のハードとソフトの備えが無ければ省エネルギーは実現しない 。                ●エネルギー管理の経験ある人材が居なければハード・ソフトのみでは省エネルギー実現困難。

従来のわが国のBEMSはメーカー主導であったことやユーザーの認識不十分も有ってエネルギー管理機能が不十分である 。即ち、エネルギー管理に必要な用途ごと、系統ごとのエネルギー計量や、主要機器のエネルギー性能を集計分析する機能が不十分である。そういう意味では、従来のBA的な機能を主とするシステムを真にBEMSと呼ぶに相応しい形にするためにエネルギー管理機能であるEMS機能を重点的に補充する必要がある 。そうすることによってビルの省エネルギー化が推進されるであろう。

従って、BEMSへのエネルギー管理機能(EMS)の充実化と 、ビルエネルギー管理技術者の資格化と養成、これにともない地位向上とが、BEMSによる省エネルギー化実現には絶対必要項目である。

   BEMSと省エネルギー(ENEX2002講演資料)

                                                         

BOFD (ビル最適化・故障検知診断)

  BEMSの維持管理機能に属するものであるが 、従来のBEMSに装備されておらず、省エネルギー管理・快適環境管理のために今後最も求められる機能である。システム動作や環境・エネルギー性能の誤動作・不具合を検知し、さらにはシステムや建築の持つ根源的な欠陥を明らかにしてビルを最適状態に保持するシステムが必要。それが以下に論ずるBOFD(Building Optimization、 Fault detection and Diagnosis、ビル最適化とフォルト検知診断)である。

ビル最適化とは、各種のオンライン手法やオフライン手法を用い、エネルギー消費量と室内環境の観点から見てビルを最適な状態に保つことを言い、その手法には学習過程を含むフィードバック制御・フィードフォワード制御、オフラインのシミュレーションやエキスパートシステムを採用したオペレーターによる操作、そして建築設備とさらには建物構造の熱的/光学的性能の改良などが含まれる。
最適制御とは、人体の快適性と外部環境、時には生産性を拘束条件とし評価基準としてのミニマムエネルギーを達成するように、各制御ループの最適設定定点を決定することである。

BOFDは設計時点から運転管理時点に至るライフサイクルに亘る。そこでこれをライフサイクルBOFDと呼ぶ 。運転管理時点におけるBOFDはBEMSで採取されるデータのリアルタイム解析、或いはオフライン解析・シミュレーションなどによって不具合を検知・診断する。不具合検知にはトップダウン方式とボトムアップ方式があり 、前者はエネルギー消費性能及び環境性能の不具合検知から出発する。一方、後者は要素機器・サブシステムの性能悪化或いは故障等の不具合検知から出発するものであり、前者から出発しても最終的には要素機器 ・サブシスtレムレベルの診断に至る。

ライフサイクルBOFD全体構成図     BOFDのトップダウンとボトムアップ

 

LCCOM (ライフサイクルコミッショニング、性能検証)

コミッショニング(性能検証)は上記のBOFDや文書フォーマット、ガイドライン等をツールとして、制度的に性能検証を行う過程のことである 。建物の企画・設計段階から建設過程、受け渡しから運転管理段階に至るまでが対象になる。BEMSが稼動する受け渡し段階から運転管理段階においてはコミッショニングもまたBEMSにて採取されるデータを活用する最適維持管理のための重要なツールとなるので 、将来的にはBEMS活用対象として力点がおかれる。

ツールに視点を置いたライフサイクルコミッショニングの全体構造は、上記BOFDにおけるライフサイクルBOFDと同一の構造になる。

ASHRAE(米国暖房冷凍空調技術者協会)の定義
コミッショニングとはそれぞれのシステムに対して、システムが設計趣旨に合致した性能を発揮するように、設計施工ならびに機能試験が行われ運転保守が可能な状態であることを検証する過程のことである。本指針において性能検証は企画段階に始まり、それから設計・施工・始動 ・受渡し・訓練の各段階を含む建物の全使用期間(ライフ)にわたって適用され得るものである
  SHASE(空気調和・衛生工学会の定義                       建築設備システムが建物の生涯に亙って、環境 ・エネルギー並びに使い易さの観点から、使用者にとって最適な状態に保たれるように、求めに応じて性能を診断・検証し、必要に応じて発注者・所有者或いは使用者に性能改善法を提示することを目的とする。ここに環境とは、第一に室内環境の健康 ・快適性の保持を言い、第二にエネルギーおよび排出物質を最小限にして地域・地球環境保全に貢献することを意味する。検証の目的を全うするためにはこれを建物の生涯に亙って行うことが望ましい。この場合それを生涯性能検証(ライフサイクルコミッショニング)と呼ぶ。

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