雪の石畳の路……
第十三話 お土産物の想い出
=温泉街の夜=
「はぁ、美味しかったぁ」
満足な表情を浮かべる千草。
「はぁい、カニがとっても美味しかったです、すっごく満足」
恍惚の表情を浮かべる穂波。
「お兄ちゃん、ゲームセンターに行こう」
夏穂は元気に勇斗の腕を取ると、穂波と千草もその意見に同意するようについてくる。
「UFOキャッチャーやろうよ」
大抵こういう温泉ホテルのゲームコーナーというのは古いタイプのゲームとかしかないものだが、ここは比較的新しい機械が置かれている。
「夏穂やめておきなさいよ、絶対に取れないんだから」
苦笑いの穂波は夏穂をたしなめるように言う。
「えぇ、だってあのキタキツネ可愛いんだもん」
機械の中にあるキタキツネのぬいぐるみが夏穂のターゲットになっているようだが、それは取れそうな感じには見えない。
「よし任せておけ!」
胸をたたくのは和也だった、ってお前大丈夫なのかそんな安受けあいして? 俺にはきっと無理だと思うがな。
「和也兄ちゃんガンバ!」
夏穂は和也と肩を並べ機械に向かう、その隣で千草も覗き込んでいる。
「あぁ、惜しい!」
千草もなんだか真剣になっているようだが、ゲームにそんなに真剣にならなくっても……。
「先輩、お土産物見に行きませんか?」
ゲームセンターの隣にあるお土産物店、つい商売柄こういうところに来てもどういうものが置かれているのか真剣に見てしまう。
「フム……このレイアウトなら……」
勇斗があごに手をやりながら並べられている商品を見ていると穂波が苦笑いを浮かべて勇斗の腕を取る。
「先輩、今日はお客さんで来ているんですから……」
勇斗は頭を掻きながら穂波の顔を見る。
「ん? あぁ……ハハ、そうなんだけれどね、つい視線はそこに行っちゃうよ」
勇斗は頭を掻きながら苦笑いを穂波に向ける。
商売柄というのか、今売れ筋になっている商品がどういうものなのか、いい商材はないか、レイアウトをどのように配置しているのか等気になるところはいくらでもあり、ついそういう目で見てしまう。
「ねぇ勇斗、ちょっと表ぶらつかない? 夜の温泉街ってあたし好きなのよ」
千草が勇斗に声をかけてくる、その隣には和也と夏穂も同意を求めるかのような笑顔を勇斗に向けている、ちなみに夏穂の腕の中にはあのキタキツネのヌイグルミが抱きしめられているが、一体いくらそのヌイグルミにかけたんだか。
「そうだな……お土産も見たいし、ちょっと行くかな」
勇斗のその一言にみんな満足そうな顔を浮かべる。
「やっぱり涼しいなぁ……」
カラン、コロンと下駄の音を奏でる一行は同じ浴衣に丹前と行った格好で完全に夜の帳の下りた温泉街を歩く。
「ちょっと冷えますね」
勇斗の隣に寄り添い歩く穂波は肩をすくめる。
「あぁ、やっぱり標高が高いせいなのかな? 風がひんやりしているよ」
視線を穂波に移すと浴衣の胸元が勇斗の視界に入り慌てて視線をそらす。
「?」
その動作に穂波は首をかしげながら勇斗を見上げる。
「いや、なんでもない……あれ?」
ちょうど温泉街の目抜き通りに出たところに人だかりができている。
「なんだろう」
夏穂が好奇心旺盛な顔をしてその人だかりに飛び込んでゆく。
「ちょっと夏穂ちゃん」
それに続いて一葉も飛び込んでゆく。
「はは……」
勇斗と穂波は苦笑いを浮かべながらその後についてゆく。
なにがあるんだ? この時間にこれだけの人だかりができるなんて。
ちょうど他の旅館でも食事の時間を追えた頃ではあろうが、それにしても人がこれだけたかるというのも珍しいな。
「わぁ、面白い」
夏穂たちの視線の先には閻魔大王の像があり、その周りを稲光のように光がフラッシュしている、何か喋っているのだろうが、雑踏のせいでよく聞き取れない。
「顔が変わった」
勇斗の近くにいた小さい女の子が面白そうに声をあげる。
「先輩、何か見えますか?」
完全に出遅れた勇斗と穂波はその様子を人の頭越しにしか見る事が出来ない、近くにいる和也と千草にしてもそうだ、苦笑いを浮かべている。
「いや、良くは見えないがからくり人形のように顔がすげ変わったようだな」
人一倍背の高い勇斗にしてもその様子はよくわからない。
「お兄ちゃん! 面白かったよ」
人だかりが一気に散開すると夏穂は満面の笑顔で勇斗の腕に抱きつく。
「そうか……俺にはよく見えなかったよ」
勇斗も微笑みながら夏穂の顔を覗き込む。
「夏穂?」
様々な方向にグループが動いているが、そのひとつから夏穂の名前が呼ばれる、それに対して夏穂は反射的にその声の主に視線を注ぐ。
「エッ? 慎吾?」
その視線の先にどうやら夏穂は顔見知りを発見したようだ、驚いた表情で見ている、勇斗もその視線を追うようにするとそこにはまだ幼い顔をした男の子が一人立っている、その男の子も驚きの表情を浮かべている。
「なんで?」
夏穂のその顔は出会った嬉しさを忘れたかのように驚いた表情のままだ。
「何でって、うちの田舎こっちだから……温泉に泊まるっていうことになって」
男の子は夏穂とは正反対に顔の節々に嬉しさを隠しているようだ。
「そ、そうなんだ……」
勇斗の腕につかまっている夏穂の手に力がこもる。
「……その人は?」
怪訝な表情で男の子は勇斗の顔を見る、まるで敵を見るような険しい顔だ。
「あ、うん……この人は……」
夏穂はうつむきながら口こもる。
「……お兄ちゃん」
呟くようにいう夏穂の言葉は隣にいる勇斗と男の子にしか聞こえないようなか細い声だった。
「お兄ちゃん? そうかぁ、お兄ちゃんなんだぁ……よかった」
その言葉に男の子の顔に笑顔が戻り、そして勇斗を見る目からも嫌悪感が消えてゆく。
「……うん」
男の子の嬉しそうな表情とは正反対に夏穂はうつむいたままだ。
「はじめましてお兄さん! 僕は宮原慎吾です、夏穂……さんと同級生です、よろしくお願いします」
男の子は元気に頭を下げ自己紹介する。
「はじめまして、有川勇斗です」
勇斗もニッコリと微笑みながら慎吾の顔を見る、女の子にも似た長いまつげに大きな瞳は中性的で男の子や女の子に人気があるであろうと思う。
「夏穂もあそこに泊まっているの?」
慎吾は夏穂の着ている浴衣をみて今までいた建物を指差す。
「うん、慎吾は?」
夏穂はやっと顔を上げるがちょっとその頬は赤らんでいるように見える。
ははぁん、もしかして夏穂ちゃんは彼の事を……。
勇斗の顔に微笑が生まれ二人の顔を交互に見る。
「同じだよ、お母さん達と一緒だけれどね」
照れたように微笑む慎吾、まだその顔にはあどけない男の子といった顔だ。
「先輩、夏穂みんな先に行っちゃっいましたよってあら?」
迎えに来たのか穂波が駆け寄ってくる。
「彼は?」
穂波は微笑みながら夏穂、慎吾の順に顔を見つめる。慎吾はそんな穂波の微笑に顔を赤らめうつむく。
「はじめまして……宮原慎吾です……」
照れくさそうに慎吾はうつむき穂波を見る。
「はい、はじめまして、姉の有川穂波です、よろしくね、夏穂彼は……?」
穂波がそう言いながらニッコリと微笑むとさらに慎吾の顔が紅潮する。
「……慎吾君、ただの同級生よ、さ、行きましょ!」
夏穂はちょっと頬を膨らませながらそう言い勇斗の腕にしがみつく、まるで慎吾にそれを見せ付けるかのように。
「ちょ、ちょっと夏穂同じホテルなんだから一緒に……」
「いいじゃないのよ! あたしはお兄ちゃんと一緒に歩くの!」
慎吾の台詞をさえぎるように夏穂は声を荒げまるで大地に怒りをぶつけるかのようにどすどすと道を歩いてゆく。
「夏穂ちゃんいいのかい?」
勇斗は腕にしがみついている夏穂のことをみながら言う。
「そうよ、せっかく友達がいたんだもん、一緒に歩けばよかったじゃない? 結構可愛い子だったし」
穂波は意地の悪い顔でそういう。
ひょっとして穂波にそういう趣味があったのか?
勇斗のその視線に気がつく穂波は慌ててその疑惑を否定するように首を大きく横に振る。
「いいの!」
夏穂は憤然極まりないといった様子でどんどん歩いてゆく。
「はは……」
穂波と勇斗は顔を見合わせて夏穂の後ろを歩く。
「慎吾の馬鹿……浮気もの」
その呟きは勇斗たちには届かず夏穂の身の回りだけに漂った。
「夏穂ちゃ〜ん」
あるお土産物のお店で一葉が夏穂に向かって手を振っている。
「一葉さん?」
その姿に夏穂は首をかしげる。
「ほら、夏穂ちゃんの好きなやつ……ここにはあったよ」
一葉の視線の先にはキタキツネをモチーフにしたキャラクターグッズが置かれている。
「アァ〜、NorthFoxシリーズ……まだあったんだ」
勇斗がそれを見ると懐かしい気持ちに陥る。それはまだ勇斗が高校時代にお店でバイトをやっていたときに流行っていたシリーズでNorthFoxシリーズと呼ばれていた、しかしお土産物の流行り廃りが早く、勇斗が大学に行っていた頃には既にこのシリーズは廃番シリーズになっていた。
「へぇ〜、まだこのシリーズを取り扱っている卸店があったんだ」
勇斗はハンドタオルを手に取り懐かしそうな表情を浮かべる。
「そうみたいですね、うちに出入りしているところは軒並みやめたといっていましたが」
一葉もそのキャラクターの描かれたマグカップを手に取る。
「ねぇ、お兄ちゃん、うちのお店でも扱えるようにならないかなぁ」
懇願するような夏穂の目は、いつものような子供っぽいものではなく、少し大人っぽいような表情だった。
「うーん……販社が分かればなぁ」
勇斗はハンドタオルを持つと、お店の人が勇斗に声をかけてくる。
「いらっしゃいませ、いかがですかキタキツネシリーズ、可愛いでしょ?」
ニッコリと微笑む店員に向かい勇斗は微笑み返しながら手に持っているハンドタオルを購入する。その様子に穂波は満面の笑みを浮かべる。
「あのですね、僕は函館にある『有川商店』というお土産物店の店長をやっておりまして、実はこの商品の仕入先をご紹介いただけないかなと思いまして」
代金を支払い商品を手にすると勇斗は店員に向かって名刺を差し出す。すると店員は困惑したような表情を浮かべ店長を呼ぶから待てといってきた。
「ハイ?」
店の奥からは初老の男性が薄くなった頭を撫ぜながら怪訝そうに勇斗たちを見る。
「はじめまして、私こういうものです」
勇斗はさっきと同じように名刺を初老の男性に渡すと、その男性は名刺をじっくりと見てから勇斗に店の奥に来るように指示する。
「……と言う訳で、もしよければこの商品を扱っている卸店をご紹介いただけないかなと思いましてね」
お茶を飲みながら勇斗が用件を一気に伝えると初老の男性、このお店の店主である三橋茂はつぶっていた目を開きぎろりと勇斗の顔を見る。
「……若い店主のわりにしっかりしているな」
茂はそう言いながら勇斗の顔を見つめる。
「本来あまりそういうことは教えたくないのは分かるよな、商売敵になるわけだからな、しかし、登別と函館なら影響は無いだろう、わかった、今ここの営業の名刺を渡すから電話してみるといい、俺からも話をしておいてやる」
その一言に勇斗と隣にいた穂波は顔を見合わせながら微笑む。
「ありがとうございます」
穂波がペコリと微笑み茂を見ると茂は優しい目で穂波を見、そして勇斗を見る。
「これだけ可愛い奥さんがいるんだったら頑張るよな?」
その一言に穂波は真っ赤になりうつむく。
「はっ?」
勇斗は首を傾げるがその行動に茂は実に楽しそうに笑い飛ばす。
「これは失礼、まだ早かったかな?」
茂はそう言うと再び声高らかに笑い出す。
「そんな、奥さんだなんて……」
穂波はその言葉にいちいち反応をしている。
「三橋さんものすごい誤解をしていたよね?」
茂から貰った名刺を大事そうに丹前の袂にしまい込みながら勇斗は団体のことを見つめる。気がつくと三々五々ではないがいつの間にか連れ添っている相手が決まっているようだった。夏穂は一葉と楽しそうに話をしているし、千草も気が付けば和也といい雰囲気に見える、ちょっとつまらなく思うのは勇斗のヤッカミなのかもしれない。
「アハ、そうかもしれませんね? でも……」
穂波のその後の言葉は近くを通過して言った観光バスの排気音に消されていた。
「ん? なに?」
勇斗のその一言に穂波はうつむきながら首を横に振っていた。
「ううん、なんでもないです、先輩、早くしないとみんなに遅れてしまいますよ?」
穂波はそう言いながら勇斗の腕を取りながら歩き出す。
「おっ? オウ、そうだな」
いつに無い穂波の仕草に勇斗は戸惑いながらも、その穂波に歩調を合わせる。
=温泉の夜=
「もう一回風呂に入ってくるよ」
勇斗は半渇きのタオルを持ちながら腰を上げる。
「あたしは明日入るよぉ」
千草はそう言いごろんと横になる。
「あたしも入ってこようかな?」
既に寝息を立てている夏穂を尻目に穂波は遠慮がちに腰を上げる。
「一緒に行くか?」
勇斗のその一言に穂波は嬉しそうな顔をして大きくうなずく。
「ごゆっくり」
なんだか意味深な言い方だな? 一葉さん。
穂波もそんな事に気がついたのかちょっとうつむき加減で勇斗の後に続いて部屋を出る。
「また温まり過ぎた……」
露天風呂に浸かりながら星を眺めていた勇斗は再びのぼせ上がってしまった。
苦笑いを浮かべる勇斗はエントランスのソファーに腰を下ろしながら滴り落ちる汗を拭くのに一生懸命だった。
「先輩?」
女湯ののれんをくぐって出てくるのは穂波だった。
「よぉ、長湯だな」
勇斗は汗を拭いつつ袂にある小銭入れを探り取り出す。
「先輩ここはあたしが出します、さっきおごってもらったから今度はあたしがおごりますよ」
ニッコリと微笑みながら穂波は可愛らしい小銭入れからお金を取り出し自動販売機にそれを投入する。
「ビールでいいですか?」
何気なく楽しそうな穂波は振り向きながら勇斗の顔を見る。
「あぁ」
そんな穂波に対して勇斗は動揺する。
「あたしは……チュウハイでも飲んでみようかな?」
穂波は好奇心旺盛な顔で缶チュウハイのボタンを押す。
「飲めるのか?」
勇斗はちょっと心配になり穂波の顔を見る。
「このぐらいなら大丈夫ですよ……それに先輩と一緒だからもし駄目だったら部屋まで連れて行ってくださいね?」
意地の悪い顔をしながら穂波は缶のプルトップをひく。
プシィ〜
「乾杯です」
穂波はそう言いながら缶を持ち上げる。
「あぁ、乾杯」
勇斗もその穂波の笑顔につられるように笑顔になる。
「ねぇ、先輩」
勇斗がビールを飲み干した頃に穂波はまるで酔っぱらったように目を潤ませながら勇斗の顔をジッと見つめる。
「ん?」
勇斗はそんな表情にちょっとドキッとしながら穂波の顔を見る。
「さっき先輩の買ったハンドタオル覚えていますか?」
穂波はそう言いながら缶を弄ぶ。
「???」
勇斗はよくわからずに首をかしげる。
「エヘ、やっぱり覚えていないですよね? これですよ」
穂波は持っていたポーチの中から古ぼけたハンドタオルを取り出す。それはさっき買ったハンドタオルと同じNorthFoxシリーズのイラストが描かれているものだった。
「これは?」
勇斗はそれを見て得もいえなく懐かしい感じを覚える。
「これは先輩のお店に行ったときにもらったものなんですよ」
何度も洗濯されているのであろう、さっき買ったものと同じと思えないほどに色は落ちてくすんでいる様にも見えるそのタオルを穂波は大事そうに抱きしめる。
「もらった?」
勇斗は記憶を必死に巻き戻すもののなかなかその記憶は蘇ってこない。
「そうです、あたしが中学のときにもらったんです、先輩から」
雪の降りしきる中ひとりの女の子が泣きべそをかいている、その娘に売り物のタオルをあげた記憶がある。
「あの女の子が?」
勇斗は鮮明ではないものの、そのときの光景を思い出す。
「はい、ぶっきらぼうでしたがとても嬉しかったんですよ、先輩のあの心遣い」
真っ赤な顔をした穂波は目尻に涙を浮かべている。
「だから、今でもこのタオルはあたしの宝物なんですよ」
ニッコリと微笑む穂波に対し勇斗の心は激しく揺さぶられる。
「穂波……」
「先輩……」
二人の視線が絡み合う。周囲には人影は無い。
「穂波……」
勇斗は穂波の肩を抱こうと腕を上げる。
「先輩……やっぱり駄目です」
穂波の一言に勇斗はドキッとする。
「何で?」
勇斗はチョと残念な気になり穂波の顔を見る、その顔は真っ赤になり、今にも湯気が出てくるのではないかというほどになっている。
「これ以上飲んだら酔っぱらっちゃいます、先輩飲んでください」
ニッコリと微笑む穂波に対して勇斗が完全にガックリと肩を落とす。
「アッ、でも間接キッスになりますね?」
ちょっと照れたような表情で穂波はその缶を見る。
「気にすることないだろ?」
勇斗はそう言いながら半分以上残っているであろうその缶を一気にあおる。
「エヘヘ、ちょっと照れますね」
穂波はそう言いながらも頬を桜色に染め嬉しそうな顔をしていた。
「さて部屋に戻ろうか」
勇斗はそう言い立ち上がるとそれに同意した穂波も立ち上がるが、足がもつれるようにして勇斗に抱きつくように倒れこむと、フニッと勇斗の胸にやわらかいものがあたる感覚がはしり、勇斗の顔が一瞬にやける。
「ご、ごめんなさい」
穂波は慌てて勇斗から離れる。
「はは、酔っぱらったのかな?」
勇斗はそう言いながら穂波の腕を取る。
「ハァ、そのようですね、足がちょっとふらついてしまいました」
真っ赤な顔をしながら穂波はその勇斗の腕にしがみつく。
「歩けるかい?」
勇斗にしても顔を赤くして穂波の顔を見る。
「ハァ、何とか……先輩?」
穂波は勇斗の腕に抱きついたまま勇斗の顔を見上げる。
「ん?」
「もう少しこうしていて良いですか?」
そういえば久しぶりに穂波と腕を組んだ気がする、穂波からはシャンプーの香りがして勇斗の中枢を刺激する。
「そうだな……久しぶりに良いかも知れないな」
二人は寄り添いながら部屋に戻るエレベーターに乗り込む。