雪の石畳の路……
Summer Edition
第二話 七人
=ガイドブック=
「なんだか店先が賑やかだなぁ」
レジに座る和也がそう呟きながら背伸びをして店先をのぞく。
「お客さんかな?」
隣にいる夏穂も背伸びをするが、背の低い夏穂のそれは背伸びをしても和也の通常の背の高さにかなわない。
「久しぶりね勇斗! 元気そうで何より」
その声に穂波の耳がピクリと反応したかと思うと、整理していた商品を投げ出し、脱兎のごとくその声に向かって駆け出す。
あの声は……あの声は……あの声わぁ〜!
聞き覚えのある声に無意識に穂波の身体は反応した。
「一体今日は何しに来たんだ? からかいに来ただけではないだろう」
勇斗はそう言いながら皮肉な表情を浮かべ直子に向ける。
「何しにきたんだなんて、つれないこと言わないでよぉ」
直子はそう言いながら勇斗の顔を上目遣いで見上げ、身体を摺り寄せる。
「やっぱり、黒川先輩!」
その声に直子は首をすくめる。
「ほ、穂波ちゃん? 何であなたがここに?」
珍しくあの直子が動揺しているな?
直子は穂波の顔を見ながら素直に驚いた表情を浮かべている。
「何でって、あたしはここで働いているんです、ここは、あたしの家なんです!」
憤然極まったような顔で穂波は直子に詰め寄る。
「あたしの家って……ここは勇斗のお父さんのお店……まさか、勇斗あなた穂波ちゃんとぉ!」
あぁ〜、また誤解しているようだな……。
勇斗は手で顔を覆いながらうなだれる。
「そ、そんなんじゃないですけれど……でも、あたしの家なんです!」
穂波は躊躇しつつも顔を赤らめ毅然と直子の顔をまっすぐ見つめる。
「……よく分からないわ」
直子は大げさに両手を広げ、首を横に振る。
だろうな、説明する身にもなってもらいたいよ……結構面倒なんだ、説明するの……。
勇斗はため息をつきながら直子の顔を見る。
「……と言う訳だ」
店先の縁台に腰かけ、勇斗は麦茶を飲みながら直子に事細かに今までの経緯を話す。
「ふぅ〜ん……なかなかヘビーな話ね?」
直子はそう言いながら一葉の入れた麦茶に手を伸ばす。
「俺もそう思うよ、最近ようやく慣れてきたけれどね?」
そういう勇斗の隣にはいまだ頬を膨らませている穂波がまるで敵を見るようにジッと直子を睨みつけている。
「確かにそうかも……でも、そうなると穂波ちゃんと勇斗は義理ではあれ兄妹になるわけでしょ? ということは……」
直子がそこまで言うと、ガバッと穂波は勇斗の腕に抱きつく。
ちょ、ちょっと穂波?
驚いた顔で勇斗が穂波の事を見ると、その穂波の瞳には涙が光っている。
「そうですよ……そうなんですけれど……」
穂波は勇斗の腕を力強く抱きしめる、まるで勇斗のことは誰にも渡さないというように。
「……あは、ゴメン穂波ちゃん、意地悪だったわね」
そう言いながら素直にぺこりと頭を下げる直子に拍子抜けしたような表情を浮かべる二人。
「直子?」
「それにしても本当に暇そうね? 何とかしないといけないんじゃない?」
話題を変えるように直子は立ち上がり周囲を見渡す。
相変わらず話題がコロコロ変わる娘だな……しかし図星だ。
「まぁな、しかし人通りを変えられる訳もないし、呼び込むだけの財政力もうちにはない、流動的に来る客を引っ掛けるしかないよ」
勇斗もそう言いながらまばらな人通りを眺めながらため息をつく。
「そうね? それよりも、相変わらずお店の名前は『有川商店』のままなの?」
店のたたずまいを見ながら直子はため息をつく、その様子に勇斗は少しむっとしたような顔になる。
「あぁ、お袋の時代から変わっていないよ、特に屋号で商売しているわけでもないし」
この店ができたときから店の名前は変わっていないし、変えるつもりもない。
「でも、屋号があったほうが紹介しやすいわよ」
「へ?」
直子の一言に勇斗だけではなく隣にいた穂波の首も傾く。
「だから、ガイドブックとかで紹介するには屋号があったほうが特定しやすいのよ……特にこの辺りって朝市のお店があったりして同じような名前が多いから」
あのぉ〜……直子さんの言っていることが良く分からないんですけれど……。
勇斗は穂波と顔を見合わせる。
「黒川先輩のおっしゃっている意味が良く分からないのですが……」
穂波が勇斗の言葉を代弁するように口を開く。
「ん? あぁ、言うの忘れていたわね、あたし今こういう仕事をしているの」
直子は持っていたセカンドバックから名刺入れを取り出し、その中から名刺を二人に渡す。
「……『ほっかいどうマガジン社』編集黒川直子って……直子お前……」
名刺に書かれていた会社の名前は、道内で発売されているガイドブックを発行している出版社の名前が書かれている。
「そういうこと、函館出身だったらって編集長がこの地区を担当にしてくれたの、これからもよろしくね?」
軽くウィンクする直子のことを勇斗は、名刺と一緒に見比べ、その隣にいる穂波は憮然とした顔で見つめている。
「紙を媒体にした、うちの『ほっかいどうスクエアー』に掲載するのは時間的に無理かもしれないけれど、うちのホームページに載せる事は可能だと思うの」
場所を応接兼居間に移し直子の話を聞く。
『ほっかいどうスクエアー』といえば、道内の空港やJRの主要駅にある本屋に必ず置かれている観光誌、観光客も良くそれを持って巡るという話を聞いたことがある、それに掲載してもらうということはかなりの宣伝効果になることは間違いないだろう、しかし……。
「でも、宣伝費とかかかるんじゃないのか?」
そうだ、効果があるということはタダという事はないだろう。
「うふ、ガイド誌に載せるにしても、広告でなく紹介という形であれば特にお金はかからないわ、でも、紹介する以上はそれなりの目玉がないといけないし、ユーザーの視点で見なければいけないの……つまり」
直子の顔はさっきまでのおどけた様子とは変わり、すっかりと営業といった顔つきに変わっている。
「……つまり?」
直子の言いたい事はわかっている。
「……ガイド誌を見て個人商店のような名前では探し難いし、入り難いの……あなたもガイド誌を見てそう思うでしょ?」
直子は真剣な顔で勇斗の顔を見つめる。
確かにそうかもしれない、特にこの函館という街は個人商店が多く、特別な屋号をつけているお店というのは少ないような気がする。
「あなたのお店には目玉があると思うの、紹介するだけの価値があるお店だと思うわ、それはいろいろなお店を回ってきたあたしの勘みたいなものだけれど、でも、紹介し難いのよ、ここは……」
そういう直子は勇斗の顔を一直線に見る。
「……店の名前を変えろ……と言う事か」
勇斗のその一言に沈痛な面持ちで直子がうなずく。
「でも、このお店の名前は先輩のお母さんとお父さんがつけた名前、そう簡単に変えられるわけないじゃないですか、そんなのあんまりです!」
穂波が隣で悲鳴にも似た声を上げるがそれを勇斗はやさしく促し、直子の顔を見る。
「……少し考える時間をくれないか」
勇斗はそう言いながら腰を上げる、その様子はいつものそれとは違っていた。
「先輩……」
「勇斗……」
部屋を出るそんな勇斗の後姿を直子と穂波は黙って見送っていた。
=想い出=
「いらっしゃい! 見るだけならおまけだ、タダでいいよぉ〜」
店の中にはいつもと同じように勇斗の声が響き渡る。
「先輩、いつもと同じ……」
穂波はそう言いながら一葉と共に乱れた商品を並べなおす。
「そうね?」
二人の視線の先では忙しそうに動き回っている勇斗の姿、それはいつもと変わらない光景だが、ちょっと人が切れるとぼんやりしているようにも見える。
「やっぱりこのお店の名前には愛着があるんでしょうね?」
穂波のその一言に一葉は言葉なくうなずきながら店内を見渡す、天井から下がっている裸電球に所狭しと並べられたお土産品、少し古ぼけた感じの店内だが、それを逆手にうまくレイアウトしているのは勇斗と、その父親鉄平だった。
「それにしても穂波ちゃん、あの黒川っていう娘は一体誰なの? 勇斗さんの同級生という事は分かったけれど、だいぶ穂波ちゃんの反感を買っているようだけれど」
意地の悪い顔を一葉は穂波に向けると穂波はちょっと照れたようにうつむく。
「はぁ、黒川先輩は先輩……勇斗さんの同級生なんです」
モジモジしながら穂波はそう言う。
「……でも、穂波ちゃんと勇斗さんは付き合っていたんでしょ? 公認で」
一葉は首をかしげながら穂波の顔を見ると穂波は苦笑いを浮かべる。
「はぁ、一応は……でもあの黒川先輩だけは関係ないように先輩にちょっかいを出してきたんですよ……まるであたしを挑発するように」
ため息交じりの穂波はそう言いながら天を仰ぐ。
「勇斗ぉ〜」
教室の中に直子の声が響き渡る。
「ん?」
眠たそうな顔をしながらカバンに教科書などを詰め込み勇斗はその声の主に顔を向けると、一瞬にして苦笑いが浮かび上がる。
「なによぉ、そんな嫌そうな顔をしなくたっていいでしょ? せっかくこんな可愛い娘があなたに声をかけているんだから」
無い胸を張りながら直子はその場にふんぞり返る。
「別に待っていてくれと頼んだ記憶は無いが……それに、俺はこの後あいにくと部活だ」
勇斗はそう言いながら学生服の第二ボタンまでボタンを外す。
普段でも第一ボタンを外し先生から小言を賜るのだが、最近はなにも言われなくなったのは、インターハイで準優勝したせいなのか、それとも諦められたのか……微妙だな。
「あら? それは奇遇ね、あたしもこれから部活なの、放送部として『インターハイ準優勝の有川勇斗のインタビューを取る』というね?」
……ハハ、それはどうも……。
勇斗はその一言に苦笑いを浮かべながらうなだれる。
「先輩! 今日は『函館日報』の記者さんが見える予定です!」
教室に入ることができないように扉から身を乗り出し穂波が勇斗に対して大きな声で声をかけてくる。
「勇斗、マネージャーが騒いでいるぞ、マネージャーの言うことは守らないとな! キヒヒ」
同級生の男子が勇斗に対し皮肉な微笑を見せる。
「やかましい! 帰るならとっとと帰りやがれ!」
勇斗のその一言にその男子は意味深な微笑を残しながら教室から退散してゆく。
すでに一部の同級生にはバレている様だ『有川は、飯島穂波と付き合っている』ということが……事実なんだが。
夏休み、インターハイが終わりマネージャーとして尽くしてくれた穂波に対してはそれまでの感情とは違ったものがあった、それは、今までの同級生に対してとは違った感情だった。
「へぇ〜、やっぱり本当だったのかな?」
隣で直子は意地の悪い顔をしながら勇斗の顔を見上げる。
「な、なにがだよ」
そう言いながらも勇斗には薄々感づいていた、そもそも学校始まって以来の快挙らしいこの功績は、生徒だけではなく先生までもが称えてくれている。そうなると次に民衆が欲しがるのは……そう、スキャンダルだ。
「……有川勇斗のハートを射止めたのは、一年二組の飯島穂波ちゃん!」
直子はそう言いながら扉の所でいきりたっている穂波の事を見る。
「そっ……」
否定しようかなとも思いながら、ちょっと嬉しい気持ちも働き勇斗は言葉に詰まる。
「ウフフ、図星だったのかしら?」
そういう直子の顔は少し寂しそうに見えたのは自身の驕りなのかな?
「……想像に任せるよ、別に俺はそんなことには、興味は無いからな」
うそだ、さすがに最近異性のことが気になってきていることは間違いの無い事実、そうしてその気になる相手は……。
勇斗はさっきから扉の所で頬を思いっきり膨らませている穂波のことを見てクスッと微笑む。
「ふーん……興味ないねぇ……」
直子はそう言いながら勇斗の視線の先にいる穂波の事を見つめる。
「先輩、一緒に帰りましょう」
いつものように校門では穂波がニッコリと微笑んで待っている。
「あぁ、いつも待たせて悪いな」
穂波はいつもここで勇斗のことを待っている、石畳の坂道からは函館港が見渡すことが出来、海に浮んでいる『摩周丸』や『巴大橋』も見ることが出来る。
「いいえ、あたしここから見る景色大好きだから苦になりません……それに必ず来てくれる人もいるし……」
穂波はそう言いながら頬を赤らめうつむく。
「ハハ……そりゃどうも……」
勇斗もその一言に頬を染める。
照れるぜぇ……女の子にそんな事言われたのははじめてだ。
二人は互いにうつむきながらその石畳の坂道に足を踏み出す。
「やっぱり付き合っているんじゃない?」
背後からの声に驚き振り向くと、そこにはニヤニヤした顔をして直子が立っている。
「く、黒川先輩、べ、べ、別にあたしたちそんな……ただ、あたしはマネージャーで……」
取り乱したように穂波は手を振り勇斗から離れる。
ただのマネージャーが帰りを待っているわけねぇべ?
「ただのマネージャーが帰りを待つわけがないでしょ?」
ほら、言われた……。
勇斗と共に直子は苦笑いを浮かべながら穂波のことを見つめ、ふっと笑みをこぼす。
「別にスキャンダルにするつもりなんてないわよ、ただ、このぶっきらぼうな男に惚れる女なんているんだなって素直に驚いただけ」
えらい言われようなんですが……。
「ほ、ほ、惚れるだなんて……」
穂波の顔はまるで熟しきったトマトのように真っ赤に変化し、頭から湯気が出そうな勢いだ。
「直子……趣味悪いぞ」
勇斗は苦笑いを浮かべながら直子の事を見る。
「エヘヘ、でもあの勇斗に彼女ねぇ……少しショックかな?」
直子はそう言いながら勇斗の顔を覗き込む。
「……黒川先輩、まさか」
穂波のその疑問符に直子は意味深な笑みを浮かべる。
「べぇ〜つにぃ、なんでもないよ!」
直子はそう言いながら坂道を駆け出していった。
=命名=
「お疲れさん」
穂波が夕食の片付けをしていると居間に勇斗の父親でありこのお店の社長でもある鉄平と、穂波の実の母親である穂乃美が顔を揃えて入って来る。
「お母さん、どうしたのこんな時間に……」
キッチンから穂波はその姿を見つけ、素直に驚いた表情を浮かべる。
「旦那さんも一緒なんて珍しいですね?」
一葉もビールが注がれているグラスを持ちながらきょとんとした顔を鉄平に向けている。
「……俺が呼んだんだよ」
店から勇斗が顔を出し、喧嘩を売るような目つきで鉄平を見る。
「そうだ、勇斗に呼び出された……こいつの話があるというのは怖いからな、飛んできたぞ」
鉄平はそう言いながらもシレッとした顔で勇斗のことを見る。
「ハハ、生憎とそうだな……本当は親父に頭なんて下げたくないんだが……」
勇斗はそう言いながら鉄平の前に歩み寄る。
「……勇斗さん?」
オロオロしたような表情で穂乃美は鉄平と勇斗の事を交互に見る。
「……先輩」
穂波も泡のついたお皿を持ったままキッチンから体を出している。
「勇斗さん……」
一葉にはこの後、勇斗が何を言うのかが分かったような表情になり、少し沈痛な面持ちだ。
一生に一度あるかどうか……俺がこの親父に頭を下げるなんて……でも、俺はこの店を守りたい、お袋との想い出のあるこの店を……そして……。
勇斗が顔を上げるとみんなの視線が一気に集中する。
「……この店の名前を変える……」
この一言にみんなが息を呑む。
「先輩? なんで……このお店は想い出じゃないんですか? 先輩と、お父さんと、お母さんの想い出のお店なんですよね? なのに何でお店の名前を変えるんですか?」
長い沈黙があったと思うと一気に穂波の涙声が聞こえる。
「……そうだ、想い出なんだよ、だからこの店を失いたくないんだ……名前なんてどうでもいい、ここは今も昔も『俺の家』なんだ、屋号なんて関係ない、でもこの場所を失うのは本当に辛いんだ……もうだれも失いたくない」
このままでいけばきっとこの店も失うことになる、そうすれば今ここにいるみんなが離れ離れになってしまう……屋号を変えることによって生き残る事ができるのであればそっちの方がまだ良い、失うものはないのだから。
「勇斗さん……」
一葉はそう呟きながら嬉しそうな表情を浮かべている。
「……勇斗……」
普段はノホホンと昼行灯のような表情をしている鉄平もさすがに驚いたのか、眼をつぶりじっと考えている。
「親父……」
さっきまで勇斗に向いていた視線が鉄平に注がれる。
「……今の店長はお前だ、お前の思うようにするといい、しかし、これから新たにこの店を作っていくのもお前だ、今までの想い出を残しながら新しい想い出を作っていけ、それだけだ」
鉄平はそう言いながら、手元に置かれたビールに口をつける。
……親父。
「そうと決まれば次はその店の名前だ」
鉄平はそう言いながら勇斗にビールを注ぐ。
「そうですね、勇斗さん、何かいい名前ありますか?」
穂乃美はニッコリと微笑みながら勇斗の顔を見る。
「……ハハ、そこまで考えていなかった」
みんなからの視線は呆れたものに変わった。
だって、名前を変えることしか考えていなかったんだぜ? その先のことなんてまったく考えていなかったよ。
苦笑いを浮かべる勇斗に対し穂波は真剣に何かを考えている様子だった。
「あのぉ……」
穂波のその真剣な表情に明るさが注したとき口を開く。
「穂波、何か良い案でもあるの?」
穂乃美はそう言いながら優しい顔で穂波のことを見る。
こうやって穂乃美さんと穂波を比べるとやっぱり親子だなよく似ているよ……ってなに感心しているんだろう、俺。
苦笑いを浮かべる勇斗に穂波は嬉しそうな表情を向ける。
「うん、ちょっと考えたんですけれど、このお店に携わっている人って七人ですよね?」
俺に穂波、一葉さんに夏穂ちゃん、和也、穂乃美さんに親父……確かにそうだな。
「七という数字で思い出すのが『すばる』です、夜空に輝くプレアデス星団のことを言うんですが、ちょうど同じだなって」
へぇ、穂波のやつ物知りだな。
「それによく函館の夜景は『地表に降りた星空』なんてロマンチックな事も聞きます、それだったらその星空の中にあるお店で『すばる』なんて……ちょっとキザですかね?」
穂波は耳まで真っ赤にして勇斗の顔を見る。
「フム『すばる』かぁ……」
「いいんじゃないか? 確かこの函館に縁のある石川啄木が参加していた同人誌の名前も確か『すばる』だったと思うし、何よりも七人が輝いているという響きが気に入った」
勇斗の台詞の横から鉄平が感極まったようにそういう。
なに熱くなっているんだ、この親父は……。
苦笑いを浮かべる勇斗の隣では鉄平が涙を流さんばかりに感動した表情を浮かべながら穂波の事を見ている。
「……決まりみたいだな?」
勇斗はそう言いながら周りにいる人の顔を見回す。鉄平は相変わらず感銘したように何度もうなずいているし、その隣にいる穂乃美もニッコリと微笑んでいる、一葉も苦笑いを浮かべながら勇斗を見ているし、名付け親である穂波は困惑したような表情を浮かべている。
「命名『すばる』という事で、これからも皆さんよろしくお願いします」
勇斗はペコリと頭を下げる。