Wed. 99/11/10 闘病日誌その1
私は雲竹斎。
女将もあちこちに書いていたが、先日、私は生まれて初めて入院と言う体験をしたゥそれとも、病院で生まれ、一週間そこにいたので、生まれてからは二度目ということに
なるのだろうか。ま、そんなことはどーーでもよかろう。
その日、朝から体調が悪く、近所の行きつけの小児科に行った私は、
いつも親切な女性の医師に「今晩あたり悪くなる可能性があるので二次救急の当番病院を調べて
おいた方がよろしいですね」と言われ、そんなに悪いのかゥA少々落ち込んだものの、
帰宅すると、すぐに女将に消防に電話をさせ、一週間分の当番病院を調べてもらった。
その後、昼食を取り昼寝に入ったまではよかったのだが、夕方目を覚ますと、どーーも調子が悪い。
咳も出、顔が少々火照った感じであった。調子が悪かった私の体調を気にして、早めに帰宅していた
旦那に抱かれていても、暴れる元気もない。流石に心配になった女将は、早速救急指定の病院に電話を入れ、
そのまま旦那の運転する車で病院へ直行した。
知的な手品師のような医師(いったいどんなゥjの診察と憎むべき"吸入"の後に「今日は帰らない方がよいでしょう」の一言で、
私の入院が決まった。
あわてたのは女将である。まさか、私がそのようなことになるとは思っていなかったようで、
少しばかりショックを受けているようであった。通常なら、「元気を出せよ」と一声かけるところであるが、
そのときには熱も出ており、励ますつもりで女将をじっと見つめるのが関の山であった。
それから、私は病棟に移り、女将とも旦那とも一時引き離され、血は採られるは、針は刺しっぱなしで管をつながれるわ、
柵の中に入れられるわで、すっかり疲れて寝てしまったのであった。
その間、女将は医師や看護婦の話を聞き、"付き添い"か"お預かり"かの選択を迫られたらしいが、
私にぞっこんの女将は迷わず "付き添い" を選択したようである。
こうして、私と女将の「四泊五日小児病棟入院生活」が始まったのであった。(つづく)
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Sat. 99/10/16
私は雲竹斎。
このところ、私は女将の新車購入に伴い、西へ東へ行動範囲が広がっている。
先日は、以前から旦那の車でよく行っていたショッピングモールに行き、
例の如く防災設備、防犯設備のチェックに加え、買い物客が利用するエスカレーターの
手すりのすべり具合や回り具合などを調査した。女将はさかんに、「危ないから止めろ」と、
私の任務遂行を阻止しようとする。私の任務が危険を伴うことは、私とて承知している。
だからといって、男児たるもの、自分の身可愛さに、任務を怠ることは許されないのである。
従って、女将の強制執行的阻止にも、身をよじり、声を張り上げて抵抗をするのであるが、
女将の腕力には到底かなわない私であった。
そのようなわけで、大型施設の設備関係の調査は女将に邪魔されることが多いため、
この2、3日は、「身近な防災」をキャッチフレーズに、女将の新車のチェックを
入念に行うことにしている。何故なら、納車の翌日、女将を伴って海岸公園に行った折、なんと、ハンドルロックの電子錠が
ぽろっと落ちたのである。つまり、壊れてしまっていたのである。
女将は、しばらくいじっていたが、走行に問題がないとわかると、
意外にあっさりと調査を止め、私に散策を促した。しかし、購入したばかりで走行時間も
1時間にも満たない新車の鍵が壊れたのである。こんな、消費者を馬鹿にした話はない。
しきりに散策をしたがる女将を、半ば無視し、私は車輪の回り具合、サドルの安定性、
チェーンボックスの強度、前輪の空気圧等々、じっくりと観察した。女将の新車は、2000年モデルとかで、電子錠付の最新型だと、
女将は悦に入っている。ま、新車と言ってもたかが"ママチャリ"。
2000年モデルだろうが、1999年モデルだろうが、関係ないと私などは思うのであるが、
だからといって、安全チェックを怠ることは私の職務上許されるものではない。
そんな私の真摯な態度に押されてか、女将も帰宅の途中で、購入した店に立ち寄り、
事情を説明し、鍵と錠を無料で交換してもらうこととなった。
それに伴い、店側に薦められて購入した私専用の座席が実は鍵にぶつかって破壊に繋がったことが判明し、
なんと、ワングレード上のタイプの座席に無料交換というおまけまでついたのである。
今日は、そのグレードアップした座席に初乗車だったのだ。
もちろん、鍵と錠を変えたばかりであり、しかも座席も新型ということで、
私は、仕事が増えてしまったことを少々億劫に思いながらも、新しい使命に燃えて、
女将の前方に腰を降ろし、まずは乗り心地を確認することにした。
しかし、この2、3日の調査活動がハードであったせいか、私は、不覚にも、車上で
居眠りをしてしまったのだった。気がついたときには、いつも女将と行く店よりも少し西寄りにある、
これまた、旦那の車でしか来ることがなかったスーパーマーケットの、
店内専用ベビーカーに乗せられていた。
居眠りをしてしまうくらいであるから、乗り心地自体は悪くないのだろう。しかし、
快適であることと、安全であることが必ずしも一致するとは限らない。明日からの、
完全なる任務の遂行を目指し、今日の原稿は女将に任せて、私は早々に寝させてもらったのであった。
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Mon. 99/09/27
私は雲竹斎。
実に二週間ぶりである。この間も、私は地域の防犯・防災体制チェックは欠かさず、
先日は川を越えて、隣の自治体にまで調査範囲を広げたのであった。その報告はまた後日。
なぜかというと、今日、私は実に腹の立つ体験をしたのである。
それは昼食時であった。
私は昼御飯を前に寝てしまった。それは、私のミスである。
女将に責任を転嫁するつもりはない。が、しかし、あろうことか、女将は私が寝ている間に、
私の好物の一つである麺類の、しかも、これまで口にしたことがない「喜多方ラーメン」とかいう、
いかにも旨そうなネイミングの食べ物を、こっそり作っていたのである。しかも、しかもしかもっ、私が目を覚ました、その瞬間に、
旨そうな一束を、今まさに口に運ぼうと、一人ニヤニヤしていたのである。
たまたま、一口目を食べようとした、ちょうどそのときに、私が目を覚まし、「ふぎゃぁぁ」と女将を呼んだため、
事が判明したからいいようなもの。あのまま私が寝入っていたら、女将は一人で、あの美味しい太麺タイプの生麺を
平らげていたのかと思うと、いくら女将とは言え、許せないのであった。
だいたい寝起きは寝ぼけも手伝って無愛想な私であるから、いつも目が覚めてすぐは不機嫌なのであるが、
今日は喜多方の恨みもあり、いつもより一層不機嫌なふりをして、女将を困らせてやったのであった。
女将は、なんとか食べようと試みていたが、そうはさせじの私の作戦。泣いたり、ごねたり、伸びたり縮んだりを繰り返し、
それでも私を抱いたまま、喜多方ラーメンがのびないうちに、熱いうちに食べようとする女将を阻止し、
更には、「食べたい!食べたい!食べたい〜〜っ!大作戦」を敢行したのだ。いひひひひ。
ついに観念した女将は、私に一口、二口と、少し縮れた太生麺の"ラーメン"を食べさせるに至った。
それにしても、あの"ラーメン"とかいう食べ物は、旨い。できあがった時に私が目を覚ましたことは
前述の通りだが、目を覚ましてから、正気になるまでしばらく時間があったため、熱くて食べられないということもなく、また、だしが効いた、深い味わいがあるスープを
たっぷりと吸っていたため、ただでさえ太い麺が、更に太くなり、味もまろやかで、
私は丼の半分ほどを食べた。女将は「わざわざ美味しそうで高いのを買ったのに〜、タイミング良くおきるから伸びたじゃないか〜〜・・・・しかも、
しっっしっっっしかも、赤ん坊に毛が生えた程度のくせに半分も食べるな〜、先生の御飯は別にあるんだ〜〜」的発言をしていたが、私は雲竹斎。
旨い物は気が済むまで堪能するのである。
そんなわけで、最初は美味しいもの独り占めの女将に腹を立てていたが、こうして思い返してみると、
美味しい思いをさせてもらって、ま、いっかという気持ちになっている私であった。
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Mon. 99/09/13
私は雲竹斎。
久しぶりの登場である。私が元気であったことはいうまでもない。
今、家庭内に於ける私の役割は”冷蔵庫温度管理”である。なに、たいして難しいわけではない。
冷蔵庫内の温度が適温が否か確かめ、調温するのである。ただし、問題は、私の身長では冷蔵庫の温度調節スイッチに
届かないことである。しかし、私は雲竹斎。こうした問題を解決する努力はおしまない。
いろいろと思案した結果、旦那の力を借りることにした。借りると言っても、わざわざ呼びつけたりはしない。
旦那とて、家庭内に於ける本来の役割があるのは私と変わりなく、私の職務遂行のため、わざわざ時間を割かせるのは、
いかに私の弟子であったとしても、許されることではないのである。
旦那は、日に数回、時には十数回、冷蔵庫の前にある椅子に座り、煙を吐いている。
当初は、何か重大な職務を遂行しているのだと思っていたのだが、観察していると、どうも様子が違う。
時には新聞、時には文庫本を手に、また、時にはぼーーーーーーっとした顔で、ただただ煙を吐くのに集中しているようであった。
女将にしても、数ヶ月前までは、私が煙を吐いている旦那に近づくのをガンとして許さなかったのであるが、
最近は私が寄っていくと、旦那が煙を吐くのをやめるのを発見し、私にはよくわからないが、
「っふっふっふ、これは妙案」というような顔をして、しかしながら「ほらぁぁ、ダメよ〜。パパのじゃましちゃぁぁ」と
猿芝居をうっている。そんなわけで、私は煙を吐く旦那に接近することができるようになったわけである。
接近してしまえばこっちのもの。精一杯手を伸ばし、子供のように可愛らしく甘えた声で”抱っこ”を粘り強くせがめば、
最初は「パパはもくもくちてるんでちゅよ〜」などと、拒絶の態度をとっていた旦那も、「しょうがないなぁ」といいながら、まんざらでもない様子で私を抱き上げる。
ここまで来れば、私は職務の遂行をするのみである。旦那によりかかりながら、旦那の肩越しに手を伸ばし、
冷蔵庫の中央部分に設置してある調温スイッチのカバーを開ける。そして、「冷凍、冷蔵」のスイッチを共に「強」に合わせ、
続いて「一気冷凍」を「ON」に設定するのだ。
しかし、私がせっかく適温に設定をしても、どーも女将がけちくさく、”弱”とか”通常”とかに合わせ直しているようで、
私はこの職務を毎日続けなければならないのである。
ちなみに、冷蔵庫の冷え具合は氷で確認をしている。残念ながら”勝手に氷”には手が届かないので、
女将や旦那がお茶などに氷をいれた折に、ぬかりなく近づき、コップに入った氷を触り、舐め、振り回し、氷の硬さ、
味、透明度、傷の有無等を調べるのである。しばらく掴んでいると、いかに私雲竹斎といえども手が冷たくてたまらず、
氷を放り出してしまう。しかし、冷たさが引くと職務に戻るべく、女将や旦那のコップめがけて突進する日々である。
女将と旦那がそれを阻止しようしているのは言うまでもない。
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