1551年 8月・・ この頃、益田氏は隣接していた三隅氏も傘下に収めますます活き盛んになっていた、一方吉見氏 でも来るべく時に備え、元同族で江津に勢力を広める神主高田城・都野長保との関係を親密に していた・・・ ・・・・益田家・・・・ 兼任「若、陶殿から召集が掛かりました」 藤兼「そうか、では山口築山館に行ってくる」 兼任「いや・・・・陶殿の富田若山城への収集で他の豪族も集まるようです・・」 藤兼「・・・・」 益田家臣一同、夏とは思えぬ透き通るような空気が張り詰めた。 藤兼「では行ってくる、叔父上、留守は頼みましたぞ」 藤兼はこれから起こるであろう事の重大さを噛み締め、山口を通らず徳山へ向かった。 ・・・・吉見家・・・・・ 津和野では真夏の最中、見慣れぬ派手な身なりをした男が正頼を尋ねた。 武任「正頼殿は居らぬか、わしは大内重臣・相良武任である」 息を切らせ疲労感がある男は義隆の側近・相良武任であった。 正頼「これはこれは、相良殿、そのような形相でいかがいたした」 武任「吉見殿、もはや・・もはや、山口は血の海に沈むぞ」 正頼は冷静に目を閉じひと呼吸をした後。 正頼「遂にこの時が来ましたな・・・」 武任「わしはこれから八幡へ行きまする、お館様が津和野へ逃れられたら、その時 は宜しく頼みますぞ」 実に身勝手な相良の話を冷静に聞く正頼、すぐ様、津和野の吉見木園館で評定が行われた。 正頼「このまま、お館様を死なす訳には行かん、わしは全軍を持って山口へ入り お館様を救出する」 頼規「この上領の兵も正頼様に従いまする」 正頼の正論で素早く評定は終わりを告げようとしていた・・その時。 頼郷「待たれい!」 それを阻止しようと下瀬・板垣の両氏が他の豪族を抑え場を元に戻す。 頼郷「殿、殿の直轄兵は僅かに1000騎、上領殿の兵が100騎・・・・、 我等が出せる全軍の兵でも1500騎が限界、このような少数で山口の都に乗り込もうなど 亡き兄君が笑いますぞ!」 年老いた策士の怒鳴り声が場を支配した、正頼は直も冷静になり。 正頼「頼郷の言い分はもっともじゃ、なら軍は残す、益忠、そちの徳永城からは山口が 幾分近いな、お館様の密偵として山口へ入れ」 益忠「はっ、この岡益忠、命を投げ打ちお館様を救出する所存」 するとまた眼光鋭い下瀬頼郷が言い放つ。 頼郷「岡殿・・そちは誠にお館様を尊敬しているのか?心配しているのか?心の底から 思っている方でないと無駄死にするだけだ、殿も、殿らしく在りませぬぞ、お館様の命と 吉見一族の命、どちらが大切か考えなされ」 正頼「なら頼郷、どうすればよいのじゃ・・」 珍しく怒りを抑えきれない表情の正頼。 頼郷「・・・・ここは酷ですが・・お館様には自力で脱出して頂、この津和野三本松城 で篭城するのが一番勝分が高いと思われます」 甲斐「小瀬を守るそれがしも、お館様が高津川を昇られるようなら全軍で益田軍から 警護いたしますゆえ」 下瀬頼郷とその配下・板垣甲斐の説得に正頼は諦めたような表情で。 正頼「そちには敵わぬ、いかに人に説法を説く、わしでもそこまでは冷静に考えられぬ、 わしは一人の命ではないのだ、そう寺で習ったのに、いつのまにか忘れていた、そちら津和野 の民の命が一番大切じゃ、大宮よすまない、そちの弟は既に救出不可能な状況まで包囲されておる」 大宮「この時期が来ましたね、もはや義隆も武将の端くれならこのような現状を自力で 脱出するしかないでしょう・・殿の思いはきっと義隆に届いている事でしょう」 すぐさま気持ちを切り替える正頼。 正頼「各、城主に告ぐ!直ぐさま持ち城へ帰り篭城の手筈を整えよ」 家臣一同「はっ」 こうして吉見一族は篭城する準備を始めた、一方益田氏はこれを好機と捕らえ大内方・吉見領を 虎視眈々と狙っていた・・。 |
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