季節が一つずれる。

とある医療院
町医者と向き合って

町医者は窓枠に手をかけ、表通りを見下ろしながら言った。
そして飲みかけの白湯を一気にあおる。

しかし……書くなと宣告されているのだ。
私は心の中で答えた。そう、自由に綴ることは許されぬ身なのだ。

階下から声がかかり、彼は空になったカップをテーブルに置いた。

私は古い友人に礼を言うと、彼の仕事の邪魔にならないよう静かに医療院を出た。

曇り空の街角
ただ一人

子供たちが走りすぎていく。

以前、携帯劇場を見たのはこの辺りだった気がする。
この裏の道を行ったところにある広場だ。
確か……病気と立ち向かっていこうとか、そんな話だった。

途中、咳き込みながら歩く老人とすれ違った。

そのとき、聞き覚えのある声がした。
足をとめて辺りを見渡すが……それらしい人だかりは無い。